決定版(?) ニコンFマウント解説 (By キンタロウ)


最終更新日 23/06/22



昭和34(1959)年6月、Nikon Fから始まった「Fマウント」。60年超もの歴史を持つ「不変のFマウント」とはいえ、技術の進展に伴い細かな変更がなされています。

しかし露出計連動爪、露出計連動レバー、開放F値連動レバーとか、Ai-SやCPU連動、Gタイプ。。。など多数の用語や構造・構成について全体を一望できるサイトがないようでしたので、ここでまとめてみることにしました。

Fマウントの設計者が現在のようなデジタル一眼レフ時代まで予測していたとは考え難いですが、改めて見ると60年超もの間Fマウント(の基本構造)を変更せずにここまで数々の機能を追加できたことは正に驚異であると思います。

その一方、あまりにもレンズ・ボディのバリエーションがあり過ぎて、物理的に装着できない組み合わせや装着できても機能制限があるものなど混乱の極みとなっているようです。

例えば旧来のオールドニッコール(非Ai)の絞りリングとボディの最小絞り設定警告レバーとの干渉、露出計連動レバー(Ai連動レバー)との干渉などで取り付けできないカメラとレンズの組み合わせがあったり、CPUを搭載していないAiニッコールでは露出計が動かずマニュアル露出モード(勘とヒストグラム利用)でしか使えないなど、様々な制限があります。

他社のようにマウント仕様を全面変更してしまえばこれらの混乱は回避できたのでしょうが、2016年6月時点で累計生産本数1億本を超えるニッコールレンズのユーザーを切り捨てず、多少の制限があっても互換性を維持するメーカーの姿勢は評価すべきものと考えます。

尚、当ページのタイトルは「決定版(?)ニコンFマウント解説」となっていますが、内容はFマウントという「接点」を通して、レンズとボディ間の連動機構や自動露出関係、レンズ側の新機能(超音波モーター駆動、手ブレ補正機能)などについての解説となっています。


注意1)当サイトの内容は、多くの推定、推測、根拠の希薄な想像が含まれています。なので当然多くの間違いもあることには絶対の自信があります(^^);
注意2)当サイトには、初期作成時には正しかったことでも、現在では当てはまらない内容が含まれている可能性があります。
注意3)当サイトでは「Ai」表記と「AI」表記が(非公式、不正確に、勝手な思い込みで)混在しています。(「 AI 」と「 Ai 」の表記の違い参照)
注意4)特にデジタルカメラ関係では、ファームウェアアップデートにより機能面で変更・更新されている可能性がありますので、メーカーサイトにて最新情報をご確認ください。




  インデックス
Fマウント入門
   概説
   Fマウント/レンズの簡単な用語説明
   Fマウント/レンズのもう少し詳しい解説
時系列で見るFマウント
基本データ
   基本データ
   フランジバックとバックフォーカス
   Fマウントの外径と幅
   Fマウントの材質
   マウントアダプター
   特殊形状のマウント:4つ爪バヨネット
   Zマウント
Nikon Fマウント図 (ボディ側)
Nikon Fマウント図 (レンズ側)
Fマウントレンズ体系図
Fマウントレンズ体系図(簡易版)
Fマウントレンズタイプ(レンズ分類)
レンズタイプと連動パーツの変遷
   表1: 主なレンズタイプと連動パーツ
   図1: 主なレンズタイプと連動パーツの変遷
   図2: レンズタイプの変遷と付加機能
レンズ名の見方
   5.1 レンズ名を構成するタイプ識別子(比較的最近のレンズ)
      5.1.1 レンズ名の解読例
      5.1.2 レンズ名の具体例
   5.2 レンズ名を構成するタイプ識別子(初期のカニ爪付きオールドニッコール/従来(非Ai)レンズ)
   5.3 その他の特殊レンズ
   5.4 レンズ名表記方法の変更
   5.5 レンズ名の先頭文字から、レンズタイプを特定する
   5.6 開放F値(Fナンバー:絞り値)の表記方法
   5.7 カメラ使用説明書の「使用できるレンズ」の見方
レンズのシリアルNo.から、そのタイプも分かるサイト
 
関連用語解説
   AFレンズ
   Dタイプレンズ
   Gタイプレンズ
   DXレンズ(DXフォーマット)
   FXレンズ(FXフォーマット)
   シリーズEレンズ
   F3AF用レンズ
   Ai-Pレンズ
   AF-I(コアレスモーター内蔵レンズ)
   AF-S(超音波モーター内蔵レンズ)
   AF-P(ステッピングモーター内蔵レンズ)
         AF-Pレンズが使用可能なカメラ(発売年順)
         《 コラム 》 関連情報は同時更新しないと、どれを信じればいいか分からない
         AF-P駆動に関するモジュール(ファームウェア)のイメージ
   VR(手ブレ補正内蔵レンズ)
   電磁絞りPC-EレンズEタイプレンズ
         PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラ(機種別)
         PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラ(発売年順)
         電磁絞り(Eタイプ)コントロールモジュール(ファームウェア)のイメージ
   AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧
 
補足解説
   ●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE
         一眼レフの基本構造と自動絞り
         レンズの絞り値とファインダーの明るさ
         絞り連動レバーと絞りの基本的な動作について
         AEと絞りのコントロール方法の変遷
         カメラ側からの絞りのコントロール
         《 プチコラム 》 C-PL(サーキュラーPL:円偏光PL)フィルターには表裏の向きがある
   ●露出計連動爪と開放F値設定
   ●Ai方式
         Ai方式レンズと非Ai方式レンズの見分け方
         Aiニッコール(純正)と改造Aiニッコールの見分け方
         改造Aiニッコール
         Ai方式のボディと非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズの組み合わせについて
         「 Ai方式 」のレンズ名表記
         「 AI 」と「 Ai 」の表記の違い
         《 コラム 》 Ai方式 - ややこしいお話その1(^^);と補足解説
   ●Ai-S Nikkor レンズ
         Sタイプレンズと非Sタイプレンズの見分け方
         「 Ai-S方式 」のレンズ名表記
         「 Ai-S方式 」のレンズの呼び方
         《 コラム 》 Ai-S方式 - ややこしいお話その2(^^);
         《 コラム 》 ニコンの「時間」
         《 コラム 》 C社のマウント「変遷」
   ●CPU連動方式/CPU内蔵レンズ/電子接点
         CPU連動方式のレンズ群
         レンズ〜ボディ間の伝達情報(推定)
            《 補足解説1 : レンズ識別番号(レンズID) 》
            《 補足解説2 : ボディ〜レンズ間の通信 》
            《 補足解説3 : レンズ収差情報 》
            《 補足解説4 : レンズ側の設定絞り値通知 》
            F3AF用のボディ/レンズ群
         カメラボディ側電子接点端子数
         レンズ側電子接点ピン数
         ボディ側電子接点パターン
         レンズ側接点(ピン)パターン
         電子接点/ピン割当て表(推定)
         電子接点接続図
         ピンの波型配列について
         10ピンの電子接点は何に使われている?
         《 コラム 》 古いAi-Sレンズを電子化するタンポポチップ(Dandelion Chip)
   ●そして完全電子マウントへ(?)
         《 コラム 》 Eタイプ専用(完全電子制御化)ボディ
   ●最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー
         CPU連動方式専用ボディ
            最小絞り設定警告レバーの形式(スライド式/押し込み式)
            最小絞り設定警告レバーのないD3400/D3500について
         CPU連動方式+Ai方式併用のボディ
         Ai専用ボディ
   ●レンズ焦点距離識別レバー(プログラム切り替えレバー)
   ●瞬間絞り込み測光
         《 コラム 》 瞬間絞り込み測光、もう少しややこしいお話(^^); 》
   ●開放F値連動レバー/開放F値連動ガイド
   ●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係
          レンズ情報手動設定
          「Nikon Df」のレンズ情報手動設定と非CPUレンズ
   ●マルチパターン測光
   ●テレコンバーターの特殊マウント形状とテレコン対応マウント
   ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ
         カメラ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)の干渉
         カメラ側の最小絞り設定警告レバーの干渉
         レンズ絞りリング後部(スカート部)とカメラ側マウント部周辺の干渉
         レンズ絞りリング後部(スカート部)の内径と、ボディ側マウント外径の違いによる装着不能
         ボディ銘板との干渉
         バックフォーカス長が短いレンズ
         ボディ側絞り連動レバーと大口径レンズ後玉保持枠の干渉
         レンズとテレコンバーターの組み合わせ
         非Aiのオールドニッコールレンズ(カニ爪付き)が装着できるカメラ
         《 コラム 》 何故、物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせができちゃった?
   ●モーター内蔵レンズ専用機とレンズの組み合わせ
   ●DXレンズのイメージサークルとFXフォーマットカメラの組み合わせ
   ●露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧
         露出計連動ピンを持つ機種
         露出計連動レバー・CPU連動方式の機種一覧
         Gタイプレンズが使えない機種一覧
         Gタイプレンズが使える機種一覧
   ●ニコンデジタル一眼レフカメラ系統図
 
《 コラム 》 サイト訪問者様からの反響
●終わりに
 

リンク − ニコン全一眼レフカメラ発売年表/仕様   以下本文中の下線のある緑色文字(例:Nikon F)をクリックすると、この「ニコン全一眼レフカメラ発売年表/仕様」の当該位置へジャンプします。
(注: IEやNetscapeはOKですが、Sleipnir等のタブブラウザでは毎回新ページが開いてしまうものがあります)
 
注)以下本文中の下線のあるディープスカイブルー色文字(例:パララックス)をクリックすると、Google検索またはウィキペディアのページが開きます。





更新履歴
23/06/22 ボディ側絞り連動レバーと大口径レンズ後玉保持枠の干渉 解説ミス修正
23/05/01 ちょっとだけスマホ表示対応修正
22/09/07 《 コラム 》 サイト訪問者様からの反響 追加
22/09/05 《 コラム 》 C社のマウント「変遷」 追加
22/09/03 最小絞り設定警告レバーのないD3400/D3500について 追加
22/08/30 《 補足解説2 : ボディ〜レンズ間の通信 》 加筆
21/09/27 ZマウントにNIKKOR Zレンズに搭載のマイクロコントローラ(MCU)に関しての説明追加
21/02/25 5.7 カメラ使用説明書の「使用できるレンズ」の見方 追加
21/02/10 5.6 開放F値(Fナンバー:絞り値)の表記方法 追加
21/01/12 5.5 レンズ名の先頭文字から、レンズタイプを特定する 追加
20/10/04 ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせに、 (7) ボディ側絞り連動レバーと大口径レンズ後玉保持枠の干渉 追加
20/10/03 ボディ側の絞り連動レバーの、機種、或いはAE化の前後で形状の違い 追加
20/09/18 AF-P(ステッピングモーター内蔵レンズ)の使用可否に関して最新化修正
20/04/21 AEと絞りのコントロール方法の変遷 絞り連動レバーの精度に関して加筆
20/01/25 ●露出計連動爪と開放F値設定 連動爪取り付け改造に関して修正
20/01/16 5.レンズ名の見方 に、SR(Short-wavelength Refractive)レンズ追加
19/11/23 スマホ表示対応
19/01/03 《 プチコラム 》 C-PL(サーキュラーPL:円偏光PL)フィルターには表裏の向きがある 追加
18/10/28 ●露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧 のGタイプレンズ関係見直し
18/10/26 ZマウントとFマウントの比較で、Fマウント内径にバヨネット爪を含まない値(47mm)も併記
18/10/15 Zマウント 追加
18/05/02 Fマウントレンズ体系図 一部変更
18/04/15 《 コラム 》 Eタイプ専用(完全電子制御化)ボディ 追加
18/03/30 AF-P(ステッピングモーター内蔵レンズ)の使用可否に関して加筆修正
18/02/11 D850関連追加
17/05/27 ●AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧 追加
17/03/26 AF-P駆動に関するモジュール(ファームウェア)のイメージ 追加
17/03/19 電磁絞り(Eタイプ)コントロールモジュール(ファームウェア)のイメージ 追加
17/02/25 ●10ピンの電子接点は何に使われている? 追加
17/01/29 ●テレコンバーターの特殊マウント形状とテレコン対応マウント 追加
17/01/08 5.レンズ名の見方 に、PF(Phase Fresnel:位相フレネル)レンズ、FL(Fluorite Lens:蛍石レンズ)追加
16/12/28 AF-P(ステッピングモーター内蔵レンズ) 追加
15/09/26 《 コラム 》 古いAi-Sレンズを電子化するタンポポチップ(Dandelion Chip) 追加
15/08/09 マウントアダプター 追加
15/07/12 ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせに、4項目追加
15/06/28 ●デジタル一眼レフカメラとレンズの組み合わせ 追加
15/06/14 ●ニコンデジタル一眼レフカメラ系統図 追加
15/06/06 《 コラム 》 何故、物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせができちゃった? 追加
14/09/23 Eタイプレンズ追加、●そして完全電子マウントへ(?) に追記
13/12/01 「Nikon Df」のレンズ情報手動設定と非CPUレンズ 追加
11/10/09 Fマウント入門 追加
11/09/18 F3AF用レンズの解説を独立させた
11/09/04 レンズ名の見方追加
11/03/12 ●CPU連動方式/CPU内蔵レンズ/電子接点 に大幅加筆(電子接点パターン、割当て表など)
11/01/30 Ai方式と開放F値連動ガイドに関する記述修正
10/12/12 ●露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧) 内「EL2」の「露出計連動レバー(Ai連動レバー)」を可倒式に修正
10/08/29 ●そして完全電子マウントへ(?) に追記
10/08/15 モーター内蔵レンズ専用機とレンズの組み合わせ追加
10/08/14 Fマウントレンズ体系図(簡易版)追加
10/08/01 ●DXレンズのイメージサークルとFXフォーマットカメラの組み合わせ追加
10/07/15 「ニコン全一眼レフカメラ発売年表/仕様」への個別リンク追加(例:Nikon F
10/07/10 ●瞬間絞り込み測光に大幅加筆
10/06/27 「●完全自動絞りとAE、そして完全電子マウント(?)」項を「●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE」と「●そして完全電子マウントへ(?)」に分割した
10/06/26 レンズ分類と連動パーツの変遷Fマウントレンズ分類の下に移動した
10/06/20 Fマウント基本データに、マウント外径/幅データとマウント画像追加
10/01/31 ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ追加
09/09/13 「Nikon D300S」関係追加
08/07/30 フランジバックとバックフォーカスの画像追加
08/11/30 ●完全自動絞りとAE、そして完全電子マウント(?) 追加
08/10/19 電磁絞りに関する説明追加
08/09/18 ●マルチパターン測光に画像追加
08/07/30 Fマウント基本データの「材質」にステンレス、真鍮クロムメッキに関する説明追加
07/09/23 「Nikon D300」「Nikon D3」関係追加
07/08/05 VRレンズの三脚積載対応追加
07/06/02 説明用画像を何枚か追加
07/05/27 「●マルチパターン測光」追加
07/05/26 「時系列で見るFマウント」追加
07/05/19 「開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係」追加
07/02/12 説明用画像を何枚か追加
06/12/10 露出計連動レバー可倒式/固定式機種修正
06/11/23 最小絞り設定警告レバー関係加筆
06/11/19 「Nikon D40」関係追加
06/06/25 新規公開




Fマウント入門



1. 概説
2. Fマウント/レンズの簡単な用語説明
3. Fマウント/レンズのもう少し詳しい解説

  

1.概説


 「マウント(レンズマウント)」とは、一眼レフに代表されるレンズ交換式カメラ(等)において、レンズとカメラボディを結合する機構のことです。

一眼レフの最大の特徴は、魚眼、超広角、大口径、超望遠、マクロ、ズームレンズ等など多種多様なレンズが利用できることですが、その為にはレンズとカメラボディの物理的な結合だけではなく、レンズ〜カメラボディ間の連動、例えばレンズの絞り値や撮影距離情報をカメラボディに伝える機構、ボディからレンズ絞りのコントロール、フォーカス(ピント)を合わせる為の連動機構などがマウント(レンズマウント)に求められます。

ニコンのレンズマウントは「Fマウント」と呼ばれ、昭和34(1959)年6月に発売されたニコン最初の一眼レフである「Nikon F」の「F」に由来していますが、当時のカメラは内蔵露出計、または外付けの露出計との連動のみで、自動で露出を決める「AE機能」もなく、マウントは非常に単純なものでした。

しかし、その後の各時代における技術的トレンド、例えばTTL開放測光、自動露出、オートフォーカス、超音波モーター内蔵、手ブレ補正機能など、カメラ本体やレンズに多くの機能が付加され、その対応の為に基本的なマウント規格を変更せずに色々な連動パーツが後付け/建て増し方式で追加されてきました。

それ故にカメラとレンズの組み合わせによっては、色々な制限(装着不可、露出計不動、AF不動など)が生じてしまい、非常に複雑なマウント体系になってしまっているのです。

勿論、最新のカメラに最新のレンズを装着する分には問題ないとはいえ、少し古めのカメラとレンズの組み合わせや最新カメラとオールドレンズの組み合わせのパターンは数多くあるので、Fマウントの基本的な知識を持っていなければどの様な制限があるのか、またはないのかの判断ができません。

  (参考: ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ

他社のように旧マウントを捨て、全く新規のマウント(完全電子マウント)にしていればこの様な問題は起こらなかったのですが、そこは「ニコン」、古くからのニコンユーザーを切り捨てず、古いカメラに最新のレンズを装着できるように、またその逆に新しいカメラに古いレンズを装着できるように互換性を最重要視してきた結果といえます。


さて、「Nikon F」発売以来のカメラ撮影機能として、

   1.露出計との連動、操作性向上
   2.露出の自動化(AE)、精度向上
   3.電子化及びAFへの対応、合焦速度の向上
   4.デジタル一眼レフの開発
   5.手ブレ補正など高画質化への対応
   6.小型化及び低コスト化への挑戦
   7.電磁駆動絞り搭載など完全電子マウントへの挑戦

が図られてきました。

その具体的な商品展開としては、

   1.連動爪(カニ爪)付きオートニッコールの発売
   2.Aiレンズの発売
   3.Ai-Sレンズの発売
   4.複雑な機械式連動を廃し、電子化(CPU搭載)したAFレンズの発売
   5.撮影距離情報を伝えられるDタイプレンズの発売
   6.デジタル一眼レフの開発
   7.超音波モーター内蔵レンズの発売
   8.手ブレ補正機構搭載レンズの発売
   9.絞りリングを廃したGタイプレンズの発売
  10.APS-C判専用のDXレンズの発売
  11.電磁駆動絞り搭載レンズの発売

となっています。


●露出計との連動、操作性向上

  「Nikon F」と同時発売された初期のニッコールレンズ(オールドニッコール)には、絞りリング部に露出計連動爪(別名:カニの爪、カニ爪)が付いており、外付けの外部露出計(ニコンメーター1型など)または外光式の「フォトミックファインダー」のピンと噛み合わせてレンズの絞り値を伝えることができました。(シャッター速度はこれらの露出計がボディのシャッター速度ダイヤルに被さる形で取り付けられるので当然連動します)

露出計連動爪(カニの爪) ニコンメーター1型 Nikon F Photomic

しかし、レンズから入射した光、即ち実際に撮影される光をカメラ内部で直接測光できれば、装着したレンズの画角やパララックス(視差)に対応できない外部露出計によるよりも高精度の測光が可能であることは明白であり、カメラボディ内に露出計を内蔵した「TTL測光方式」が編み出され、ニコンでも、「Nikon F Photomic T」で露出計がフォトミックファインダー内に、そして「Nikomat FT」でカメラボディ内に露出計が組み込まれました。

これらのカメラでもレンズの絞り値は前述の「カニ爪」を使ってボディ側(の内蔵露出計)に伝えていたのですが、「カニの爪」だけではレンズ装着時に余計な操作(露出計連動爪と開放F値設定参照)が必要なこともあって、より簡便な方式として「Ai方式」が開発されました。これはレンズの絞りリングの一部を切り欠き、ボディ側のレバーに引っ掛かるようにして露出計と連動するようにしたものです。

(d)露出計連動ガイド (B)露出計連動レバー Nikon F2 Photomic A


●露出の自動化(AE)、精度向上

 さらに「露出の自動化(AE)、精度向上」については、AE化の為にカメラ側からレンズ内にある絞り羽根の正確なコントロールが必要になり、Ai方式の改良版として Ai-Sタイプのレンズが開発され、同時にレンズの明るさやレンズタイプを識別する為の色々なレバー類がレンズ後部に追加されました。


●電子化及びAFへの対応、合焦速度の向上

 これらの付加物は機械的にレンズからボディへ情報を伝えるものですが、構造的に複雑になることもあり、昭和61(1986)年4月にAFレンズのリリースと同時にカメラボディとレンズ内にCPUを内蔵して電気的に情報を伝える「CPU連動方式」が発売されました。

 さらに、レンズ内に超音波モーターを内蔵したAF-Sレンズが発売され、被写体の激しい動きにも追従する合焦スピードと、ボディ駆動のAFレンズにはない静粛性を実現しました。

オートフォーカスカメラのマウント左下部(AFカップリング CPU内蔵(電子接点)



●デジタル一眼レフの開発

 マウントの連動機構自体は変わりませんが、黎明期のデジタル一眼レフとしては以下の製品が発売されました。

発売時期 機種名 価格 特徴・備考
 1995(H7)年9月  E2/E2S 110万円/140万円 ニコン初、Nikon F4をベースに開発。有効画素130万画素CCD、約3コマ/秒
 1996(H8)年9月  E2N 89万円 「Nikon E2」のマイナーチェンジ機。ホワイトバランスにフラッシュモードの追加、外部シンクロ時のスタンバイ時間延長など
 1996(H8)年11月  E2Ns 130万円 「Nikon E2S」の後継機、「Nikon E2N」に3コマ/秒(最大7コマ)の連写機能を追加
 1998(H10)年6月  E3/E3s 77万円/98万円 「Nikon E2N」のフルモデルチェンジ機。 有効画素数130万画素CCD、CCD前面に赤外線カットフィルタと光学ローパスフィルタを組み込み。ISO3200相当の超高感度。
「Nikon E3s」は連写モデルで、E3に約3コマ/秒(連続12コマ)の連写機能を追加
 1999(H11)年9月  D1 65万円 性能、価格面で先駆的モデル。65万円という大幅な低価格を実現。
有効画素数266万ピクセル大型原色CCD、記録画素数 2,000×1,312 ピクセル
約 4.5コマ/秒、最高21コマ連写、1/16,000秒、シンクロ 1/500秒



●手ブレ補正、電磁駆動絞りなどの搭載

  ・ カメラのシャッターが開いている間(露光中)に手が動いてしまうことによる手ブレを補正するVRレンズ
  ・ 絞りリングを廃してカメラボディ側からの絞り制御を行なうGタイプレンズ
  ・ APS-Cサイズのデジタル一眼レフ用に特化したDXレンズ
  ・ AFカップリングによる機械的なAF駆動を廃し、超音波モーター内蔵レンズ(AF-S)専用のカメラの発売
  ・ Nikon F発売以来の絞り連動レバーによる機械的な絞り制御からレンズ内に組み込まれたステッピングモーターで絞りを駆動する電磁駆動絞り


概略以上のような経過を経て様々なパーツの追加や統合、整理を経て現在に至っています。

当サイトでは、Fマウントという「接点」を通して、レンズ体系、カメラの構造、レンズとボディ間の連動機構や自動露出関係、レンズ側の新機能(超音波モーター駆動、手ブレ補正機能)などについての解説をしています。


《 補足1 》

現代のレンズマウントの主流は「バヨネット式」と呼ばれ、複数の接合爪が付けられたレンズ(オス側)を受け側(メス側)のボディに挿入し左(または右)に回転させることで結合させる形式となっている。 昭和34(1959)年6月発売の「Nikon F」から採用されている「Fマウント」も3本爪のバヨネット式であり、その基本的な寸法的属性は現在に至るまで変わっていない。それ故に「不変のFマウント」とも呼ばれており、50年以上前に発売されたニッコールレンズが最新のニコンデジタル一眼レフに  『物理的には』  装着できる。(一部例外あり

昔のマウントには、ネジ込み式のスクリューマウント(初期のペンタックス等で使われていたM42マウント)や、キヤノンのスピゴットマウント(FDマウント)などがあったが、現在ではほぼ全ての一眼レフカメラでバヨネット式マウントが使われている。

マウントの構造は各メーカー独自の規格となっているので、原則として同一メーカーのレンズとカメラボディのみが装着可能(但しシグマ、タムロンなどのサードパーティ製レンズも可)であるが、一部メーカーでは共通のマウントを採用しているところもある(例えばオリンパスのフォーサーズはパナソニックでも採用)。また、マウントアダプターと呼ばれる部品を使えば、マウントの違う他社のレンズを自社のカメラに装着ができることもある。(例えばニッコールレンズをキヤノンのカメラに装着できる。逆は不可)



2.Fマウント/レンズの簡単な用語説明

カニ爪レンズ
オートニッコール?
オールドニッコール?
1959〜70年代前半の最初期のマニュアルレンズ。絞りリングに「カニの爪」形状の露出計連動部品が付属しているのでこのように呼ばれていた。オートニッコールやオールドニッコールとも呼ばれる。露出計連動ピンが付いた初期のフィルムカメラで露出計と連動する。デジタル一眼レフでは一部の機種を除き物理的に装着できず、装着できる機種でも露出計が作動しないなど制限が多い。

例)Nikkor-H Auto 50mm F2
Ai方式
Ai-Sタイプ
Ai方式(Aiレンズ)とはレンズの絞りリングの一部を切り欠き(露出計連動ガイド)、ボディ側のレバーに引っ掛かるようにして間単にボディ側の露出計に絞り値を伝えられる方式。昭和52(1977)年〜昭和55(1980)年頃のレンズ。

    例)Ai Nikkor 50mm f/1.4 : 頭に”Ai”が付く

Ai-Sタイプ(Sタイプ)はAi方式の改良版で、改良前のAiレンズと区別する為に「Ai-S」や「Ai(Sタイプ)」などと呼ばれる。昭和55(1980)年に発売開始。似た名称に「AF-S」があるが、こちらは超音波モーターを内蔵したレンズのこと。

    例)Ai Nikkor 50mm f/1.4S : F値の後に”S”が付く

●以上のレンズは全てのデジタル一眼レフに装着できるが、CPUを内蔵していないのでAi方式の露出計連動レバーを持つ中級以上のカメラでのみ露出計が作動する。
CPUレンズ CPUを内蔵し電子接点経由でカメラボディとレンズ間の情報伝達を行なう方式のレンズ。昭和61(1986)年4月以降発売のレンズには全てCPUが内蔵されている(ほぼ全てがオートフォーカスレンズ)。全てのデジタル一眼レフに装着でき、露出計も作動する。(但し、D40などAFカップリングが省略されているカメラではモーター内蔵レンズでのみAFが可能)

例)Ai AF Nikkor 50mm F1.4S : ”AF”という文字を含む
非CPUレンズ? CPUを内蔵していないレンズ。露出計連動爪(カニ爪)付きオートニッコールやAiレンズAi-Sレンズなどの古いMF(マニュアルフォーカスレンズ)である。

例)Nikkor-H Auto 50mm F2、Ai Nikkor 50mm f/1.4S : ”AF”という文字がない
AFレンズ 昭和61(1986)年4月のF-501(ボディ内AFモーター内蔵)と同時に発売された。AFレンズは全てCPU内蔵(但しF3AF用レンズは除く)であり、Ai-S/非Aiタイプ、モーター内蔵/非内蔵、絞りリングのないGタイプ、撮影距離を伝えられるDタイプなど様々なタイプが発売されている。AFレンズは全てのデジタル一眼レフで使用可能である。(但し、D40などAFカップリングが省略されているカメラではモーター内蔵レンズでのみAFが可能)

例)Ai AF Nikkor 50mm F1.4S : レンズ名に”AF”という文字を含む
AF-S AF駆動用のSWM (超音波モーター) を内蔵したレンズ。全デジタル一眼レフで使用可能。

例)AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF) : レンズ名に”AF-S”という文字を含む
AF-P AF駆動にSTM(ステッピングモーター)を搭載した新レンズ。最新のデジタル一眼レフでのみ使用可能。高速且つ駆動音が極めて静かで動画撮影に有効。平成28(2016)年9月発売。

例)AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR : レンズ名に”AF-P”という文字を含む
Dタイプ CPU内蔵に加え、距離エンコーダーを内蔵し、被写体までの撮影距離をボディ側に伝えられるタイプのレンズ。大部分がAFレンズであり、より的確な露出制御やスピードライト調光制御を実現する。「AF(Dタイプ)レンズ」などと呼ばれる。

例)Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED : F値の後に”D”という文字を含む
Gタイプ 絞りリングを省略した新タイプのレンズ。全てのデジタル一眼レフで使用可能だが、古いフィルムカメラでは使えない機種もある。Gタイプレンズは全てCPU内蔵Dタイプ(距離エンコーダー内蔵)でもある。

例)AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF) : F値の後に”G”という文字を含む
VR ニコンの手ぶれ補正レンズ。全てのデジタル一眼レフで使用可能だが、古いフィルムカメラでは使えない機種もある。

例)AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR : レンズ名に”VR”という文字を含む
例)AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED : レンズ名に”VR”という文字を含む
DXフォーマット
DXレンズ
APS-Cサイズのイメージセンサーによる撮像フォーマットで、このフォーマット専用レンズは、DXレンズと呼ばれる。イメージサークルが小さい為、35mmフィルムカメラやFXフォーマットカメラに装着すると四隅がケラレる。但しFXフォーマット判デジタル一眼レフではクロップ機能で使用可。レンズ名に”DX”がある。

例)AF-S DX Zoom Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)  : レンズ名に”DX”という文字を含む
FXフォーマット 35mm判(36×24mm)のイメージセンサーによる撮像フォーマット。レンズ名に”DX”がないレンズは全てFXフォーマットである。

例)AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G : レンズ名に”DX”という文字を含まない
例)AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF)
Eタイプレンズ 機械的な(a)絞り連動レバーの代わりに電磁駆動絞りを搭載した新タイプのレンズ群。デジタル一眼レフの大部分でのみ使用可能。

例)AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR : F値の後に”E”という文字を含む
注:  実際のレンズでは、上記複数のタイプが組み合わされている。 レンズ名の見方も参照。
 例)Ai AF VR Zoom Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D  = VR(手ブレ補正)付きのAFズームレンズで、Ai方式露出計連動ガイドを持ったDタイプレンズ。


3.Fマウント/レンズのもう少し詳しい解説

レンズタイプ 発売時期 形状 解説
連動爪方式
(カニ爪方式)
59年6月〜 オートニッコール/ オールドニッコールとも呼ばれる、1959〜70年代前半の最初期の(Ai化以前の)マニュアルレンズ。絞りリングに「カニの爪」形状の露出計連動部品が付属しており、「Nikon F Photomic 」や「Nikon F2 Photomic 」、Nokomatシリーズなど露出計連動ピンが付いた初期のフィルムカメラで露出計と連動する。(連動ピンが付いたカメラはこちらを参照)

● この爪が付いた初期のレンズは、オートニッコール/ オールドニッコール/ カニ爪方式レンズ/従来レンズ/ 従来(非Ai)レンズ/ 非Aiの旧ニッコールレンズ/ 非CPUの非Aiレンズ/ 露出計連動爪方式レンズなどと呼ばれる。

● デジタル一眼レフでの使用は、 一部の機種(Df、D40シリーズ、D60、D3000シリーズ、D5000シリーズなど)を除き 物理的に装着できず、装着できる機種でも露出計が作動しない。

● レンズ例: Nikkor-H Auto 50mm F2 (64/1月)
Ai方式

Ai-Sタイプ


改造Aiレンズ
77年3月〜

80年2月〜



レンズの絞りリングの一部を切り欠き、ボディ側のレバーに引っ掛かるようにして間単にボディ側の露出計に絞り値を伝えられる方式。Ai-Sはその改良版でプログラムAEなどの自動露出機能に対応させるためにボディ側から正確な絞りコントロールができるようにしたもの。改造Aiは絞りリングを切削して切り欠きを作り込んだレンズである。

これらはマニュアルフォーカスレンズでCPUを内蔵しておらず、「Nikon F2 Photomic A」以降のAi対応フィルムカメラと、一部のAi対応ハイエンドデジタル一眼レフでのみ露出計が作動する。Ai対応のカメラ以外ではデジタル一眼レフを含め装着は可能だが露出計は作動しない。

● Ai方式のレンズは、Aiニッコール/Aiニッコール(非Sタイプ)/非CPUのAiレンズ などと呼ばれる。

● Ai-Sタイプレンズは、Ai-Sニッコール/Aiニッコール(Sタイプ)などと呼ばれる。

● 改造Aiレンズとは、既存のカニ爪レンズの絞りリングを交換または切削し、露出計連動ガイドの役割をする切り欠きを作り込んだレンズ。

● この露出計連動ガイドは、一部例外を除き後に発売されるCPU内蔵のAFレンズにも互換性保持の為に残されている。(レンズ名に”Ai”を含むレンズ)

● Ai方式のレンズ例: Ai Nikkor 50mm F1.4 (レンズ名の先頭に”Ai”が付く)
● Ai-Sタイプのレンズ例: Ai Nikkor 50mm F1.8S (最後に”S”が付く

● 注意: レンズ名に”Ai”があっても、”AF”の文字が含まれる場合はAFレンズのカテゴリーに入る。
  (例: Ai AF Nikkor 50mm F1.8S など) ( コラム: Ai方式 - ややこしいお話その1(^^);と補足解説 参照 )
非CPUレンズ 59年6月〜86年3月 昭和61(1986)年4月のF-501(ボディ内AFモーター内蔵)以前のCPUを内蔵していないレンズ。露出計連動爪(カニ爪)付きオートニッコールやAiレンズAi-Sレンズなどの古いMF(マニュアルフォーカスレンズ)であり、デジタル一眼レフでの使用には多くの制限がある。

例)Nikkor-H Auto 50mm F2、Ai Nikkor 50mm f/1.4S : ”AF”という文字がない
AFレンズ

CPU内蔵
86年4月〜 昭和61(1986)年4月のF-501(ボディ内AFモーター内蔵)と同時に発売されたオートフォーカスレンズ。マウント部にAFカップリング追加と同時にCPUを内蔵し、電子接点経由でカメラボディとレンズ間の情報伝達を行なう方式となった。AF化以降のニッコールレンズには全てCPUが内蔵されている。

● CPU内蔵レンズは、AF/MF、モーター内蔵/非内蔵、手ぶれ補正付き、GタイプDタイプDXレンズFXレンズなど多種多様なレンズが発売されている。

● マニュアルフォーカスレンズの一部にもCPUが搭載されている。(DタイプAi-Pレンズなど)。

● CPUを内蔵していないレンズは全てMFであるが、全てのMFレンズがCPUを内蔵していないとは限らない。(Ai-PレンズやPCレンズはMFだがCPUを内蔵している)

F3AF用レンズはAFレンズではあるが、CPU内蔵方式とは呼ばない特殊な位置づけとなる。

● AFレンズにはモーター内蔵型と非内蔵型の2種類あり、内蔵型には AF-SレンズAF-Pレンズ、または AF-Iレンズ がある。
モーター内蔵型 レンズ内に超音波モーター(AF-S)、ステッピングモーター(AF-P)、またはコアレスモーター(AF-I)を内蔵したレンズ。F4以降のフラッグシップフィルムカメラとPRONEA、全デジタル一眼レフで使用可。特にボディ内AFモーターが省略された一部のエントリークラスのデジタル一眼レフはこのモーター内蔵型レンズ以外ではAFが使えない。(D40/D3000/D5000など
モーター非内蔵型 カメラボディとAFカップリングで結合され、ボディ内AFモーターで駆動される。F-401以降のAFフィルムカメラと、全デジタル一眼レフで使用可(一部機種除く

● レンズ例: 
   Ai AF Zoom-Nikkor 18-35mm f/3.5-4.5D IF-ED (レンズ名に”AF”という文字が含まれる)
   AF-S NIKKOR 600mm F4G ED VR (レンズ名に”AF-S”という文字が含まれる)
   Ai AF-I Nikkor ED 500mm F4D(IF) (レンズ名に”AF-I”という文字が含まれる)

● CPU内蔵レンズは、デジタル一眼レフでの使用においても、ほぼ制限なく使用可能である。(一部機種除く
Dタイプレンズ 92年9月〜   CPU内蔵に加え、距離エンコーダーを内蔵し、被写体までの撮影距離をボディ側に伝えられるタイプのレンズで、より的確な露出制御やスピードライト調光制御を実現する。大部分がAFレンズである。

● 92/4月発売のの「Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D」以降の全てのレンズはDタイプである。

● 「 距離エンコーダー内蔵 」は付加機能の一つであり、レンズ種別としては距離エンコーダーが内蔵されていないレンズと区別するために例えば 「AF(Dタイプ)」 などと呼ばれる。

● レンズ例: Ai AF Zoom-Nikkor 18-35mm f/3.5-4.5D IF-ED (”4.5D”の”D"がDタイプを示す)
AF-S

AF-I
96年11月〜 AF-Sは、超音波モーター(SWM)を内蔵したレンズで、被写体の激しい動きにも追従する合焦スピードと、ボディ駆動のAFレンズにはない静粛性を合わせ持ち、これらが要求されるスポーツや野生動物の撮影シーンに威力を発揮する。AF-Iは、コアレスモーターを内蔵したレンズ群で、4本のみ発売されていた。

● AF-S、AF-Iレンズは全てCPU内蔵であり、距離エンコーダーを内蔵したDタイプでもある。
● 絞りリングのあるレンズや、絞りリングを省略したGタイプもある。
● AF-S、AF-Iレンズは、全てのデジタル一眼レフで制限なく使用可能である。

● レンズ例:
   Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED (レンズ名に”AF-S”という文字が含まれる)
VR 00年11月〜 カメラのシャッターが開いている間(露光中)に手が動いてしまうことによる手ブレを補正する手ぶれ補正レンズ。全てのデジタル一眼レフで使用可能だが、古いフィルムカメラでは使えない機種もある。

● VR搭載レンズは、1本を除き全て非Ai、CPU内蔵、絞りリングを省略したGタイプである。
● AF-Sレンズは、全てのデジタル一眼レフで使用可能である。

● レンズ例:
   AF-S VR Nikkor ED 200mm F2G(IF) (レンズ名に”VR”という文字が含まれる)
Gタイプレンズ 01年3月〜 絞りリングを省略した新タイプのレンズ。全てのデジタル一眼レフで使用可能だが、ボディ側で絞りをコントロールできない古いフィルムカメラでは使えない機種もある。Gタイプレンズは全てCPU内蔵Dタイプ(距離エンコーダー内蔵)でもある。

● レンズ例:
   AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6G VR (F値の後に”G”という文字を含む)
DXレンズ 03年6月〜 APS-Cサイズフォーマット専用レンズ。イメージサークルが小さい為、35mmフィルムカメラやFXフォーマットカメラに装着すると四隅がケラレる。但しFXフォーマット判デジタル一眼レフではクロップ機能で使用可。

● DXレンズは、全てCPU内蔵、AF、非Ai、絞りリングを省略したGタイプである。
● レンズ例: 
   AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR (レンズ名に”DX”という文字が含まれる)
FXレンズ     35mmフィルム判をカバーするイメージサークルを持つ。別名「フルサイズレンズ」「35mm判レンズ」「135フォーマット判レンズ」と呼ばれ、DXタイプレンズ以外の現行のデジタル対応レンズ全てを示す。

(広義では「Nikon F」当時のオートニッコールなど古いレンズも35mm判ではあるが、FXレンズとは呼ばれない)
PC-E

Eタイプレンズ

08年2月〜

13年5月〜



PC-Eレンズはアオリ機構、レボルビング機構を備えたレンズで、レンズ内に組み込まれたステッピングモーターで駆動する電磁駆動絞りを搭載している。

● レンズ例:
   PC-E NIKKOR 24mm F3.5 D ED (レンズ名に”PC-E”という文字が含まれる)

Eタイプレンズは、電磁駆動絞り採用の新タイプのレンズ群。

● レンズ例:
   AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR (f値の後に”E”という文字を含む)

PC-Eレンズは、CPU内蔵、MF、非Ai、Dタイプでもある。

Eタイプレンズは、CPU内蔵AF-SVR(手振れ補正)、非Ai、絞りリングを省略したGタイプでもある。

● ほぼ全てのデジタル一眼レフで使用可能である。
AF-P 16年9月〜 AF-Pは、AF駆動にSTM(ステッピングモーター = パルスモーター)を搭載した新レンズ群で、起動や停止・逆転時のレスポンスや位置決め制御性が高く駆動音も極めて静かなため、動画撮影時などレンズの駆動音が気になる場面に適する。AF-S(超音波モーター内蔵レンズ)では、駆動時の「サーッ」音、停止時の「カタッ」音など動画撮影時にカメラ本体内蔵のマイクで音を拾ってしまうことがあるが、これが改善されるようである。


● AF-Pレンズは全てCPU内蔵であり、DXレンズは絞りリングを省略したGタイプ、FXレンズはEタイプでもある。
● AF-Pレンズは、おおよそ平成25(2013)年発売のD7100、Df、D5300以降のデジタル一眼レフのみ使用可。

● レンズ例:
   AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR (レンズ名に”AF-P”という文字が含まれる)

注:  86年4月発売のAFレンズ以降は、全てCPUを内蔵している。





時系列で見るFマウント



昭和34(1959)年6月、「Nikon F」発売と同時にFマウントの歴史がスタートしてから現在までの約50年の間、カメラに対する様々な要求や機能アップに対応する為、 レンズ〜ボディ間の情報受け渡しやメカ的制御を行なうべくFマウントには多くの変更が加えられている。

その目的は大別して、

 1.露出計との連動、操作性向上
 2.露出の自動化(AE)、精度向上
 3.複雑な機械式連動から電子化(CPU搭載)へ
 4.AFへの対応、合焦速度の向上
 5.手ブレ補正、電磁駆動絞りなどの搭載

に分けられる。

正確に言えばマウント内径やフランジバック等の寸法的属性は変わっていないが、レンズ・ボディ共に多くのレバーやピンが付加され、Fマウントを通して連結・情報伝達を行なっているということである。

以下に時系列で主な機能追加に対応するFマウント関連の変更内容を示す。


時期 機能追加・変更 マウント関連変更内容 備考
ボディ側 レンズ側
59/06 外部(外付け)露出計との連動   露出計連動ピン 露出計連動爪 所謂「カニの爪(カニ爪)」。ニコンメーター(外付け)、「Nikon F フォトミック」
65/09 内蔵露出計との連動(TTL測光) 開放F値手動設定 開放F値補正目盛り   「Nikon F フォトミックT」 (TTL開放測光)
レンズ交換する毎に開放F値をセットし直す必要がある
67/10 レンズ開放F値通知方法変更 開放F値半自動設定     Nikomat FTN (通称ガチャガチャ
72/12 絞り優先AE       Nikomat EL (ニコン初の電子シャッター搭載、絞り優先のTTL・AE)
73/03 最初期のシャッター速度優先AE 「Nikon F2 フォトミックS」 +EEコントロールユニット(レンズの絞りリングを直接サーボモーターで回す方式)で実現
77/03 絞り値通知方法の変更 Aiレンズ 露出計連動レバー 露出計連動ガイド Ai = 開放F値自動補正方式。 「Nikon F2 フォトミックA」など
最小絞り設定警告用ガイド (f)EEコントロールユニット用連動ガイドを流用し、02/6発売のD100から最小絞り設定警告表示に使用。

シャッター速度優先AEマルチパターン測光搭載への布石
開放F値連動レバー 開放F値連動ガイド  開放F値(絶対値)通知用。開放F値連動レバーのあるボディは80/05月の「Nikon FG」が最初。
●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係
80/02 絞り制御/露出制御の適正化 Ai-Sレンズ レンズ識別ピン レンズタイプ識別ノッチ AiレンズとAi-Sレンズを識別し、適正露出を確保する。
プログラムAE搭載への布石
レンズ焦点距離識別機能
レンズ焦点距離識別レバー 焦点距離識別リッジ ●レンズ焦点距離識別レバー
焦点距離が135mm以上のレンズを識別し、手ブレ防止の為に高速プログラムに切り替える。後の 「Nikon FA」でシャッター速度優先AEマルチパターン測光にて使用
82/05 プログラムAE搭載       Nikon FG(プログラムオート+絞り優先AE
83/04 第一世代AF   (電子接点) (電子接点) Nikon F3AF (AFファインダー+モーター内蔵AFレンズによる)
83/09 シャッター速度優先AEマルチパターン測光搭載       Nikon FA (ニコン初のシャッター速度優先AEと世界初のマルチパターン測光を採用)
86/04 第二世代AF+CPU内蔵 AFレンズ
CPU内蔵レンズ
電子接点
AFカップリング
電子接点
AFカップリング
Nikon F-501 (TTL位相検出方式AF搭載、ボディ内モーター。初のCPU内蔵方式)
88/03 CPU内蔵のMFレンズ Ai-Pレンズ     以下の3本のみ。Ai-Sタイプ、非Dタイプ。
Ai Nikkor ED 500mm F4P
Ai Zoom Nikkor ED 1200-1700mm F5.6-8P(IF)
Ai Nikkor 45mm F2.8P (パンケーキタイプ)
92/09 撮影距離通知
(露出・調光の高精度化)
Dタイプレンズ   (距離エンコーダー内蔵) Nikon F90 (距離情報を加味した3D-8分割マルチパターン測光)
95/09 ニコン初のデジタル一眼レフ E2/E2S    
96/11 超音波モーター内蔵レンズ AF-S     Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)が最初
00/11 手ブレ補正内蔵レンズ VR     Ai AF VR Zoom Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6Dなど
01/03 絞り環を省略 Gタイプレンズ (絞り環削除) (絞り環削除) レンズ絞りリング省略。以下の2本が最初に発売。
AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G (B/SL)
AF Zoom Nikkor 70-300mm F4-5.6G (B/SL)
03/06 デジタル専用レンズ DXレンズ     AF-S DX Zoom Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)
06/12 AFカップリング削除
(一部機種)
AF-S専用  AFカップリング削除   Nikon D40、D40x、D60、D3000シリーズ、D5000シリーズなど
08/02 電磁駆動絞り
 (PC-Eレンズ
      電磁駆動による自動絞り機構。08/02発売のPC-E NIKKOR 24mm F3.5 D EDに初めて搭載。 Nikon D3シリーズ、D300シリーズ、及び、平成20(2008)年7月発売のD700以降の全デジタル一眼レフで使用可能となった。
●そして完全電子マウントへ(?) 参照 )
13/05 電磁駆動絞り
 (一般レンズへ展開)
Eタイプレンズ 絞り連動レバー削除 以下の望遠レンズに電磁駆動絞り機構を搭載し、新たに「Eタイプレンズ」と呼称。
AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR (2013/5/3)
16/09 ステッピングモーター内蔵レンズ AF-P     動画撮影時のAF駆動音低減。
AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR


以上を概説すると、

昭和34(1959)年6月、「Nikon F」の発売当初から全てのレンズに露出計連動爪が付いており(極初期の一部を除く)、外部露出計と絞り連動可能であった。(シャッター速度も露出計を本体シャッターダイヤルに被せる形式なので連動する)

露出計連動爪 露出計連動爪 ニコンメーター1型 Nikon F フォトミック


昭和40(1965)年9月に発売された「Nikon F フォトミックT」(ファインダー交換式)以降はTTL開放測光を採用しており、やはり露出計と絞り連動する。(シャッターも連動する)

しかし、外部露出計や初期のフォトミックファインダー系はレンズ交換する毎に開放F値をセットし直す(開放F値手動設定)必要があり、操作面の問題からより簡単な手順で行なえる「ガチャガチャ方式」が開発された。

さらに、レンズを装着するだけで開放F値を設定できないか、という要望に対し、昭和52(1977)年にAi方式(開放F値自動補正方式)レンズが発売された。Ai方式のレンズ後部には、絞り値をボディに伝える露出計連動ガイドと、レンズの開放F値を伝える開放F値連動ガイドが追加されている。

露出計連動ガイド 開放F値連動ガイド


だがAi方式では絞りコントロールの精度に問題があり、後のシャッター速度優先AE●マルチパターン測光搭載に対応できず、3年後の昭和55(1980)年にはボディからレンズ絞りを正確に制御できるAi-S方式が開発された。(同時に焦点距離識別リッジレンズタイプ識別ノッチが追加)

図1: Aiレンズの絞り制御(イメージ) 図2: Ai-Sレンズの絞り制御(イメージ) 焦点距離識別リッジ レンズタイプ識別ノッチ

  (以上、●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係参照)


レンズ〜ボディ間の情報のやり取りを機械的に行なうにはあまりにも複雑化してしまったFマウント。。

そこで昭和58(1983)年4月、第一世代のAF機(Nikon F3AF)において、レンズ内モーター駆動方式AFの採用を契機に ボディとレンズに電子接点を追加、レンズ内にCPUを内蔵し、AF作動電源供給や情報通信(の一部)を行なうことになった。(但しCPU連動方式とは言わない)

その3年後の昭和61(1986)年4月、第二世代のAF化(Nikon F-501)時点で電子接点数をF3AFの6端子から7端子に増やし、再規格化を行なって「CPU連動方式」と呼称されるようになった。

さらに超音波モーター内蔵レンズ(AF-S)/手ブレ補正内蔵レンズ(VR)の開発や、レンズから絞りリングを廃したGタイプレンズ、デジタル専用レンズ(DXレンズ)、電磁駆動による自動絞り機構を採用したPC-Eレンズが発売、平成25(2013)年5月には一般レンズ(望遠レンズ)に電磁駆動機構を搭載した「Eタイプレンズ」が発売、平成28(2016)年9月には動画撮影時のAF駆動音低減を目指したAF-Pレンズが発売され現在に至っている。



基本データ



形式 3つ爪バヨネット
マウント内径 44mm(バヨネット爪間) (バヨネット爪を含まない内径は47mm)
マウント外径 56mm/57mm(※1
マウント幅 4.5mm/5.0mm(※1
装着角 左回転約58度
フランジバック 46.5mm
ボディ側公差 ±0.02mm以内
材質 ステンレス、または真鍮クロムメッキ(※2
 

マニュアルフォーカスカメラのマウント
 
   
オートフォーカスカメラのマウント
 

マニュアルフォーカスカメラのマウント左下部

オートフォーカスカメラのマウント左下部(AFカップリング


 

・Fマウントの原点はレンジファインダー機のニコンSマウントから始まっている。Sマウント自体はコンタックスマウントのコピーであり、ライカがねじマウントであったのに対し、コンタックスは最初からバヨネットマウントを採用していた。左に回して装着する方式もコンタックスと同様である。

・マウント内径を44mmとした理由は、135フォーマット(35mmフィルム)の対角線長43.26mmが入り切るサイズとしたことであると言われている。

・フランジバック長(マウント面〜フィルム面の長さ)の46.5mmという値は、一眼レフカメラボディ内のクイックリターンミラーを作動させるために長くする必要があったことから決められた。ただ、他社機と比較して最も長い方であり、フランジバック長が短い他社機にマウントアダプターを介してニッコールレンズを装着することも可能である。(※3

 
・フランジバックと類似の規格としてバックフォーカスがあるが、これはレンズ最後端(レンズ保持部材含む)とフィルム面の間の長さである。つまりレンズによって変わる値となる。ミラーが存在しない レンジファインダーカメラ(RF)においてはレンズ最後端を限りなくフィルムに近づけることが出来るのでバックフォーカス長は短く出来るが、一眼レフカメラではレンズと可動ミラーがぶつからないだけのバックフォーカス長が必要である。Nikon Fの頃の60年代の魚眼レンズ(Fisheye NIKKOR 8mm F8 など)では、レンズ最後端がミラーボックス内に大きく入り込んでいて(バックフォーカス長が短く)ミラーと干渉する為、ミラーアップして使用しなければならなかった。

フランジバックとバックフォーカス

 

※1:

《 Fマウントの外径と幅 》


昭和61(1986)年4月、第二世代のAF機である「Nikon F-501」が発売された。ニコンで最初にAFを搭載した「F3AF」(昭和58(1983)年4月)ではAFファインダー(DX-1AF)と駆動モーターを組み込んだAFレンズによるAFを実現していたが、「F-501」ではボディ内モーターによるAF駆動方式を採用し、マウント左下部に(J)AFカップリングが新たに設けられた為、ボディマウントの幅が広げられている。

  マウント幅: MFカメラ=4.5mm、 AFカメラ=5.0mm  (共に実測値)

結果的にマウント外径も56mmから57mmに拡大された。(以上の数値は実測値。 但し「PRONEA S」など一部の機種には外径がこれらの数値よりも大きいものも存在する)

同時にカメラボディキャップも「BF-1」から「BF-1A」(AFボディ対応)に変更されており、AFボディに旧「BF-1」以前のキャップを装着すると故障の原因となる。(ボディの電子接点部とキャップ後端部が干渉する)

AFカメラでは、MFカメラに比べてマウント外径が約1mm程大きくなっているため、レンズ側絞りリング後部のマウント部から飛び出している部分(スカート部)の内径がこれより小さいレンズはボディ内に入り切らず装着できない。よって、古いマニュアルフォーカスのフィルムカメラで使用できたレンズが、全てオートフォーカスカメラで装着できるとは限らない。

   → レンズ絞りリング後部(スカート部)の内径と、ボディ側マウント外径の違いによる装着不能

 

※2:

《 Fマウントの材質 》

Nikon F、F2、F3などのマウントはステンレス製であるが、F4からは真鍮製となっている。(但しF3については途中から真鍮製に変更された。変更時期は不明)
よって、現在発売されているフィルム一眼レフカメラ、および、デジタル一眼レフカメラのマウントは、真鍮にクロムメッキを 施したものとなっている。

一般的に、ステンレス鋼は高強度であるが加工が難しい、真鍮は加工が簡単だが変形しやすいという特徴があるが、ニコンでは「ステンレス製、真鍮製ともに、ニコンの品質基準を満たしているので安心して使用できる」とアナウンスしている。

(以上、ニコンに確認済み。但し一部のカメラ雑誌には、D4やD800のマウントはステンレス製との記述がある。)


マウント部の材質の変更理由については当時より公表はされていないが、当サイト掲示板に投稿された情報によれば、AF化に伴うマウント面の(J)AFカップリング を通す穴を開ける必要があること、及び精度が必要であることから加工し易い真鍮を採用したらしい。(そして当然コスト面も?)

ちなみに、ニコン一眼レフのAF化は 昭和58(1983)年4月発売の「Nikon F3AF」が最初であるが、この機種はレンズ内モーターを採用しており、マウントに(J)AFカップリング用の穴は開いていない。AFカップリング方式(ボディ内モーター駆動方式)が採用されたのは、昭和61(1986)年4月発売の「F-501」が最初である。


尚、「Nikon F」発売当時、専門誌に掲載された記事によれば、材質は「18-8ステンレス(JIS略号はSUS304)棒」をL字型断面に加工したものが用いられている。


  18-8ステンレス: クロム18%、ニッケル8%を含む最も標準的なステンレス。JIS略号では「SUS304」。  


SUS304は、錆や腐食に強く、ニッケルを混ぜることで強度も高くなる。
しかし、力を加えると硬化してしまう「加工硬化」が激しく、且つ熱伝導率が低いため、穴あけ時に発生する熱(800℃〜1200℃程度)がドリル刃先に集中し工具摩耗が著しく、難削材と呼ばれているらしい。

真鍮クロムメッキの仕様は不明であるが、「硬度」「耐摩耗性」「耐食性」に優れている工業用クロムメッキ(硬質クロムメッキ=ハードクロムメッキ)が施されていると思われる。

材料仕様比較の指針の一つである「ビッカース硬さ」(工業材料の硬さを表す尺度)では、18-8ステンレス鋼(SUS304)の表面固さが200程度に対して「ハードクロムメッキ」では最低でも同750以上になるようである。(つまり、ハードクロムメッキの方が固い)

よって、強度・硬度・耐酸化性・耐粒界腐食性・耐磨耗性などの材料仕様・特性上でも真鍮クロムメッキがステンレスに劣る訳ではないようだ。

F発売当時に比べて、これらの材料(特性)は年々進歩しているであろうし、いずれにしろ変更理由が公表されておらず、真鍮クロムメッキが継続採用されているということは「コスト面」や「材料に対するイメージ」だけでなく、「材料の最適特性面」からの判断であると思いたいところではある。

(以上、08/07/30加筆)

 

※3:

《 マウントアダプター 》


各カメラメーカーの純正レンズは、そのメーカーのカメラにのみ装着可能ではあるが、Fマウントよりフランジバック長が短い他社機にマウントアダプターを介してニッコールレンズを装着することも可能である。


フランジバックとマウントアダプター
 装着レンズ(この場合はニッコールレンズ)マウントのフランジバックは46.5mm。
装着するカメラ側のフランジバックがこれより短い場合はレンズとボディの間にマウントアダプターを介して装着できる。

例えば、装着するカメラがソニーαEマウントならフランジバックが18mmであるので、

46.5mm-18mm=28.5mm

の厚さのマウントアダプターを介して装着できる。

つまり、フランジバックの短いカメラにフランジバックの長いマウント用レンズは装着できるが、逆にフランジバックの長いカメラにフランジバックの短いマウント用レンズは装着できない。(装着できたとしても無限遠が出ないが、補正レンズにより無限遠対応のマウントアダプターもある)

レンズ側マウントのフランジバック カメラ側のフランジバック 装着可
レンズ側マウントのフランジバック カメラ側のフランジバック 装着不可

例えば、キヤノンEOSボディ(44mm)にニッコールレンズ(46.5mm)を装着できるが、ニコンボディにキヤノンEOS用レンズを装着できない。

さらに、マウント口径においても小さな口径のカメラに大きな口径用レンズ装着に制限があることもある。(フランジバックに充分な差があれば装着可能な場合もある)

APS-Cサイズのイメージセンサーを持つカメラ、例えばソニーのNEX-5Tにマウントアダプターを介してフルサイズ(FX)ニッコールを装着すると、撮影画角はレンズ焦点距離の約1.5倍に相当する画角(望遠)となるが、最近では縮小光学系(0.7倍程度)を搭載したマウントアダプターが発売されており、これを使えば装着レンズ本来の画角で撮影できる。


表:主な一眼レフカメラとミラーレス一眼カメラのフランジバック
マウント名 フランジバック 口径 備考
コンタックスGマウント 29.0mm 44.0mm レンジファインダー
フォーサーズマウント 38.67mm (非公開)
ミノルタSRマウント 43.5mm 45.0mm
キヤノンEFマウント 44mm 54mm
ソニーAマウント(αマウント) 44.5mm 50.0mm
ペンタックスKマウント 45.46mm 約45mm バヨネット爪間の口径値。 (バヨネット爪を含まない内径は48mm)
コンタックス/ヤシカマウント 45.5mm 48.0mm
ニコンFマウント 46.5mm 44mm バヨネット爪間の口径値。 (バヨネット爪を含まない内径は47mm)
ライカRマウント 47.15mm 49.0mm
コンタックスNマウント 48.0mm 55.0mm
ミラーレス一眼カメラ
ペンタックスQマウント 9.2mm 約29mm
ニコンZマウント 16mm 55mm Fマウントレンズ用純正アダプターは、自動絞り、VR、AF-Sに対応
ニコン1マウント 約17mm? Fマウントレンズ用純正アダプターは、自動絞り、VR、AF-Sに対応
富士フイルムXマウント 17.7mm
キヤノンEF-Mマウント 18mm
ソニーEマウント 18mm 約46mm (非公開)バヨネット爪を含まない内径
マイクロフォーサーズマウント 約20mm (非公開) (両値とも非公開)
注)口径値はメーカーによって、バヨネット爪間の内径値とバヨネット爪を含まない内径値が混在しているようだ。

ニコンFマウントはフランジバックが長いので、ニコンボディに取り付けられる他社レンズは非常に少ないが、ペンタックス67/ペンタックス645/マミヤ645/ハッセルブラッドの各中判レンズや、補正レンズ付きでM42レンズ/キヤノンFDレンズ/ペンタックスKマウントレンズが使えるマウントアダプター、さらには、ライカR用レンズのRマウント部を取り外してFマウントをネジ止めして装着できるアダプターなどが市販されている。


※4:

《 特殊形状のマウント:4つ爪バヨネット 》


レンズとボディの間に装着して主レンズの焦点距離を拡大する「テレコンバーター」のマウント(レンズ装着側)は特殊な形状をしている。

通常のカメラボディマウント TC-20E IIIなどのテレコンバーター
余分な爪(赤矢印)が追加されている

この目的はテレコンバーターに対応していないレンズの装着を物理的にブロックするためである。(AF-Sテレコンバーターの使用可能なレンズ

この爪も合わせてカウントすると、Fマウントは「4つ爪バヨネット」のバージョンがあることになる(?)。

とりあえず、当サイトでは「テレコン対応マウント」と呼んでおく。詳細はテレコンバーターの特殊マウント形状とテレコン対応マウントを参照。

 




《 Zマウント 》

    ミラーレス一眼「Z7」「Z6」に採用された新マウント。。

Zマウント
 
表:ZマウントとFマウントの比較
Zマウント (Fマウント)
形式 4つ爪バヨネット 3つ爪バヨネット
マウント内径 55mm(バヨネット爪含まず) 44mm(バヨネット爪間)
47mm(バヨネット爪含まず)
装着角 左回転40度 左回転58度
フランジバック 16mm 46.5mm
材質 ステンレス ステンレス、または真鍮クロムメッキ(※2

4つ爪にした理由:

大口径のZマウントではFマウントのような3つ爪では必要な強度を得られない。しかし、1本の長さを長くしてしまうと、レンズ着脱時の装着角が大きくなってしまい操作性が犠牲となる。そこで、4つ爪にすることで装着角がFマウントの約58度から約40度に抑え、強度と操作性の両立を図ることができた。材質は高強度のステンレス鋼。(但しレンズ側は真鍮製)
   
ZマウントとFマウントの比較(1) ZマウントとFマウントの比較(2)
ZマウントはほぼFマウントの外枠サイズと同じ。。
(右側のFマウントは、D700のものです)
FマウントがほぼZマウントの中に入ってしまう。。

ミラーレスによる小型軽量化への期待とは相反し大口径のマウントを採用した理由として、メーカーでは「口径が大きくなることで光学設計の自由度と共に、メカ設計の自由度も上がり、結果的にコンパクトなレンズが開発できる」としているらしいが、実際にFマウントと比較してみると、

レンズ名 サイズ 質量
NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S 約88.5mm×124.5mm 約650g
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 約98mm×131.5mm 約970g
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 約89mm×126.0mm 約805g
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 約88.0mm×154.5mm 約1070g
NIKKOR Z 24mm f/1.8 S 約78mm×96.5mm 約450g
AF-S NIKKOR 24mm f/1.8G ED 約77.5mm×83.0mm 約355g
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S 約76.0mm×86.5mm 約415g
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G 約72mm×52.5mm 約185g
ズーム系ではZマウントレンズの方が小型化されているいるが、単焦点系ではFマウントレンズの方が小さい。


●「マウントアダプター FTZ」を介して、NIKKOR F レンズが使用可能
 ・ AI NIKKOR 以降の約360種のNIKKOR F レンズでAE撮影が可能
 ・ さらにその内、モーター内蔵のAF-P、AF-S、AF-Iレンズ計90種でAE/AF撮影が可能
 ・ モーターを内蔵していないAFレンズ(G/Dタイプ)はAF不可だが、AEやフォーカスエイドが使用可能
 ・ VR搭載のNIKKOR Fレンズでは、レンズ内VRとカメラ内VRが協働し、三軸の手ブレ補正可能
 ・ VR非搭載のNIKKOR Fレンズ(CPUレンズ)でも、Z7/Z6のカメラ内VRで手ブレ補正可能
 ・ 非CPUレンズ(AI、AI-S、改造AI)使用時
    カメラの[レンズ情報手動設定]で焦点距離を設定することで、カメラ内VRを使用可能
    マニュアルフォーカス(MF、フォーカスエイド不可)、露出モードは絞り優先(A)かマニュアル(M)で使用可
 ・ モーター起動による絞り連動レバー付き。AFモーターはなし。露出計連動レバー(Ai連動レバー)なし

● Zレンズ(「Nikon Z 24-70mm f/2.8S」など)にはRENESAS(ルネサス)社製のマイクロコントローラ(MCU)である「RX651」が搭載されている。
 ・ 32ビットRX CPU(RXv2)コア 120MHz動作 (34 CoreMark/mA)、コードフラッシュメモリ512KB、256K RAM
 ・ イーサネット、USB 2.0、シリアルインターフェース
 ・ 2Dグラフィックエンジン、12ビットA/Dコンバータ、12ビットD/Aコンバータ、温度センサ
 ・ 動作周囲温度 Dバージョン:-40〜+85°C
 ・ OSは、μITRON4.0か

 



Nikon Fマウント図


 

Nikon Fマウント図 (ボディ側)


最も複雑な「Nikon F4」ボディのマウント部です。





露出計連動ピンのある「Nikomat FTN」ボディのマウント部です。





可倒式の露出計連動レバーと連動レバー解除ボタンを持つ「Nikon FM」のマウント部です。





最小絞り設定警告レバーを持つ「Nikon D70」のマウント部です。





最小絞り設定警告レバーはD70等の円周方向スライド式に対し、D40等では押し込み式となっています。(詳しくはこちら


 
 

(A)電子接点
カメラボディとレンズ間の情報伝達を電気信号で行なうCPU連動方式の為の接点。昭和61(1986)年4月発売のAF搭載機「Nikon F-501」からこのCPU内蔵方式が採用された。
 
(B)露出計連動レバー(いわゆるAi連動レバー)
Ai方式のレンズにある「(d)露出計連動ガイド」と連動して、設定した絞りが開放絞りから何段絞ったかが伝えられる。 ( → ●Ai方式を参照 )
これには可倒式と固定式のボディが存在し、可倒式のボディの場合は上に倒して回避させることで非Aiレンズを装着することができるが、固定式のボディに非Aiレンズを装着するとレンズの絞り環がこのレバーに干渉してしまう為装着できない。(→ カメラ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)の干渉

近年のデジタル一眼レフでは、一部のプロ/ハイアマ機以外は連動レバーがなくCPU連動方式のみのボディが増える傾向にある。

(露出計連動レバーの有無、可倒式/固定式のボディ一覧はこちらを参照)

(C)連動レバー解除ボタン
このボタンを押しながら(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)を上に倒すことができる。

(D)レンズ着脱指標
レンズ側の着脱指標をこれに合わせて反時計回りに回転させ、レンズを装着する。(装着角 左回転約58度)
 
(E)レンズ識別ピン
AiレンズAi-Sレンズを識別し、適正露出を確保する。レンズ側の(g)レンズタイプ識別ノッチに対応。Ai-Sレンズが登場してから追加された。 (F5では廃止)
構造的にはAi-Sレンズに追加されている(g)レンズタイプ識別ノッチ(単なる溝)のあるレンズを装着すると、このピンが出たままの状態となることでAi-Sレンズであることを識別する。
 
(F)レンズ焦点距離識別レバー(プログラム切り替えレバー)
レンズ側の(j)焦点距離識別リッジに対応し、焦点距離が135mm以上のレンズを識別して、プログラムモードでは手ブレを防ぐために高速プログラムに切り替える。
「Nikon FA」に初めて装備された。また、マルチパターン測光にも用いられる。
 
(G)レンズ着脱ボタン
レンズを外す時にこのボタンを押してレンズを時計回りに回す。
 
(H)レンズ着脱ロックピン
レンズ装着時、このピンがレンズ側(b)位置決め溝に入り込みロックされる。
 
(I)開放F値連動レバー
Ai(-S)方式のレンズ後部にある「(e)開放F値連動ガイド」がこのレバーを反時計方向に回し、開放F値を受け取って自動露出やファインダー内表示、マルチパターン測光などに用いられた。(Nikon F4、FG、FAなど)

ネイティブ(純正)のAi(-S)ニッコールレンズには、このレバーに対応する「(e)開放F値連動ガイド」があるが改造Aiレンズには存在しない。
 
(J)AFカップリング
ボディ駆動式のAFレンズの場合、レンズ側の(i)AFカップリングと結合しAF作動を行なう。(G)レンズ着脱ボタンを押すと引っ込む。 D40/D40x/D60/D3000シリーズ/D5000シリーズなどモーター内蔵レンズ専用機では省略された。
 
(K)絞り連動レバー
レンズを装着するとレンズ側の(a)絞り連動レバーを押し上げ、絞りを開放状態にする。次にシャッターボタンを押すとボディ側の絞り連動レバーが下がり、押し上げられていたレンズ側の絞り連動レバーがスプリングの力でこれを追いかけ、あらかじめ設定された絞り位置で停止する。上下ストローク長は約9mm。機種、或いはAE化の前と後で形状が変わっている(規格化されていない)。
( 参考: ●絞り連動レバーと絞りの基本的な動作について )
 
(L)露出計連動ピン
旧来のAuto Nikkorレンズ側にある(c)露出計連動爪(カニの爪)で挟まれるピンで、レンズ側の絞り値がボディ側の露出計に伝えられる。

CPU内蔵AFニッコールレンズではこの連動爪はなくなった。

(露出計連動ピンのあるボディ一覧はこちらを参照)
 
(M)最小絞り設定警告レバー
ボディ側から絞りをコントロールする場合、レンズが最小絞りにセットされていなければならない。レンズ側の(k)最小絞り設定警告用ガイドがこのレバーを押すことにより最小絞りになっているかが検知され、最小絞りでなければ液晶表示パネルなどに警告エラーが表示される。(円周方向スライド式と押し込み式の両方式がある

このレバーはCPU連動方式専用ボディ(こちら)にあるが、 CPU+(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)併用機種(こちら)ではこのレバーは存在しない。

( 参考: ●最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー )
 

Nikon Fマウント図 (レンズ側)


「Nikon F」以来の「Auto Nikkor」のレンズマウント部です。






昭和52(1977)年に商品化された「Ai Nikkor」のレンズマウント部です。






昭和55(1980)年から発売された「●Ai-S Nikkor」のレンズマウント部です。


 
(a)絞り連動レバー
(ボディ側の(K)絞り連動レバーの説明を参照)
Sタイプ以前のレンズではこのレバーの動きと絞りの状態が比例していなかったが、Ai-S Nikkorレンズでは、このレバーの動きを絞りの段数にほぼ比例するようにした。
電磁駆動絞り採用のPC-EEタイプレンズでは、このレバーは廃止されている。
 
(b)位置決め溝
レンズ装着時、この溝にボディ側の(H)レンズ着脱ロックピンが入り込みロックされる。
 
(c)露出計連動爪(カニ爪)
昭和34(1959)年6月発売の「Nikon F」以来、レンズの絞り環に露出計と連動させるための「露出計連動爪(別名:カニの爪)」を付けたのが始まりで、どのレンズでもF5.6の位置に付けられ、これを使って絞りの絶対値をボディ側の露出計連動ピン経由で露出計に伝えることができた。

CPU内蔵AFニッコールレンズではこの連動爪はなくなった。

詳しくはこちらを参照。
 
(d)露出計連動ガイド
Ai(開放F値自動補正方式)レンズに付加され、設定した絞りがそのレンズの開放絞りから何段絞ったものかをボディ側の(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)に伝える。

●Ai方式参照 )
 
(e)開放F値連動ガイド
いわゆるAiAi-S方式のレンズにあり、開放F値をボディ側の(I)開放F値連動レバー経由で伝え、マルチパターン測光などに使用する。
このガイドがあればAiニッコール、なければ改造Aiニッコールである。
 
(f)EEコントロールユニット用連動ガイド
「Nikon F2 フォトミック S」「Nikon F2 Photomic AS」の別売オプションであるEEコントロールユニット(レンズの絞りリングを直接サーボモーターで回す方式)に連動させる為のガイド爪。
このガイドピンはどのレンズでも最小絞り時に同一位置に来るようになっているので、後にこのガイドは「(k)最小絞り設定警告用ガイド」として利用されている。
 
(g)レンズタイプ識別ノッチ
AiとAi-Sレンズの区別用。ボディ側の(E)レンズ識別ピンに対応する。
Ai-S Nikkor レンズは昭和55(1980)年に登場)
構造的には溝が掘られているのみで、当該レンズを装着するとボディ側の(E)レンズ識別ピンが出たままの状態となることでAi-Sレンズであることを識別する。
 
(h)電子接点
カメラボディとレンズ間の情報伝達を電気信号で行なうCPU連動方式の為の接点。
 
(i)AFカップリング
ボディ駆動式のAFレンズの場合、ボディ側の(J)AFカップリングと結合しAF作動を行なう。
 
(j)焦点距離識別リッジ
Ai-Sレンズに追加され、ボディ側の(F)レンズ焦点距離識別レバー(プログラム切り替えレバー)に対応する。ボディ側で焦点距離が135mm以上のレンズを識別して、プログラムモードでは手ブレを防ぐために高速プログラムに切り替える。
 
(k)最小絞り設定警告用ガイド
どのレンズでも最小絞りにセットすると同一位置に来る仕様となっているので、装着時にボディ側の(M)最小絞り設定警告レバーを押し下げることにより最小絞りにセットされているか否かを検知する。(Aiレンズにある)
(元々は(f)EEコントロールユニット用連動ガイドとして使用されていた)

( 参考: ●最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー )





Fマウントレンズ体系図/分類



1.Fマウントレンズ体系図  (別ウィンドウで開く

  以下は、ニコンサイトの「F マウントレンズ体系図」を参考にして手を加えたものです。(但しいつの頃からか、ニコンサイトから削除されています)

レンズ分類 概説/レンズ例 レンズタイプ
CPU
レンズ
AF 非Ai ステッピング
モーター内蔵
AF-P
Eタイプ FXレンズ STM(ステッピングモーター)+電磁絞り。(FX)
例)AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR (17/07月)
AF-P E (FX)
Gタイプ DXレンズ STM(ステッピングモーター)内蔵。(DX)
例)AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR (17/06月)
AF-P G (DX)
超音波モーター
内蔵 (AF-S
Eタイプ FXレンズ 電磁絞り+ AF-S搭載。(FX)
例)AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR (16/01月)
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR (17/07月)
AF-S E (FX)
DXレンズ 電磁絞り+ AF-S搭載。(DX)
例)AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR (15/07月)
AF-S E (DX)
Gタイプ FXレンズ 例)AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR (13/03月)
AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G (08/12月)
AF-S G (FX)
DXレンズ 例)AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR (13/08月) AF-S G (DX)
モーター非内蔵 Gタイプ FXレンズ 例)AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G (01/03月) AF G (FX)
DXレンズ AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED (03/11月)のみ AF G (DX)
Ai-S
(Sタイプ)
モーター内蔵
AF-SAF-I
Dタイプ 超音波モーター
AF-S
例)AI AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED (99/9月)
AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED (00/10月)
Ai AF-S
コアレスモーター
AF-I
コアレスマイクロモーター駆動ユニット内蔵。以下の4本のみ
・Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) (92/9月)
・Ai AF-I Nikkor ED 600mm F4D(IF) (92/9月)
・Ai AF-I Nikkor ED 400mm F2.8D(IF) (94/7月)
・Ai AF-I Nikkor ED 500mm F4D(IF) (94/11月)
Ai AF-I
モーター非内蔵 Dタイプ 例)AI AF Zoom-Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF (00/10月) Ai AF D
非Dタイプ ボディ内モーター駆動AF機であるF-501(86/4月)から。
例)Ai AF Nikkor 50mm F1.4S (86/7月)
Ai AF S
MF 非Ai Eタイプ 電磁絞り PC NIKKOR 19mm f/4E ED (16/10月) PC (E)
PC-Eタイプ 電磁絞り PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED (09/7月) PC-E
Dタイプ メカ的連動絞り PC Micro Nikkor 85mm F2.8D (99/9月) PC (D)
Ai-S
(Sタイプ)
Ai-Pレンズ CPU内蔵のMFレンズ(Sタイプ、非Dタイプ)。以下の3本のみ
・Ai Nikkor ED 500mm F4P (88/3月)
・Ai Zoom Nikkor ED 1200-1700mm F5.6-8P(IF) (94/1月)
・Ai Nikkor 45mm F2.8P (01/7月)
Ai-P
非CPU
レンズ
AF F3AF用レンズAi-S コアレスマイクロモーター駆動ユニット内蔵。
信号接点6点、露出計連動爪付。以下の2本のみ。
・Ai AF Nikkor 80mm F2.8S (83/4月)
・Ai AF Nikkor ED 200mm F3.5S(IF) (83/4月)
これらのレンズは、F3AF、F-501、F4でのみAF作動可。
F3AF
MF Ai 純正Aiレンズ 非SタイプAiレンズ 例)Ai Nikkor 50mm F1.4 (77/3月) Ai Nikkor
Ai-S
(Sタイプ)
Ai-Sレンズ 例)Ai Nikkor 50mm f/1.4S (81/9月) Ai-S
シリーズE Nikon EMと同時発売の廉価版。例)シリーズE 35mm F2.5 (80/3月) Series E
   改造Aiレンズ 非Sタイプ Ai-Kai
非Aiレンズ 最初期のオートニッコール(オールドニッコール)。露出計連動爪
例)Nikkor-H Auto 50mm F2 (64/1月)
Old Nikkor
 
部は2023年2月現在の現行のレンズ)



以下の解説は現行レンズに限らない。既にディスコンされているレンズも含む。

Dタイプレンズは、全てCPU内蔵Ai-Sタイプである(但しPC/PC-Eレンズを除く)。モーター内蔵/非内蔵、AF/MFの両タイプがある。
    (Dタイプレンズを含め、92/09月以降に発売されたレンズは全て撮影距離をボディに伝えるエンコーダーを内蔵している)

Gタイプレンズは、全てCPU内蔵、AF、非Aiタイプである。(モーター内蔵/非内蔵の両タイプがある)

Eタイプレンズは、全てCPU内蔵、1本(※1)を除き、AF-SAF-Pを搭載、非Aiタイプであり、絞り環のないGタイプでもある。
    ※1)2016年発売の「PC NIKKOR 19mm f/4E ED」のみMFとなる。

AFレンズは全てCPUタイプ(但しF3AF用レンズは除く)であり、Ai-S/非Ai、モーター内蔵/非内蔵、GタイプDタイプEタイプ/非Dタイプなど様々なタイプがある。

AF-Sレンズは全てAFレンズでCPU内蔵GタイプDタイプEタイプDXレンズFXレンズがある。

AF-Pレンズは全てAFレンズでCPU内蔵、且つ絞り環のないGタイプEタイプであり、DXレンズFXレンズがある。
    ・ AF-PのGタイプDXレンズのみ。つまり、AF-Pを搭載しているDXレンズGタイプのみであり、Eタイプは存在しない。
    ・ AF-PのEタイプFXレンズのみ。つまり、AF-Pを搭載しているFXレンズEタイプのみであり、Gタイプは存在しない。

AF-Iレンズは4本のみでCPU内蔵、且つDタイプであり、絞りリングを持ち(Gタイプではない)、FXレンズのみである。

PC-Eレンズは2023年2月現在、1本のみでCPU内蔵、且つDタイプであり、絞りリングを持ち(Gタイプではない)、FXレンズのみである。
    ・ PC-E NIKKOR 24mm f/3.5D ED、PC-E Micro NIKKOR 85mm f/2.8D はディスコンとなっている。

F3AF用レンズは、AF-Iレンズと同様にコアレスモーターを内蔵し電子接点を持つが、CPUレンズではない。

VR搭載レンズは、1本(※2)を除き全て非Ai、CPU内蔵Gタイプである。但し、電磁絞り搭載のレンズはEタイプと呼称される。
    ※2)2000年発売の「AI AF VR Zoom-Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D」のみDタイプとなる。

DXタイプは、全てCPU内蔵、AF、非Ai、GタイプEタイプである。(モーター非内蔵の「AF DX フィッシュアイ Nikkor ED 10.5mm F2.8G」以外は全てAF-SタイプAF-Pレンズでもある。

CPUを内蔵しているのは、全AFレンズ(但しF3AF用レンズは除く)、及び、 マニュアルフォーカスのDタイプレンズ(PC、PC-Eレンズ)、Ai-Pレンズである。

● CPUを搭載していないのは、MFで、且つ、DタイプGタイプEタイプPC-EAi-Pのいずれでもないレンズである。

● MF(マニュアルフォーカス)レンズは、 PC-EEタイプのPC(パースペクティブ・コントロール)レンズとAi-Pレンズを除き、CPUを内蔵していない。

● PRONEAシリーズ(PRONEA 600i、PRONEA S)専用の「IXニッコール(IX Nikkor)」もFマウントではあるが、ここには含まない。
    (バックフォーカス長が短く、レンズ後端がミラーと接触する)

レンズ名の見方も参照のこと

 

2.Fマウントレンズ体系図(簡易版)

  以下は、前記「1.Fマウント体系図」を簡略化したものです。

CPUレンズ 非CPUレンズ

 

3.Fマウントレンズタイプ(レンズ分類)

  以下は、Fマウントレンズをタイプ別・発売年月別に分類したものです。 (レンズタイプと連動パーツの変遷も参照)

  レンズタイプ 発売 MF
/
AF
Ai C
P
U
D
G
E
D
X
A
F
V
R
概要/見分け方   レンズ例  
(1) Old Nikkor 59/06 MF ×           「Nikon F」と同時発売。露出計連動爪(カニ爪、カニの爪)付き。
 「従来レンズ」「オートニッコール」「オールドニッコール」等とも呼称
NIKKOR-S Auto 5cm F2
(2) Ai Nikkor 77/03 MF           露出計連動ガイドによる開放F値自動補正方式。
 (レンズ名が”Ai”で始まり、最後に”S”が付かず、”AF"は含まない)
Ai Nikkor 50mm F1.4
(3) Ai-S 80/02 MF           レンズ側絞り連動レバーの動きをリニア化。(→Ai-S
 (レンズ名が”Ai”で始まり、最後に”S”が付き、”AF"は含まない)
Ai Nikkor 50mm F1.8S
(4) Series E 80/03 MF           「Nikon EM」に合わせて発売された普及型レンズシリーズ。
(レンズ前面鏡胴部に「Nikon Lens Series」と表記がある)
Nikon Lens Series 35mm F2.5
(5) F3AF用 83/04 AF           「Nikon F3AF」と同時発売のF3AF用AFレンズ。 電子接点を持つがCPU連動方式ではない。 Ai AF Nikkor 80mm F2.8S
Ai AF Nikkor ED 200mm F3.5S(IF)
(6) Ai AF S 86/04 AF         CPU連動方式採用。「F-501」発売と同時発表。
 (レンズ名が”Ai AF”で始まり、最後に”S”が付く。この”S”は「Ai-S」の意味)
Ai AF Nikkor 50mm F1.8S
(7) Ai-P 88/03 MF         CPU連動方式のマニュアルフォーカスレンズ。(→Ai-P
 (レンズ名が”Ai”で始まり、最後に”P”が付く)
Ai Nikkor ED 500mm F4P(他全3本
(8) Ai AF D 92/09 AF D       撮影距離情報を伝達する距離エンコーダー内蔵。(→Dタイプ
 (レンズ名が”Ai AF”で始まり、最後に”D”が付き、”VR"を含まない)
Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D
(9) Ai AF-I 92/09 AF D       Ai AF Dタイプに加えて、レンズ内にコアレスモーター内蔵。(→AF-I
 (レンズ名が”Ai AF-I”で始まる)
Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) (他全4本)
(10) Ai AF-S 96/11 AF D   S   Ai AF Dタイプに加えて、レンズ内に超音波モーター内蔵。(→AF-S
 (レンズ名が”Ai AF-S”で始まる)
Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)
(11) PC (D) 99/09 MF × D DタイプのPC(シフト)レンズ。
 (レンズ名が”PC”で始まり、”D”を含む)
PC Micro Nikkor 85mm F2.8D
(12) Ai AF D(VR) 00/11 AF D     V
R
Ai AF Dタイプに加えて、手ブレ補正内蔵。(VRのDタイプは1本のみ)
 (レンズ名が”Ai AF VR”で始まる) 
Ai AF VR Zoom Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D のみ
(13) AF G 01/03 AF × G       レンズに絞り環を持たずボディから絞り制御を行うタイプ。(→Gタイプ
 (レンズ名が”AF”で始まり、”DX"を含まず、最後に”G”が付く)
AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G
(14) AF-S G 02/06 AF × G   S   AF Gタイプに加えて超音波モーター内蔵。(→AF-S
 (レンズ名が”AF-S”で始まり、”DX”や”VR"を含まない)
AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF)
(15) AF-S G(VR) 03/03 AF × G   S V
R
AF-S Gタイプに加えて、手ブレ補正内蔵。
 (レンズ名が”AF-S”で始まり、”VR”を含む)
AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)
(16) AF-S G(DX) 03/06 AF × G D
X
S   AF-S GタイプのDXサイズ判。
 (レンズ名が”AF-S DX”で始まり、”VR”を含まない)
AF-S DX Zoom Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)
(17) AF G (DX) 03/11 AF × G D
X
    AF GタイプのDXサイズ判。
 (レンズ名が”AF DX”で始まる)
AF DX フィッシュアイ Nikkor ED 10.5mm F2.8G のみ
(18) AF-S G (DX/VR) 05/12 AF × G D
X
S V
R
AF-S G(DX)タイプに加えて、手ブレ補正内蔵。
 (レンズ名が”AF-S DX”で始まり、”VR”を含む)
AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G(IF)
(19) PC-E 08/02 MF × D 電磁駆動絞り採用のシフトレンズ。後にPCのEタイプに呼称変更。
 (レンズ名が”PC-E”で始まる)
PC-E 24mm F3.5D 等、計3本
(20) AF-S E(VR) 13/05 AF × E S V
R
電磁駆動絞り採用のFX判、AF-S + 手ブレ補正内蔵。 (→Eタイプ
 (レンズ名が”AF-S”で始まり、”E”と”VR”を含む)
AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR
(21) AF-S E(DX/VR) 15/07 AF × E D
X
S V
R
電磁駆動絞り採用のDX判。AF-S + 手ブレ補正内蔵。 (→Eタイプ
 (レンズ名が”AF-S DX”で始まり、”E”と”VR”を含む)
AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR
(22) PC (E) 16/10 MF × E 電磁駆動絞り採用のシフトレンズ=PCのEタイプ。PC-Eから呼称変更。
 (レンズ名が”PC”で始まり、”E”を含む)
PC NIKKOR 19mm f/4E ED
(23) AF-P G(DX) 16/09 AF × G D
X
P  V
R
AFにSTM(ステッピングモーター)を搭載したGタイプDXサイズ判。
 (レンズ名が”AF-P DX”で始まる)
AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR
(24) AF-P E(FX) 17/07 AF × E P  V
R
AFにSTM(ステッピングモーター)を搭載したEタイプFXサイズ判。
 (レンズ名が”AF-P”で始まり、"DX"を含まない)
AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR
MF/AF: 
Ai: 
CPU: 
DGE: 
DX: 
AF: 
VR: 
マニュアルフォーカス/オートフォーカス
●:Sタイプ ○:非Sタイプ  ×:非Ai
CPU内蔵有無
D:Dタイプレンズ  G:Gタイプレンズ  E:Eタイプレンズ 
DXタイプレンズ (空白はFXサイズ判
S:AF-S(超音波モーター内蔵) P:AF-P(ステッピングモーター内蔵)
VR(手ブレ補正)有無
参考: レンズのシリアルNo.とタイプ(Ai、Ai-S、AF、AF-Sなど) 、 レンズの仕様とタイプ(Ai、Ai-S、AF、AF-Sなど)
   (上記分類方法は、「Haniwaさんのサイト」を参考にさせて頂いています)

 


4.レンズタイプと連動パーツの変遷

露出計連動爪(カニ爪)による外部露出計連動からAi方式(開放F値自動補正方式)による内蔵露出計連動へ、さらにAi-Sで追加された焦点距離識別リッジレンズタイプ識別ノッチAFカップリングによるオートフォーカスなど複雑なメカニカル連動方式から、電子接点経由で通信するCPU内蔵方式へ変遷(進化?)したFマウント。

その主なレンズタイプと付加されている連動パーツは以下のとおりとなる。 


表1: 主なレンズタイプと連動パーツ (Fマウントレンズ分類も参照)
主なレンズタイプ 時期 絞りリング 絞り連動レバー 露出計連動爪 最小絞り設定警告用ガイド 露出計連動ガイド 開放F値連動ガイド 焦点距離識別リッジ レンズタイプ識別ノッチ AFカップリング CPU連動
Old Nikkor(非Ai) 59/06 × × × × × × ×
Ai 77/03 × × × ×
Ai-S 80/02 × ×
Ai AF S 86/04 ×
Ai AF D 92/09 ×
Ai AF-S 96/11 × ×
AF G 01/03 × × × × × ×
AF-S G 02/06 × × × × × × ×
PC-E 08/02 × × × × × × × ×
AF-S E 13/05 × × × × × × × × ×


表1に示す通り、「Ai AF S」と「Ai AF D」レンズが最も連動パーツが多い。

Ai-S」にAF機能とCPUを追加した「Ai AF S」レンズは、1986(昭和61)年4月に「Nikon F-501」(第2世代AF+CPU連動方式)と同時に発売されたものであり、1992(平成04)年9月から発売された「Ai AF D」は、「Ai AF S」に距離エンコーダーを内蔵したもので基本的な構造は変わっていない。

どちらも名称に「Ai」と付いている通り、共に「Aiタイプ(正確にはAi-S)」であり、露出計連動ガイド開放F値連動ガイド焦点距離識別リッジレンズタイプ識別ノッチなどが付加されて(残して?)いる。勿論これらはF-501より前の旧機種との互換性保持のために残されており、F-501以降の機種では内蔵CPU〜電子接点経由でこれらの情報が受け渡しされる。

4年後の1996(平成08)年11月から発売された「Ai AF-S」では超音波モーターが内蔵されてAFカップリングがなくなり、さらに2001(平成13)年3月から発売されたGタイプレンズは絞りリングが省略され、且つ「非Aiタイプ」なので、最小絞り設定警告用ガイド露出計連動ガイド焦点距離識別リッジレンズタイプ識別ノッチがなくなった。但し何故か開放F値連動ガイドだけは残されている。(Gタイプレンズ参照)

2013(平成25)年5月から発売されたEタイプレンズは、絞りリングのみならず、従来の絞り連動レバーをも廃止して電磁絞りを採用した新タイプのレンズ群となった。

※ Nikon F-501: Nikon F3AF以来の位相差検出方式のAF機。ボディ内モーター起動。全面的に電気信号による連動方式を採用(CPU連動方式の始まり)

 


図1: 主なレンズタイプと連動パーツの変遷

露出計連動爪 (1959年6月〜) (=カニ爪、カニの爪)
Ai方式 (1977年3月〜) (+ 露出計連動ガイド)/開放F値連動ガイド
Ai-S (1980年2月〜) (+ 焦点距離識別リッジレンズタイプ識別ノッチ
Ai AF S (1986年4月〜) (+ CPUAFカップリング、− 露出計連動爪
Ai AF D (1992年9月〜) (+ 距離エンコーダー)
Ai AF-S (1996年11月〜) (− AFカップリング + 超音波モーター
AF G (2001年3月〜) (− 絞りリング/焦点距離識別リッジレンズタイプ識別ノッチ
AF-S E (2013年5月〜) (− 絞りリング/絞り連動レバー = 完全電子マウント)

(+):追加されたパーツ  (−):削除されたパーツ


 


図2: レンズタイプの変遷と付加機能

連動爪方式 1959年6月〜 別名カニ爪(またはカニの爪)。ボディ側の露出計にレンズの絞り値を伝える
Ai方式 1977年3月〜 レンズの絞りリングの一部を切り欠き、間単にボディ側の露出計に絞り値を伝えられる方式
Ai-S方式 1980年2月〜 Ai方式の改良版。絞り優先AEやプログラムAEなどのj自動露出機能に対応。正確な絞りコントロールが可能
AF化+CPU内蔵 1986年4月〜 オートフォーカスレンズ。マウント部にAFカップリング追加と同時にCPUを内蔵した。
Dタイプレンズ 1992年9月〜 距離エンコーダーを内蔵し、撮影距離をボディ側に伝えられる。大部分がAFレンズである。
AF-S 1996年11月〜 超音波モーター内蔵レンズ。全てCPU内蔵、AFであり、Ai/非Ai、Dタイプである。
VR 2000年11月〜 手ぶれ補正レンズ
Gタイプレンズ 2001年3月〜 絞りリングを省略した新タイプのレンズ。古いフィルムカメラでは使えない機種もある。
DXタイプレンズ 2003年6月〜 APS-Cサイズフォーマット専用レンズ。全てCPU内蔵、AF、非Ai、Gタイプである。
Eタイプレンズ 2013年5月〜 絞り連動レバーを廃し、電磁駆動絞りを採用した新タイプのレンズ。
AF-P 2016年9月〜 STM(ステッピングモーター)内蔵レンズ。CPU内蔵、AFであり、非Ai、GタイプEタイプがある。



 

5.レンズ名の見方


 ニッコールレンズの名称は幾つかの識別子で構成されていて、これらの組み合わせで各レンズのおおよその仕様が分かる。比較的最近のレンズと初期のオールドニッコール(カニ爪付き)のレンズについて、識別子の意味を解説する。

尚、数年前から識別子の位置が変更されているので、比較的最近のレンズについては新旧の表記方法で解説する。



      5.1 レンズ名を構成するタイプ識別子(比較的最近のレンズ)
        5.1.1 レンズ名の解読例
        5.1.2 レンズ名の具体例
      5.2 レンズ名を構成するタイプ識別子(初期のカニ爪付きオールドニッコール/従来(非Ai)レンズ)
      5.3 その他の特殊レンズ
      5.4 レンズ名表記方法の変更
      5.5 レンズ名の先頭文字から、レンズタイプを特定する
      5.6 開放F値(Fナンバー:絞り値)の表記方法
      5.7 カメラ使用説明書の「使用できるレンズ」の見方

 

 5.1 レンズ名を構成するタイプ識別子(比較的最近のレンズ)

実際のレンズ例:
・ Ai AF Zoom Nikkor ED 18-35mm F3.5-4.5D(IF)
・ Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED
・ AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR II
・ AF-S NIKKOR 180-400mm f/4E TC1.4 FL ED VR
・ AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR

● 旧形式の表記方法
Ai AF DX VR Zoom NIKKOR ED 80-400mm F4-5.6 S (IF)
AF-I P
AF-S D
AF-P G
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
Ai方式 AFタイプ DXフォーマット 手ブレ補正 ズームレンズ EDガラス 焦点距離 開放F値 レンズタイプ インナーフォーカス


● 新形式の表記方法(詳しくはこちら
Ai AF DX Zoom− NIKKOR 80-400mm f/3.5-5.6 S TCX.X PF IF ED SR VR U
P
AF-S D
G FL
AF-P E
(1) (2) (3) (5) (7) (8) (9) (11) (12) (10) (6) (13) (4) (14)
Ai方式 AFタイプ DXフォーマット ズームレンズ 焦点距離 開放F値 レンズタイプ テレコン付 特殊レンズ インナーフォーカス EDガラス SRレンズ 手ブレ補正


● 識別子の説明
No. 識別子/意味 解説
(1) Ai Ai方式(露出計連動ガイド付き)のレンズ。同時に(9)に「S」か「P」か「D」が付いていれば改良後のAi-Sレンズ。(9)に「G」(=絞りリングなし)が付いていればAi方式のレンズではない。 先頭に”Ai”の文字があっても(9)に何も付いていなければ改良前の旧「Aiレンズ」である。尚、CPU内蔵か否かは「Ai」の文字だけでは判断できない。
(2) AF AF(オートフォーカス)レンズ(モーター非内蔵=ボディ内モーター駆動)
AF-I コアレスモータ内蔵オートフォーカスレンズ(AF-I
AF-S 超音波モーター内蔵オートフォーカスレンズ(AF-S)
AF-P ステッピングモーター内蔵オートフォーカスレンズ(AF-P)
(なし) (上記の「AF」「AF-I」「AF-S」「AF-P」のいずれの文字もなければ、マニュアルフォーカスレンズ)
(3) DX DX(APS-Cサイズ)フォーマット専用レンズ。この文字がなければFXフォーマットのレンズ
(4) VR 手ブレ補正内蔵レンズ。この文字がなければ手ブレ補正内蔵レンズではない
(5) Zoom ズームレンズであることを示す。この文字がなければ単焦点レンズ。但し新しいレンズでは”Zoom”文字が省略されているものもあるので、実際は(7)の焦点距離が1つか2つかで判別する。
(6) ED 特殊低分散ガラス使用のレンズ。色にじみ、コントラスト低下の原因となる色収差を補正する。
(7) 焦点距離 数字が2つの場合は、最広角側と最望遠側の焦点距離、数字が1つの場合は単焦点レンズ。
(8) 開放F値 絞り開放時のF値(レンズの明るさ)を示す。数字が2つの場合はズーミングで開放F値が変化するレンズ(通常左側の数値が広角端、右側の数値が望遠端の開放F値)。数字が1つなら全ズーミング領域で固定の開放F値となる。
(9) S (1)の 「Ai」 とセットでAi-Sタイプ(Ai方式の改良版)であることを示す。
P Ai-P(CPU内蔵のマニュアルフォーカス)レンズであることを示す。Ai-Sタイプでもあるが、Dタイプではない。
D Dタイプレンズ。被写体までの距離情報をカメラボディ側へ伝達することにより、より的確な露出制御や調光制御を実現。(1)に「Ai」が付いていればAi-Sタイプでもある。(例:Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D)
G Gタイプレンズ。レンズ本体に絞りリングを持たず、ボディ側から絞り制御を行う新しいレンズシリーズ。距離エンコーダーを内蔵したDタイプでもある。絞りリングがないので当然Aiレンズではない。
Eタイプレンズ絞り連動レバーを廃し、電磁駆動絞りを採用した新タイプのレンズ。
(10) IF インナーフォーカスレンズ。レンズ系を前・中間・後群に分割し、中間のレンズ群のみを移動させてピントを合わせる方式。フォーカシングによる収差変動を減少させ、またレンズ駆動時のトルクが軽く、フォーカス時の保持バランスに変化がない。また、AFレンズでは合焦スピードの高速化にも貢献している。(光学系の特性上、撮影距離が短くなるにしたがって焦点距離が短くなる。)
(11) TCX.X テレコンバーター内蔵レンズ。「X.X」部はテレコンの倍率を示す。
2018年3月9日発売の「AF-S NIKKOR 180-400mm f/4E TC1.4 FL ED VR」が最初。
(12) PF PF(Phase Fresnel:位相フレネル)レンズは、光の回折現象(屈折とは逆順に色分散が発生する特徴がある)を利用して色収差を補正するレンズ。PF素子と通常のガラスレンズを組み合わせることで、優れた色収差補正能力を実現。レンズの薄肉化や比重の小さい硝材の使用ができ、レンズの軽量化が可能になった。「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」等に採用。
FL 蛍石レンズ(Fluorite Lens)は赤外領域から紫外領域にわたって高い透過率を有し、特殊な異常部分分散性があり、可視光域で優れた色収差補正能力を持つ。焦点距離が長くなるほど難しくなる色収差補正が、蛍石レンズを使うことで2次スペクトルを徹底的に除去することが可能となり、極めて効果的に色収差を補正。「AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR」等に採用。
(13) SR SRレンズ(Short-wavelength Refractive)
青より短い波長の光を大きく屈折させる特性を持つ、ニコン独自開発の特殊高分散ガラスを使用したレンズ。補正が難しい短波長の光を制御することで、各波長の光をより高度に集光できるようにし、高精度な色収差補正が可能になる。
2020年2月発売予定の「AF-S NIKKOR 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR」に初搭載。
(14) II 製品名で表される仕様が同じ従来レンズがある場合、これと識別するために表記する。VRの性能向上(4段分の手ブレ軽減効果)や鏡枠沈胴方式採用など。
 

 5.1.1 レンズ名の解読例

Ai AF-S DX Zoom Nikkor 12-24mm f/3.5-4.5G FL ED VR(IF)  (実在しない仮想レンズ)
 
★ チェックポイント:
  ・ 先頭に「Ai」があるか
  ・ 「AF-S」や「AF-P」、「AF-I」、「AF」があるか
  ・ 「DX」があるか
  ・ f値の最後に「G」や「D」、「E」、「P」があるか
 
★ 解読:
  ・ 先頭が「Ai」で始まれば、Ai方式露出計連動ガイドが付いた絞りリングがあり、

  ・ 「AF-S」があれば、AF駆動用の超音波モーター(AF-S)を内蔵し、
  ・ 「AF-P」があれば、AF駆動用のステッピングモーター(AF-P)を内蔵し、
  ・ 「AF-I」があれば、AF駆動用のコアレスモーター(AF-I)を内蔵し、
  ・ 「AF」があれば、ボディ側AFカップリングで駆動するAFで、
    = レンズ内AFモーター(AF-S、AF-I、AF-P)を内蔵していない
    = AFモーター内蔵レンズ専用機(D3000シリーズ、D5000シリーズなど)ではAFが作動しない
  ・「AF」「AF-S」「AF-P」「AF-I」の何れもなければ、MF(マニュアルフォーカス)レンズ、

  ・ 「DX」文字があれば、DXフォーマット、なければFXフォーマットの、
  ・ 12mm〜24mmのズームレンズで、開放F値はF3.5〜4.5、

  ・ f値(f/3.5-4.5)の直後が
    「D」なら、Dタイプレンズ(撮影距離情報が伝達できる。絞りリングがある。1992年〜)、
    「G」なら、絞りリングのないGタイプレンズ
    「E」なら、絞り連動レバーのない電磁絞りのEタイプレンズ(絞りリングもない)で、
    「P」なら、Pタイプレンズ( Ai Nikkor 45mm F2.8P など。CPU連動方式のMFレンズ。1988年〜)、
    「S」なら、絞り制御の最適化を行なっているAi-Sタイプレンズ( Ai Nikkor 50mm f/1.4S など。1980年〜)、
    f値の直後に何もなく、且つ
      先頭に「Ai」があればSタイプ以前の旧Aiレンズ( Ai Nikkor 50mmF2 など。1977年〜)、
      先頭に「Ai」がなければカニの爪が付いた非AiのOld Nikkorレンズ( Nikkor-H Auto 50mm F2 など。1959年〜)、

  ・ 「FL」があれば、可視光域で優れた色収差補正能力を持つFL(蛍石レンズ)と、
  ・ 「ED」があれば、ED(特殊低分散ガラス)を採用し、
  ・ 「VR」があれば、手ブレ補正機能を内蔵(VR)し、
  ・ 「IF」があれば、一部のレンズ群を動かしてピントを合わせるインナーフォーカスレンズ(IF)で、
  ・ CPUを内蔵(「AF」「AF-S」「AF-P」「AF-I」や「DX」、f値の直後が「D」「G」「E」「P」)した

 レンズである。
 

 5.1.2 レンズ名の具体例

(1) Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED
Ai方式露出計連動ガイドが付いた絞りリングがあり、
・ ボディ内モーター駆動のAFで、(レンズ内にはAFモーター非搭載)
・ 手ブレ補正機構(VR)を搭載し、
・ 広角端80mm、望遠端400mmのズームレンズで、開放F値は広角端F4.5、望遠端F5.6、
・ 撮影距離情報を伝えられるDタイプレンズで、(なのでAi-Sタイプ
・ ED(特殊低分散)ガラスを採用した
FXフォーマット
レンズである。
 
(2) AI AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED
Ai方式露出計連動ガイドが付いた絞りリングがあり、
・ レンズ内に超音波モーター(AF-S)を内蔵し、
・ 広角端17mm、望遠端35mmのズームレンズで、開放F値は全ズーム域でF2.8固定、
・ 撮影距離情報を伝えられるDタイプレンズで、(なのでAi-Sタイプ
・ 一部のレンズ群を動かしてピントを合わせるインナーフォーカスレンズで、
・ ED(特殊低分散ガラス)を採用した、
FXフォーマット
レンズである。
 
(3) AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR
・ レンズ内に超音波モーター(AF-S)を内蔵し、
・ 広角端24mm、望遠端85mmのズームレンズで、開放F値は広角端F3.5、望遠端F4.5、
・ 絞りリングがないGタイプレンズで、
・ ED(特殊低分散ガラス)を採用し、
・ 手ブレ補正機構(VR)を搭載した、
FXフォーマット
レンズである。
 
(4) AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
・ レンズ内に超音波モーター(AF-S)を内蔵し、
・ 広角端70mm、望遠端200mmのズームレンズで、開放F値は全ズーム域でF2.8固定、
・ 電磁絞りを採用したEタイプレンズで(絞りリングがないGタイプでもある)、
・ FL(蛍石レンズ)と、
・ ED(特殊低分散ガラス)を採用し、
・ 手ブレ補正機構(VR)を搭載した、
FXフォーマット
レンズである。
 
(5) AF-S DX NIKKOR 18-105mm f/3.5-5.6G ED VR
・ レンズ内に超音波モーター(AF-S)を内蔵し、
DX(APS-Cサイズ)フォーマット専用レンズで、
・ 広角端18mm、望遠端105mmのズームレンズで、開放F値は広角端F3.5、望遠端F5.6、
・ 絞りリングがないGタイプレンズで、
・ ED(特殊低分散ガラス)を採用し、
・ 手ブレ補正機構(VR)を搭載した
レンズである。
 
(6) Ai Nikkor 50mm f/1.4S
Ai方式露出計連動ガイドが付いた絞りリングがあり、
・ 焦点距離50mmの単焦点、開放F値はF1.4、
・ F値の後に”S"があるので、Ai-Sタイプ
・ ”AF”という文字がないので、MF(マニュアルフォーカス)且つCPUを搭載していない
レンズである。
 

※ 《 「NIKKOR」ブランドの由来 》

1932年、ニコンでレンズ設計が始まった1920年代当時の社名である「日本光学工業株式会社」の略称「日光」の英語表記「NIKKO」に、写真レンズの名称に良く使われていた「R」をつけ、「NIKKOR」というブランドが誕生したのが始まり。(メーカーサイトより)

 

 5.2 レンズ名を構成するタイプ識別子(初期のカニ爪付きオールドニッコール/従来(非Ai)レンズ)

実際のレンズ例:
・ NIKKOR-S Auto 5cm F2
・ Nikkor-N・C Auto 35mm F1.4
・ Zoom Nikkor Auto 43-86mm F3.5(C)
・ New Zoom Nikkor 43-86mm F3.5
・ Nikkor-P Auto 180mm F2.8C

● 旧形式の表記方法

New Zoom NIKKOR - S C Auto 43-86mm F4
(C)
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)
改良版 ズームレンズ レンズ構成枚数(7枚) 多層膜コーティング 自動絞り 焦点距離 開放F値 多層膜コーティング


● 識別子の説明
No. 識別子/意味 解説
(1) New 従来の同タイプのレンズの改良版(レンズ構成など)。レンズ名の最後に”New”が付くものもある。
(2) Zoom ズームレンズであることを示す。この文字がなければ単焦点レンズ
(3) レンズ構成枚数 1〜2文字でレンズ構成枚数を表す。 T:3 Q:4 P:5 H:6 S:7 O:8 N:9 D:10 UD:11 BD:12 TD:13 QD:14 PD:15
(4) C 多層膜コーティングされているレンズであることを示す文字。レンズによっては(8)の位置にあるものもある。
(5) Auto 自動絞りであることを示す。通常時は絞り開放、撮影時に自動で絞り込まれ、撮影完了時に開放絞りに戻る。
(6) 焦点距離 数字が2つの場合は、最広角側と最望遠側の焦点距離、数字が1つの場合は単焦点レンズ。
(7) 開放F値 絞り開放時のF値(レンズの明るさ)を示す。数字が2つの場合は、ズーミングで開放F値が変化するレンズ。
(8) (C) 多層膜コーティングされているレンズであることを示す文字。レンズによっては(4)の位置にあるものもある。


 

 5.3 その他の特殊レンズ

Ai Noct Nikkor 58mm F1.2S ノクトニッコール 開放絞りでの夜間撮影を目的につくられた超大口径のレンズ。(ニッコール千夜一夜物語
Micro NIKKOR 5.5cm F3.5 マイクロ(マクロ)レンズ 等倍撮影が可能。他社では「マクロレンズ」、ニコンでは「マイクロレンズ」と呼称
Reflex NIKKOR 500mm F8 反射式レンズ 反射鏡を含む光学系。主に超望遠レンズで色収差が極めて少ない。
Fisheye Nikkor 8mm F8 魚眼レンズ 全周或いは対角線画角180度の撮影が可能
OP Fisheye Nikkor 10mm F5.6 正射影魚眼レンズ 正射影(Orthographic Projection)方式の魚眼レンズ
PC Nikkor 35mm F3.5 シフトレンズ パースペクティブ(遠近感)コントロール。アオリ機構(シフト&ティルト)
PC-E NIKKOR 24mm f3.5D ED 電磁絞り付きのシフトレンズ Eタイプレンズ絞り連動レバーを廃し、電磁駆動絞りを採用した新タイプのレンズ。
Ai AF DC-Nikkor 105mm f/2D
Ai AF
DC-Nikkor 135mm f/2D
DC(被写体ボケコントロール)レンズ 【 DC:Defocus-image Control 】DCリングの操作で、レンズの一部を前後に動かすことにより、被写体の前後のボケ像の形状をコントロールできる。
Medical Nikkor Auto 200mm F5.6 医療用レンズ レンズ先端に円周スピードライトを内蔵した医療用撮影レンズ。
GN Auto Nikkor 45mm F2.8 GN(ジーエヌ)ニッコール GN:ガイドナンバー。絞りを距離リングの回転と連動させ、スピードライト撮影時の適正絞り値を自動決定。


 

 5.4 レンズ名表記方法の変更


   数年前(多分2003年下半期)からレンズ名表記方法が変更されている。但し、現状では新旧のレンズ表記が混在している。

● 新レンズは”Nikkor”が大文字の”NIKKOR”に変更。但しAiニッコールや、”Micro-Nikkor”、”Zoom-Nikkor”、”Fisheye-Nikkor”は小文字のまま。

● ズームレンズであっても、”Zoom”の文字が省略されている。(省略されていないレンズもある)
例) ・ AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR 
・ AF-S DX Zoom-Nikkor 12-24mm f/4G IF-ED


● 開放F値表記が大文字の”F"から小文字の”f”に変更

新表記   旧表記
Ai AF NIKKOR 50mm f/1.8D     ←    Ai AF Nikkor 50mm F1.8D


● ”ED”や”VR”文字が最後に付く

新表記   旧表記
Ai AF Nikkor 14mm f/2.8D ED     ←    Ai AF Nikkor ED 14mm F2.8D
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED VR    


● インナーフォーカスを示す”IF”が、”(IF)”から”IF ”に変更。”IF”と”ED”両表記時は”IF-ED”

新表記   旧表記
Ai AF Zoom-Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF     ←    Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm F2.8-4D(IF)
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED     ←    AF-S VR Micro Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)


● 製品名で表わされる仕様が同じ従来モデルのレンズがある場合、これと識別するためにレンズ名最後に”II”を付けた。

    例) AF-S DX Nikkor 18-200mm F3.5-5.6G ED VR II


●  ”Micro Nikkor” が ”Micro-Nikkor”に、”Fisheye Nikkor” が ”Fisheye-Nikkor”に、”Zoom Nikkor” が ”Zoom-Nikkor”に変更された。

新表記   旧表記
Ai AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-ED     ←    Ai AF Micro Nikkor ED 200mm F4D(IF)
AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED     ←    AF DX Fisheye Nikkor ED 10.5mm F2.8G
AF-S DX Zoom-Nikkor 17-55mm f/2.8G IF-ED     ←    AF-S DX Zoom Nikkor ED 17-55mm F2.8G(IF)
しかし、何故か ”PC-E Micro NIKKOR”や、”AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED”はそのまま。

 

 5.5 レンズ名の先頭文字から、レンズタイプを特定する

レンズ名の先頭文字 レンズタイプ レンズ例 備考
(1) AF-S DX AF-S G(DX) AF-S DX Zoom-Nikkor 12-24mm f/4G IF-ED (03/06) F値の後に”G"がある。
CPU内蔵Gタイプの超音波モーター内蔵DXレンズ
(2) AF-S E(DX) AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR (15/07) F値の後に”E"がある。
CPU内蔵Eタイプの超音波モーター内蔵DXレンズ
(3) AF-S AF-S G AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF) (02/06) F値の後に”G"がある。
CPU内蔵Gタイプの超音波モーター内蔵FXレンズ
(4) AF-S E(FX) AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR (16/01) F値の後に”E"がある。
CPU内蔵Eタイプの超音波モーター内蔵FXレンズ
(5) AF-P DX AF-P G(DX) AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR (16/09) CPU内蔵ステッピングモーター内蔵DXレンズ。
(6) AF-P AF-P E(FX) AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR (17/07) CPU内蔵ステッピングモーター内蔵FXレンズ。Eタイプ
(7) AF DX AF G (DX) AF DX フィッシュアイ Nikkor ED 10.5mm F2.8G のみ (03/11) CPU内蔵Gタイプのモーター非内蔵DXレンズ
(8) AF AF G AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G (01/03) CPU内蔵Gタイプのモーター非内蔵FXレンズ
(9) Ai AF-S Ai AF-S Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) (96/11) CPU内蔵Dタイプの超音波モーター内蔵FXレンズ
(10) Ai AF-I Ai AF-I Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) (92/09) CPU内蔵Dタイプのコアレスモーター内蔵FXレンズ
(11) Ai AF Ai AF D Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D (91/09) CPU内蔵DタイプAi-Sタイプのモーター非内蔵FXレンズ
Ai AF S Ai AF Nikkor 50mm F1.8S (86/04) CPU内蔵Ai-Sタイプのモーター非内蔵FXレンズ
(12)  Ai Ai-S Ai Nikkor 50mm f/1.4S (81/09) F値の後に”S"がある。
非CPUの純正Ai-Sタイプレンズ。MF(マニュアルフォーカスレンズ)。
Ai Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8S (82/11)
Ai Micro Nikkor 105mm F4S (81/10)
Ai UV Nikkor 105mm F4.5S (85/09) 紫外線領域の撮影用特殊レンズ。F値の後に”S"がある。
非CPUの純正Ai-Sタイプレンズ。MF。
(13) Ai Nikkor Ai Nikkor 50mm F1.4 (77/3) F値の後に”S"がない。
非CPUの純正AiレンズAi-Sタイプではない)。MF。
Ai Zoom Nikkor 80-200mm F4.5 (77/3)
Ai Micro Nikkor 105mm F4 (77/5)
(14) その他 Ai Fisheye Nikkor 8mm F2.8 (77/6) 魚眼レンズ。F値の後に”S"がない。
非CPUの純正AiレンズAi-Sタイプではない)。MF。
Ai Noct Nikkor 58mm F1.2 (77/3) 開放絞りでの夜間撮影用の大口径レンズ。F値の後に”S"がない。
非CPUの純正AiレンズAi-Sタイプではない)。MF。
(15) PC-E PC-E PC-E 24mm F3.5D (08/2) CPU内蔵PC-Eタイプ(アオリ、レボルビング)。全てMF。
(16) PC PC (E) PC NIKKOR 19mm f/4E ED (16/10) F値の後に”E"がある。
CPU内蔵EタイプのPC(パースペクティブコントロール)レンズ(アオリ、レボルビング)。全てMF。
(17) PC (D) PC Micro Nikkor 85mm F2.8D (99/9) F値の後に”D”がある。
CPU内蔵DタイプのPC(パースペクティブコントロール)レンズ。全レンズMF。
(18) Old Nikkor PC Nikkor 35mm F2.8 (68/5) F値の後に何もない。非CPU非Aiの旧PC(パースペクティブコントロール)レンズ。MF。
(19) Nikkor
New Nikkor
Old Nikkor NIKKOR-S Auto 50mm F1.4 (62/3) F値の後に何もない。

最初期の非Aiカニ爪レンズ(オールドニッコール/従来レンズ)
Nikkor Auto 35mm F2(C) (73/9)
New Nikkor 50mm F1.4 (74/11)
(20) Zoom Nikkor
New Zoom Nikkor
Old Nikkor Zoom NIKKOR Auto 43-86mm F3.5 (63/01)
New Zoom Nikkor 80-200mm F4.5 (75/06)
(21) その他 Old Nikkor Micro NIKKOR Auto 55mm F3.5 (63/03)
New Micro Nikkor 55mm F3.5 (75/05)
Fisheye Nikkor Auto 6mm F2.8 (72/01)
Reflex Nikkor 1000mm F11(C) (74/04)
Medical Nikkor Auto 200mm F5.6 (62/12)
GN Auto Nikkor 45mm F2.8 (69/03)
(22) Series E Nikon Lens Series E 35mm F2.5 (80/03) 「Nikon EM」に合わせて発売された普及型のレンズシリーズ。Ai-Sタイプ、カニ爪は省略。非CPU、MFレンズ。

これらのレンズの内、Ai化されていないOld Nikkor(18〜21)は、デジタル一眼レフへ物理的に装着できないなど多くの制限がある。
さらに、CPUを内蔵していないレンズ(12、13、14、18〜22)は、露出計と連動しないなど、機能面で多くの制限がある。

 


 5.6 開放F値(Fナンバー:絞り値)の表記方法

レンズの明るさを示す開放F値(Fナンバー:絞り値)の表記方法は何種類か存在する。

例) AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
Ai Micro Nikkor 105mm F2.8S
AF-S MICRO NIKKOR 105mm 1:2.8G IF-ED

レンズの明るさを示す指標としては「口径比」が使われる。例として挙げた上記レンズ(共に有効口径37.5mm、焦点距離105mm)の場合は、

口径比 = 有効口径(D) ÷ レンズの焦点距離(f) =  D f
口径比 = 37.5÷105 = 0.3571428571428571 = 1 2.8


ほとんどの場合、口径比は小数点数や分数となって扱いづらいので、口径比の逆数であるF値を使うこともある。

F値(Fナンバー) = レンズの焦点距離(f) ÷ 有効口径(D) =  f D
F値 = 105 ÷ 37.5 = F2.8


以上を踏まえて、開放F値(Fナンバー:絞り値)の表記方法は以下の3種類が使われている。

 表記方法  解説
F2.8 旧表記。口径比の逆数 (例: Ai Micro Nikkor 105mmF2.8S)
f/2.8 最近の新表記。 f(焦点距離)/2.8 = 105÷2.8 = 37.5mm。即ち、有効口径を示す表記方法である。
   (例: AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED)
1:2.8 最近のレンズ鏡胴面の表記方法。
有効口径(37.5mm)と焦点距離(105mm)の比を示す。 37.5:105 = 1:2.8
つまり焦点距離(105mm)が有効口径(37.5mm)の何倍あるかを示している。(この例では2.8倍)

以下は、「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」のレンズ鏡胴面の表記。




"AF-S MICRO NIKKOR 105mm 1:2.8G IF-ED"
"VR"
ちなみに、このレンズ表記"AF-S MICRO NIKKOR 105mm 1:2.8G IF-ED"
でネット検索しても、本来の正式名称である「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」が検索される。

 


 5.7 カメラ使用説明書の「使用できるレンズ」の見方


   以下に使用説明書の一例として、D5500の「活用ガイド(使用説明書)」にある「使用できるレンズ」の記述について説明する。

D5500 「使用できるレンズ」
●左の表にある「使用できるレンズ」は、全てCPU内蔵のレンズである。
AF-Sレンズ:超音波モーター内蔵レンズ
AF-Pレンズ:STM(ステッピングモーター = パルスモーター)内蔵レンズ
AF-Iレンズ:コアレスモーターを内蔵したレンズ

D5500はAFモーター内蔵レンズ専用機なので、AF撮影には上記レンズが必須である。レンズ名に"AF-S"、"AF-P"、"AF-I"が含まれないレンズではAF撮影ができず、MF(マニュアルフォーカス)となる。
Gタイプレンズ:レンズ本体に絞り環を持たないレンズ。
Dタイプレンズ撮影距離情報をカメラに伝達する機能を持つレンズ。
PC-E NIKKORシリーズ:アオリ機構、レボルビング機構を備えたレンズで、電磁駆動絞りCPU内蔵Dタイプ、全てMFレンズ。
PCマイクロ85mm F2.8D:アオリ機構、レボルビング機構を備えたマクロ撮影可能な中望遠のマイクロレンズ。CPU内蔵Dタイプ、非AiのMFレンズ。
AF-S/AF-Iテレコンバーター:AF-S/AF-I専用のテレコンバーター
GタイプEタイプDタイプ以外のAFレンズ(F3AF用レンズを除く):
昭和61(1986)年4月発売のAF機「Nikon F-501」と同時期から、91年のDタイプレンズ発表までに発売された比較的初期のAFレンズ群。
例)Ai AF Nikkor 50mm F1.4S (86/7月)
Ai-PニッコールCPU搭載のMFレンズ(Aiタイプ)であり、発売されたのは3本のみ。
 
非CPUレンズ:CPUを搭載していないレンズ群。カメラに装着出来なかったり露出計が動かないなど、多くの制限がある。
ただ、この「非CPUレンズ」とあるのは正確な表現ではなく、カニ爪付きのニッコールレンズも「非CPUレンズ(且つ非Ai)」であるが、「Nikon Df」を除くデジタル一眼レフカメラでは使えない。なので正確には「非CPUのAiレンズ」、つまり最低限Aiタイプでなければならない。。
実際、この使用説明書の次のページに「使用できない非CPUレンズ」として、「Ai改造をしていないレンズ(Ai方式以前の連動爪を使用するタイプ)」とある。
Ai-S、Ai、シリーズEレンズ、Ai改造レンズ:
AiAi-Sは、レンズ絞りリングに露出計連動ガイドを取り付けた非CPUのレンズ群。非CPUであってもAi化されていればカメラへの装着は可能であるが、D5500などカメラ機種によっては露出計が作動しない。Aiに対応したカメラ(露出計連動レバーを持つ機種)でのみ露出計が作動する。

改造Aiレンズとは、カニ爪の付いた最初期のレンズの絞りリングをAi用の露出計連動ガイド付きに交換したもの。

シリーズEレンズは、昭和54(1979)年の「Nikon EM」に合わせて発売された普及型のレンズシリーズで、Aiタイプでもある。
メディカル120mmf/4:レンズ鏡胴先端にリング型スピードライトを取り付けた医療関係での使用を想定した特殊レンズ。
レフレックスレンズ:反射式の光学系を採用した望遠レンズ群。通常の屈折式望遠レンズに比べ大幅なコンパクト化が可能。
PCニッコール:アオリ機構、レボルビング機構を備えたPC(パースペクティブコントロール)レンズ。PC Micro Nikkor 85mm F2.8D(99/9月)など。
Ai-S、Aiテレコンバーター:Ai(Ai-S)用テレコンバーター。TC-300、TC-14ASなど。
ベローズアタッチメントPB-6:蛇腹状の接写用装置。PB-6はボディとの接続部に「縦横切り替え機能」がある。
オート接写リング:Aiタイプのレンズ用接写リング。PK-13など。

尚、D5500のカタログやメーカーサイト内D5500の「主な仕様」の中では、以下の様に簡略化されて記述されている。

交換レンズ
・オートフォーカス可能レンズ:AF-SAF-PAF-Iレンズ
・オートフォーカス不可レンズ:AF-SAF-PAF-I以外のGタイプまたはDタイプレンズ、GタイプまたはDタイプ以外のAFレンズ(IX用レンズ、F3AF用レンズは使用不可)、Pタイプレンズ非CPUレンズ(撮影モードM(マニュアル)で使用可能、ただしカメラで測光は不可)
※開放F値がf/5.6以上明るいレンズでフォーカスエイド可能




 

6.レンズのシリアルNo.から、そのタイプも分かるサイト

Nikon Lens Versions and Serial Nos

 こちらのサイトでは、レンズ名、タイプ(Ai、Ai-S、AF、AF-Sなど)、製造国、シリアルNo.、特徴(ノート)を調べることができる。





関連用語解説




AFレンズ
Dタイプレンズ
Gタイプレンズ
Eタイプレンズ
DXレンズ(DXフォーマット)
FXレンズ(FXフォーマット)
シリーズEレンズ
F3AF用レンズ
Ai-Pレンズ
AF-I (コアレスモーター内蔵レンズ)
AF-S (超音波モーター内蔵レンズ)
AF-P (ステッピングモーター内蔵レンズ)
   ● AF-Pレンズが使用可能なカメラ(発売年順)
   ● AF-P駆動に関するモジュール(ファームウェア)のイメージ
VR (手ブレ補正内蔵レンズ)
電磁絞りPC-EレンズEタイプレンズ
    ● PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラ(機種別)
    ● PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラ(発売年順)
    ● 電磁絞り(Eタイプ)コントロールモジュール(ファームウェア)のイメージ


●AFレンズ
  ● ニコンのAF一眼レフは 昭和58(1983)年4月発売の 「Nikon F3AF」から始まった(第一世代AF)。F3ボディに信号・電源供給用接点(6点)を追加し、同時発売の以下の2本の専用レンズを装着すればオートフォーカスが可能となった。  ( 参考: F3AF用レンズ

  「 AI AF Nikkor 80mm F2.8S 」 (標準装備)
  「 AI AF Nikkor ED200mm F3.5S(IF) 」

    但し、これらのレンズは信号接点があるが、 CPUレンズではなく、Nikon F3AF、F-501、F4でのみAF使用可能。(他機種ではMFレンズとして使用可)


● 第二世代のAFとして、昭和61(1986)年4月にボディ内にAFモーターを内蔵した 「F-501」が発売され、同時に CPU内蔵、モーター非内蔵(AFカップリング付き)のAFレンズ群がリリースされた。 F-501はカメラボディとレンズ間の情報伝達を電気信号で行なう CPU内蔵方式の最初の機種でもあり、以降の一眼レフカメラは全てCPUを内蔵している。ボディ側、レンズ側共にAFカップリングがなければAFは作動しない。

● 第三世代のAFとして、平成8(1996)年11月にAF-S(超音波モーター内蔵)レンズが発売された。AF-S対応ボディでなければAFは作動せず、逆にD40などモーター内蔵レンズ専用機では第二世代(=モーター非内蔵。AFカップリング付き)のAFレンズはAFが作動しない。


・AFレンズは全てレンズ名に”AF”を含む。

・AFレンズは全てCPUタイプ(但しF3AF用レンズは除く)であり、Ai-S/非Ai、 モーター内蔵(AF-S)/非内蔵、 絞りリングのないGタイプ、 距離エンコーダを内蔵したDタイプ/非Dタイプ/EタイプDXレンズFXレンズ など様々なタイプが発売されている。

・基本的には、AFレンズは全てのデジタル一眼レフで使用可能である。
  但し、D40などAFカップリングが省略されているカメラではモーター内蔵レンズ(AF-SAF-I)でのみAFが可能。
  また、AF-P (ステッピングモーター内蔵レンズ)や、PC-EレンズEタイプレンズは、古いデジタル一眼レフでは動作しない機種がある。


その後のAFレンズ商品展開は以下の通り。

● AFレンズ商品展開 (Fマウントレンズ分類も参照)

レンズタイプ 発売 概要 レンズ例
 (1) Ai AF S  86/04 CPU連動方式採用。F-501発売と同時発表。  Ai AF Nikkor 50mm F1.8S
 (2) Ai AF D  92/09 撮影距離情報を伝達する距離エンコーダー内蔵。(→Dタイプ Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D
 (3) Ai AF-I  92/09 Ai AF Dタイプに加えて、レンズ内にコアレスモーター内蔵。(→AF-I Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) (他全4本)
 (4) Ai AF-S  96/11 Ai AF Dタイプに加えて、レンズ内に超音波モーター内蔵。(→AF-S Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)
 (5) Ai AF D(VR)  00/11 Ai AF Dタイプに加えて、手ブレ補正内蔵。(VRのDタイプは1本のみ) Ai AF VR Zoom Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D のみ
 (6) AF G  01/03 レンズに絞り環を持たずボディから絞り制御を行うタイプ。(→Gタイプ AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G
 (7) AF-S G  02/06 超音波モーター内蔵のGタイプ。(→AF-S AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF)
 (8) AF-S G (VR)  03/03 超音波モーターと手ブレ補正(VR)内蔵のGタイプ。 AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)
 (9) AF-S G (DX)  03/06 DXサイズ判の超音波モーター(AF-S)内蔵のGタイプ。 AF-S DX Zoom Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)
 (10) AF-S G (DX/VR)  05/12 超音波モーター(AF-S)と手ブレ補正(VR)内蔵のDXサイズ判のGタイプ。 AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G(IF)
 (11) AF-S E (VR)  13/05 電磁駆動絞り+AF-S+ 手ブレ補正(VR)内蔵のGタイプ 。 (→Eタイプ AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR
 (12) AF-P G (DX)  16/09 DXサイズ判のAF-P (ステッピングモーター内蔵)レンズ。Gタイプでもある。 AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR
 (13) AF-P E (FX) 17/07 FXサイズ判のAF-P (ステッピングモーター内蔵)レンズ。Eタイプでもある。 AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR

 
●Dタイプレンズ
  [ D:Distance(距離) ]

レンズの距離リングに連動するエンコーダーを内蔵し、撮影時にピント合わせ(AF/MF)をすると被写体までの距離情報がカメラボディ側へ伝達され、より的確な露出制御や調光制御を実現する。距離信号を持つレンズの内、レンズ本体に絞り環を有するものを「Dタイプ」と呼称する。92/09月にF90と同時発売された。(Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D など、レンズ名のf値の後に「D」が付く)

  → ●マルチパターン測光


また、カメラ内蔵スピードライト及び別売りスピードライトとの組み合わせにより

   ・D-3D-マルチBL調光 ( D2 シリーズ・ D1 シリーズ・ D100 )
   ・3D-マルチBL調光 ( F6 ・ F5 ・ F100 ・ F80 シリーズなど )
   ・i-TTL-BL調光 ( F6 ・ 平成15(2003)年10月発売のD2H以降の全デジタル一眼レフ)

の先進機能を可能にする。

・92/09月以降に発売されたレンズは全て距離エンコーダーを内蔵している。
・Dタイプレンズは、全てCPU内蔵Ai-Sタイプである。(※一部例外あり。モーター内蔵/非内蔵、AF/MFの両タイプがある)
・後に発売されるGタイプレンズEタイプレンズなどにも、全て距離エンコーダーを内蔵している。

※一部例外: 2008年2月から発売開始された「PC-E」レンズシリーズ(電磁絞り採用)は、DタイプではあるがAiレンズではない。 (距離エンコーダー内蔵だが、レンズ絞りがマウント側ではなく鏡胴中央部にある)

 
●Gタイプレンズ
  レンズ本体に絞り環を持たず、ボディ側から絞り制御を行う新しいレンズシリーズ。 (G:「Genesis(創生・起原・発生) 」の略)

レンズ本体のコンパクト化が可能となり、さらに最小絞りにセットして撮影する必要がなく操作性が向上。また、Dタイプレンズと同様に被写体までの距離情報をカメラ側に伝達する機能も持ち、より的確な露出制御や調光制御を実現する。(レンズ名のf値の後に「G」が付く)

2001年3月に以下の2本が最初に発売された。(Nikon Uと同時発売)

 ・ AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G
 ・ AF Zoom Nikkor 70-300mm F4-5.6G

これらのレンズは廉価版の部類に属し、絞り環や非Aiタイプであることによるメカ的連動機構の省略によるコストダウンによるものと思われた。(その代償としてボディから絞りをコントロールできない古いカメラでは使えなくなった)

 ( Gタイプレンズの使える機種はこちら )

しかしその後のレンズ商品展開を見るとGタイプの高級レンズがリリースされていることから、 メーカーとしてはAF-S(超音波モーター内蔵)とセットで最終的には完全電子マウントを目指しているものと思われる。

・Gタイプレンズは全てCPU内蔵、AF、距離エンコーダー内蔵(Dタイプ)、非Aiタイプである。(モーター内蔵/非内蔵の両タイプがある)

・Gタイプレンズは非Aiタイプなので、 (d)露出計連動ガイド(j)焦点距離識別リッジ(g)レンズタイプ識別ノッチはないが、何故か(e)開放F値連動ガイドだけはある。 非Aiタイプではあるが、当然ながらレンズ側絞りの動きはリニア化されている。

CPU連動方式以外のカメラでは、開放F値、最小絞り値をカメラボディ側に伝える手段がなく、絞りリングもない為、装着はできても使えない。

CPU連動方式のカメラでも、Gレンズが使えない機種やA(絞り優先モード)・M(マニュアル露出)モードが使えない機種がある。

 ( Gタイプレンズの使える機種はこちら )


・絞りリングがなく常に最小絞り状態(カメラ装着時には開放絞り状態)であるので、 そのレンズの開放F値を元に(d)露出計連動ガイドに相当する突起を付けて擬似Aiレンズ化すれば、非CPU、Ai機の「Nikon FA」などでも使える可能性がある。(当然、レンズ側で絞り値を変えることはできないが。。)

 
●DXレンズ(DXフォーマット)
  ニコンデジタル一眼レフのAPS-Cサイズフォーマット専用レンズ。以前は「デジタル専用レンズ」と呼ばれていたが、FXレンズ(FXフォーマット)との区別化のために最近は「DXフォーマット用レンズ」と呼ばれる。(レンズ名に”DX”を含む)

135mm判(FX)レンズよりもイメージサークルを小さくし、光学性能をニコンデジタル一眼レフカメラ に最適化した。同じ焦点距離の135判(FX)レンズよりも軽量かつコンパクトにすることで操作性が向上。フィルム一眼レフカメラに装着はできるが撮影は不可。


DX/FXフォーマットの画角と撮影画面サイズ
(メーカーサイトより)

・DXレンズは全てCPU内蔵、AF、非Ai、Gタイプである。
・モーター非内蔵の「AF DX フィッシュアイ Nikkor ED 10.5mm F2.8G」以外は全てAF-Sタイプ(超音波モーター内蔵レンズ)である。
・DXレンズをフルサイズ(FXフォーマット)判のボディ(D3、D3S、D3X、D700など)に装着すれば、DXフォーマットサイズで撮影も可能(クロップ撮影)。

・DXフォーマット画像サイズの代表例: 23.7×15.7mm。 対角線長28.42mm、135判対角線(43.27mm)比1.5倍。
実際には機種によって若干の相違がある。

 イメージセンササイズ  搭載カメラの例(一部)
23.1×15.4mm  D3100 
23.3×15.5mm  D2H、D2Hs 
23.6×15.6mm  D7000、D5100 
23.6×15.8mm  D40x、D60、D80、D90、D200、D300、D300S、D5000、D3000 
23.7×15.6mm  D1、D1X、D1H、D100、D70、D70s、D40、D50 
23.7×15.7mm  D2X、D2Xs 

 
●FXレンズ(FXフォーマット)
  APS-C判カメラ専用のDXレンズに対し、フルサイズカメラ(デジタル)で使える大きさのイメージサークルを持つレンズ群。

FXフォーマットとは、35mm判(135フォーマット判)フィルム相当の大きさを持つイメージセンサーの呼び名であり、「フルサイズ」とも呼ばれている。 大きさは36.0×23.9mm、または35.9×24.0mmなど様々であり、DXフォーマットの2.3倍の面積を持ち、 同等の画素数を持つDXフォーマットに比べて1ピクセル当たりの画素サイズも大きくできる。 例えば、D3(画素数12.1メガピクセル)の1画素のサイズは8.45×8.45μmであり、 D300(画素数12.3メガピクセル)の1画素のサイズである5.49×5.49μmの約2.4倍(面積比)に当たる。 画素を大きくすることによってフォトダイオードに取り込む光の量が多くなることで低照度環境においても高いノイズ耐性が得られ、結果として高いISO感度を実現できた。

・APS-C判カメラにFXレンズを装着すると、レンズ表記の約1.5倍の焦点距離に相当する画角となる。

・レンズ名に”DX”を含まないレンズは全てFXレンズである。但し、広義では「Nikon F」当時のオートニッコールなど古いレンズも35mm判ではあるが、FXレンズとは呼ばれない。

 
●シリーズE(Series E)レンズ
昭和54(1979)年3月、海外で先行発売された「Nikon EM」に合わせて発売された普及型の新たなレンズシリーズ「Nikon レンズ シリーズE」。

分類上はAi-Sタイプであるが、露出計連動爪、所謂カニ爪は省かれている。当然CPUは非搭載(非CPU)でMFレンズである。

昭和56(1981)年5月発売の「シリーズ E<New>」タイプは外観を一新し、「Ai Nikkor」レンズに揃えた。

  Nikon Lens Series E 名称 構成 発売日
 (1)   28mm F2.8  5群5枚  79/11(日本未発売)
 (2)   35mm F2.5  5群5枚、63.0×44mm、160g  80/03
 (3)   50mm F1.8  5群6枚、62.5×33mm、135g  79/12(日本未発売)
 (4)   100mm F2.8  4群4枚、63.0×58mm、220g  80/03
 (5)   135mm F2.8  4群4枚  81/03(日本未発売)
 (6)   Zoom 36-72mm F3.5    81/10
 (7)   Zoom 75-150mm F3.5    80/05
 (8)   Zoom 70-210mm F4    82/03
 (9)   28mm F2.8<New>  5群5枚  81/05
 (10)   35mm F2.5<New>  5群5枚  81/05
 (11)   100mm F2.8<New>    81/05
 (12)   Zoom 75-150mm F3.5<New>    81/05

 
●F3AF用レンズ
昭和58(1983)年4月発売の 「 Nikon F3AF 」は、ニコンの第一世代AF一眼レフであり、F3ボディを基本にAFファインダー(DX-1AF)と駆動モーターを組み込んだAFレンズによるAFを実現した。

Nikon F3AF


AFファインダー(DX-1AF)とAFレンズとの間で信号授受と電源の供給をボディを経由して行なうために、F3ボディに信号・電源供給用接点(6点)を追加し、同時発売の以下の2本の専用レンズを装着すればオートフォーカスが可能となった。(AFファインダー内にAFレンズへの電力供給用単4電池2本内蔵)

  「 AI AF Nikkor 80mm F2.8S 」 (標準装備)
  「 AI AF Nikkor ED200mm F3.5S(IF) 」

    ・ これらのレンズはDCコアレスマイクロモーター駆動ユニット内蔵、信号接点6点、A-M切り替えスイッチ露出計連動爪付きである。
    ・ これらのレンズは信号接点があるが、 CPUレンズではない(CPUレンズとは呼ばない)。
    ・ これらのレンズの信号接点は、波型(ジグザク)配列となっている。(レンズ側接点(ピン)パターンのパターン番号D)
    ・ これらのレンズは、当機(Nikon F3AF)、 F-501、 F4 でのみAF使用可能。(他機種ではMFレンズとして使用可)

これらのF3AF用レンズ内のモーター駆動は、F3AFボディ側から2本のピン経由で(シリアル通信ではなく)電気的に行なっている。その後に発売されたCPUレンズではシリアル通信を基本としているので、これらのF3AF用レンズはCPUレンズとは呼ばない。(●CPU連動方式/CPU内蔵レンズ/電子接点参照)


AFレンズが少ないため、TC-16(S) というAFテレコンバーターが発売されていた。
 
●TC-16(S) (AFテレコンバーター)


84/4月発売。 1.6倍のテレコンバーター + CPU + ピント合わせ用マイクロモーター内蔵で、開放F値がF2以上のMFレンズを装着すればAF作動が可能になる。AFレンズが少ない為の対策として発売されたF3AF専用のアクセサリー。
装着レンズは無限遠に設定。ボディ側から電子接点経由でAF作動信号(と電源供給)を受け、テレコン内可動レンズ群(5群5枚)をモーターで前後に全群移動して合焦させる(カメラ側からはモーター内蔵のAFレンズに見える)。その為可動レンズ分の厚みがあり、装着可能なレンズに制限がある。(非Aiレンズ、改造Aiレンズは使用不可)
電源ON/OFFスイッチ、フォーカスロックボタン、(Ai方式の)露出計連動レバー、レンズ識別ピン(AiレンズとAi-Sレンズを識別)、レンズ焦点距離識別レバー(135mm以上のレンズを識別し高速プログラムに切り替える)などが付加されている。自動絞り、開放測光。開放F値は1+1/3段暗くなる。
F3AF以外に、F-501、F4でも使用可能。


ニコンの最初のAF一眼レフがモーター内蔵レンズとセットで商品化されたにも関わらず、発売されたAFレンズは上記の2本のみであった。

その3年後の昭和61(1986)年4月、第二世代AF機として「F-501」が発売されたが、この機種はAFモーターをボディ内に組み込み、AFカップリングを通じてレンズ内のフォーカシングレンズ群を駆動させる方式に変更されている。

さらに、F-501発売から10年後の平成8(1996)年11月には、超音波モーターを内蔵したAF-Sレンズが発売された。

F-501でレンズ内モーターを取りやめた理由として考えられるのは、F3AF用レンズで使われているコアレスモーターは「急加減速など制御性に優れ、高精度、小型軽量、高効率であり、精密制御用モーターとしての適性を持つ」といわれるが、当時は希土類磁石や貴金属など高価な原材料を使わざるを得ないために製造原価が高くなるのを避けたためと思われる。さらに、92年発売の「AF-I(コアレスモーター内蔵)レンズ」と同様に、減速−停止時の精度上の問題(?)があったのかもしれない。

ちなみに、F3AF用の「 AI AF Nikkor 80mm F2.8S 」は、発売時価格が 80,000円に対し、モーター非内蔵の同一スペックのレンズは存在しないが、これに近い「Ai AF Nikkor 85mm F1.8D」は、より大口径にも関わらず47,000円であった。

尚、初めて超音波モーターを内蔵したレンズは1987年に発売された C社の「EF300mm F2.8L USM」 なので、ニコンのAF-Sレンズの発売はこの9年後となる。

 
●Ai-Pレンズ
CPU連動方式のマニュアルフォーカスレンズであり、 Ai-Sタイプであるが、Dタイプではない(被写体までの距離情報がカメラボディ側へ伝達されない)。

発売されたのは以下の3本のみである。(レンズ名が”Ai”で始まり、最後に”P”が付く)
・Ai Nikkor ED 500mm F4P (88/3月)
・Ai Zoom Nikkor ED 1200-1700mm F5.6-8P(IF) (94/1月)
・Ai Nikkor 45mm F2.8P (01/7月。パンケーキタイプ)

 
●AF-I(コアレスモーター内蔵レンズ)
AF駆動用のコアレスモーターをレンズ内に内蔵。 CPU内蔵で、Dタイプでもある。(レンズ名に”AF-I”が含まれる)

以下の4本のみ
・Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)   (92/9月) 
・Ai AF-I Nikkor ED 600mm F4D(IF)   (92/9月) 
・Ai AF-I Nikkor ED 400mm F2.8D(IF)   (94/7月) 
・Ai AF-I Nikkor ED 500mm F4D(IF)   (94/11月) 

慣性モーメントが小さいコアレスモーターの特性上、応答性と静止時からの加速性に優れるが、停止時の精度が落ちるようでAF合焦速度はAF-Sには劣る。
AF撮影可能機種は、AF-S(超音波モーター内蔵レンズ)と同じ。電子接点は10ピン。

 
●AF-S(超音波モーター内蔵レンズ)
  AF駆動用のSWM (超音波モーター) を内蔵。被写体の激しい動きにも追従する合焦スピードと、ボディ駆動のAFレンズにはない静粛性を合わせ持ち、これらが要求されるスポーツや野生動物の撮影シーンに威力を発揮する。(レンズ名に”AF-S”が含まれる)

96年11月に発売された以下の2本が最初である。

 ・ Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)
 ・ Ai AF-S Nikkor ED 600mm F4D(IF)
 
基本はリング型の超音波モーターを搭載しているが、D40と共に発売された「AF-S DX ズームニッコール ED 18-55mm F3.5-5.6G II」等の廉価版ではコアレスモーターの駆動部を超音波駆動式に変えた「超音波駆動のマイクロモーター」を搭載している。リング型ではフルタイムマニュアルフォーカスが可能であるがマイクロモーター型ではできない。(後述)

リング型SWMユニット   マイクロモーター型SWMユニット
 
(メーカーサイトより)
 


●M/Aモード

リング型超音波モーター搭載レンズには「M/Aモード切換えスイッチ」があり、AF中でもピントリングを回せばタイムラグ無しでマニュアルによるピント合わせが可能である。(所謂フルタイムマニュアルフォーカス)

M/Aモード切換えスイッチ

(メーカーサイトより)
 


●A/Mモード

上述のM/Aモードでは、AF撮影時のレンズ(カメラ)保持中に、意に反して(不用意に)ピントリングを回してしまう(マニュアルフォーカスへの移行)ことがある。このA/Mモードは、M/Aモードに比べマニュアルへの切り換え感度を下げ、不用意なオートからマニュアルへの切り換わりを防止した「オート優先オートフォーカス」モードである。

A/Mモード切換えスイッチ

(メーカーサイトより)
 


●A-M 切り替えスイッチ

一方、廉価版の超音波駆動マイクロモーター搭載レンズはフルタイムマニュアルフォーカスに対応していない。従って「M/Aモード切換えスイッチ」もない。対応するには追加機構が必要であるが、廉価版としての位置付けとなるレンズへの搭載はコスト面から見送ったと思われる。マイクロモーター搭載レンズでマニュアル操作に切り替えるには、この「A-M切り替えスイッチ」を操作する必要がある。  このスイッチは、レンズ鏡筒内に設けられたクラッチの働きによって AF時には距離リングが回転せず、マニュアルフォーカス時にピントリングの回転に適度な負荷がかかりマニュアルレンズと同じような操作感を可能にする。

A-M 切り替えスイッチ


(メーカーサイトより)

 

● AF-Sレンズは全てAF(オートフォーカス)レンズでCPU内蔵且つ距離エンコーダー内蔵(Dタイプ)であり、GタイプDXレンズFXレンズがある。

DXフォーマット用レンズは以下の1本を除き全てAF-S内蔵レンズである。
  ・「AF DX フィッシュアイ Nikkor ED 10.5mm F2.8G」(03/11月発売)



AF-SAF-I レンズは、F4以降のフラッグシップ機、平成04(1992)年9月発売のF90シリーズ以降のAF機(F50D、F60D、Usなど一部の入門機を除く)でAF撮影が可能である。  ( 参考:露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧

(1) AF-SAF-I レンズでAF撮影が可能な機種(モーター内蔵レンズ以外のAFレンズでもAF可能)

F4 / F5 / F6、プロネア600i / プロネアS、F70D / F80シリーズ / F90シリーズ / F100 / U / U2、
D1シリーズ以降の全デジタル一眼レフ

(2) AF-SAF-I レンズでのみAF撮影が可能な機種(これらのモーター内蔵AFレンズ以外ではマニュアルフォーカス撮影となる)

D40 / D40x / D60 / D3000シリーズ / D5000シリーズ (→ ●モーター内蔵レンズ専用機とレンズの組み合わせ

(3) AF-SAF-I レンズでAF撮影が不可能なAF機種(マニュアルフォーカスでの撮影となる)

US / F60D / F50D / F-801 シリーズ / F-601 / F-501 / F-401 シリーズ

 
●AF-P(ステッピングモーター内蔵レンズ)
AF駆動にSTM(ステッピングモーター = パルスモーター)を搭載した新レンズで、レンズ名の「P」は「Pulse Motor」を指す。

STMはパルス電力に同期して動作するモーターで、電気信号1パルスにつき1ステップ分回転し、回転角度が駆動パルスの数に比例するというシンプルな構造であり、回転速度は入力パルスの周波数に比例するため広範囲の回転速度を実現できる。

回転精度が高くフィードバック制御が不要(オープンループ制御)、つまり別途エンコーダ(回転検出器)が不要であり、起動や停止、逆転時のレスポンスや位置決め制御性が高い。特にライブビューや動画撮影時にはコントラストAF(細かくピント位置を前後に動かしながらコントラストのピークを探す)の動作に最適で高速化が実現できる。逆に超音波モーターは位相差AFのように指定したピント移動量と方向に一気に移動する動作には向いているが、細かい前後運動は苦手である。

また、STMは減速ギアも使用しないので駆動音も極めて静かであることから、動画撮影時などレンズの駆動音が気になる場面に適する。AF-S(超音波モーター内蔵レンズ)では、駆動時の「サーッ」音、停止時の「カタッ」音など、動画撮影時にカメラ本体内蔵のマイクで音を拾ってしまうことがあるが、これが改善されるようである。

実際に「Nikon 1」シリーズ用の「1 NIKKOR」レンズ群には、既に「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM」など、STM搭載のレンズが発売されており、「アドバンストハイブリッドAFシステム」(像面位相差AF+コントラストAF)と合わせてAFの高速化を実現している。

ちなみにカメラ本体へのSTM搭載例としては、平成28(2016)年3月発売の「D5」で、「ミラーステッピングモーター」によりミラーアップ/ミラーダウンともに動作開始時の加速制御によるミラー駆動の高速化、動作終了時の減速制御によるバウンド低減することで、連続撮影時の安定したファインダー像を実現している。また、D800ではパワー絞り(釦操作+ステッピングモーター)、EタイプレンズPC-Eレンズには電磁絞りの駆動用にステッピングモーターが使われている。


・ 平成28(2016)年9月発売の「D3400」のキットレンズとして、

    「AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR」
    「AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR」

 が発売された。共にDX(APS-Cサイズ)フォーマット専用レンズGタイプとなる( レンズタイプは AF-P G(DX) )。2020年11月現在、AF-P搭載のDX専用レンズEタイプは存在しない。

・ その後、平成28(2017)年7月に、FX版の

    「AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR」

 が発売された。Eタイプでもある( レンズタイプは AF-P E(FX) )、2020年11月現在、AF-P搭載のFXレンズはEタイプのみで、Gタイプは存在しない。

・ 従来のレンズ鏡筒にあった、「AF/MFの切り換え」や「VR(手ブレ補正)のON/OFF切り換え」スイッチは省略され、カメラメニューの「フォーカスモード」、「光学手ブレ補正」で設定する。「光学手ブレ補正」のメニューがないカメラでは、自動的にONになり、OFFにすることができない。

・ 「M/Aモード」を搭載しているので、AF中でもフォーカスリングを回せばマニュアルでピント合わせができる。(所謂フルタイムマニュアルフォーカス)

・ 但し、レンズに電源供給されていない(カメラ電源OFFやカメラの半押しタイマーがオフ)時は、フォーカスリングを回してもピント合わせはできず、また、ズームリングを回すとピントずれが生じる。つまりフォーカスリングは電気的なスイッチにすぎず、回転量を電気的にモーターに伝えるのみ。

・ 当然ながら、電子接点経由でAF-Pレンズに電源供給されないカメラでは使えない。露出計関連機能は動作するかもしれないが、AFは不可、ピントリング操作によるマニュアルフォーカスも不可である。

 

尚、当レンズシリーズが使用可能なカメラは、極一部の最新デジタル一眼レフのみとなり、またまた複雑な組み合わせ条件が増えてしまった。。。。。

しかも、「AF-PのGタイプ」と「AF-PのEタイプ」によっても、使用可否・条件が変わっているなど、混乱の極み。。

以下は、あくまで参考程度にしてほしい。(後述のメーカーサイトを確認すること)

 

AF-Pレンズが使用可能なカメラを発売年順に並べ替えると。。。。

下表の通り、おおよそ平成19(2007)年11月発売のD3以降のD300、D700、D7000のフラッグシップ/ハイエンドデジタル一眼レフと、平成24(2012)年3月発売のD4以降のデジタル一眼レフで使用可。(但し2013年10月のD610は何故か不可

表1:AF-Pレンズが使用可能なカメラ(発売年順)  (2020/9現在)
カメラ名 使用可否 発売時期 備考
AF-PのGタイプ AF-PのEタイプ
フィルム一眼レフカメラ × ×
D1シリーズ(D1、D1X、D1H) × × 1999/9、2001/5、2001/7
D100 × × 2002/6
D2シリーズ(D2H、D2X、D2Hs) × × 2003/10、2005/1、2005/3
D70/D70S × × 2004/3、2005/4
D50 × × 2005/6
D200 × × 2005/11
D80 × × 2006/9
D40/D40X × × 2006/12、2007/3
D3シリーズ(D3、D3X、D3S) × △(※1) 2007/11〜2009/11 (※1)半押しタイマーピント位置変わる 
D300シリーズ(D300、D300S) × △(※1) 2007/11、2009/8 (※1)半押しタイマーピント位置変わる 
D60 × × 2008/2
D700 × △(※1) 2008/7 (※1)半押しタイマーピント位置変わる 
D90 × × 2008/9
D3000/D3100/D3200 × × 2009/8、2010/9、2012/5
D5000/D5100 × × 2009/5、2011/4
D7000 × △(※1) 2010/10 (※1)半押しタイマーピント位置変わる 
D4/D4S 2012/3、2014/3 ファームウェア更新要
D800/D800E 2012/3、4 ファームウェア更新要
D600 2012/9 ファームウェア更新要
D5200 △(※1) △(※1) 2012/12 (※1)半押しタイマーピント位置変わる 
D7100/D7200 2013/3、2015/3 ファームウェア更新要
D610 2013/10 ファームウェア更新要
Df 2013/11 ファームウェア更新要
D5300 △(※2) 2013/11 ファームアップ、(G※2)M/A未対応
D3300 △(※2) 2014/2 ファームアップ、(G※2)M/A未対応
D810/D810A 2014/7、2015/5 ファームウェア更新要
D750 2014/9 ファームウェア更新要
D5500 2015/2 ファームウェア更新要
D5 2016/3 ファームウェア更新要
D500 2016/4
D3400 2016/9
      AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR 2016/9 D3400と同時発売
D5600 2016/11
D7500 2017/6
      AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR 17/7
D850 2017/9
D3500 2018/9
D780 2020/1
D6 2020/6
  (◎:使用可 ○:ファームアップ要 △:使用条件あり ×:使用不可)

(参考)●AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧 

●使用可否
  「AF-PのGタイプ」: AF-P搭載のDXレンズ
  「AF-PのEタイプ」: AF-P搭載のFXレンズ

(※1)ピント合わせ後にカメラの半押しタイマーがオフになると、再び半押しタイマーがオンになったときにピント位置が変わる。
     2018/3/21 追記: D3、D700、D300シリーズ、D5200以外は、2018/2/27のファームアップで対応済み

(※2)「AF設定時のフォーカスリング操作」メニューによるM/Aモードの設定(有効/無効)や、マニュアルフォーカス時のフォーカスリング端点警告表示機能に対応していない。


●メーカーサイトの情報: 


   (1)AF-PのEタイプレンズとの組み合わせについて
   (2)AF-PのGタイプレンズとの組み合わせについて
   (3)カメラとレンズの組み合わせ適応表 (PDFファイル。2020.2.12付け)

   (4)AF-P Gタイプレンズが使用できるデジタル一眼レフカメラ/ミラーレスカメラを教えてください (D810Aが重複、D800Eが未記載のミスあり!)

   (5)AF-P Eタイプレンズが使用できるデジタル一眼レフカメラ/ミラーレスカメラを教えてください (2020/6/5付け。D3、D5000、D3000、D3500の記述がないなど抜けが多い)

   (6)一眼レフカメラ「Df Ver. 1.02」、「D810 Ver. 1.13」、「D810A Ver. 1.03」、「D4S Ver. 1.33」、「D4 Ver. 1.11」、「D800 Ver. 1.11」、「D800E Ver. 1.11」、「D7200 Ver. 1.03」、「D7100 Ver. 1.04」用ファームウェアのダウンロードを開始(2018年2月27日)

 

《 コラム 》 関連情報は同時更新しないと、どれを信じればいいか分からない

 2016/12時点ではAF-P未対応とされていたカメラ(D610など)が実は使用可能だったり、使用可否が「AF-PのGタイプ」と「AF-PのEタイプ」とに分かれたり。。D3シリーズ、D700、D300シリーズは、「AF-PのGタイプ」には未対応だが「AF-PのEタイプ」には対応、しかし半押しタイマーOFF→ON時にピント位置が変わることには対応していない。。。 等など、なんとも中途半端な。。。。。。。。。。。。

例えば、D4は2018年2月27日のファームアップで「半押しタイマーOFF→ON時にピント位置が変わる」現象の対策がなされた件について、上記メーカーサイトの情報中、(1)、(2)の内容は更新されているが、(3)、(4)にはそれが反映されていない。(2018年3月27日時点)

(4)と(5)は、「サポート > Q&A > よくある質問」にある記事であるが、D810Aが2つあるのにD800Eがなかったり、一部のデジタル一眼レフカメラの記述がなかったりと不完全さが目立つ。

さらには、(6)のファームアップでD4/D4S/D800/D800Eでは「AF-P DXレンズに対応しました」との表現がある。

「AF-P DXレンズ」とは、「AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR」のような、「AF-P DX + Gタイプ」、即ち「AF-PのGタイプ」のことであるが、同一のモノは同一の言葉を使うべきである。。


ニコンさん、こんなことでいいのか?

この複雑怪奇さ、どうにかしてよ。。。


関連情報は同時更新しないと、どれを信じればいいか分からない。



というか、情報は一元化し、類似の情報を複数個所に分散すべきではない。

  (一箇所にまとめ、リンクを貼るべき)


もっと言えば、AF-Pなど新レンズ発売時には、

最低限どの機種がいつ頃ファームアップ等で対応するのか(またはしないのか)、

工程表を同時に発表すべきだろう。




いずれにしても、各カメラのファームウェアは最新にしておくこと。


ステッピングモーターの構造上、ローター(モーター内部にある回転子)とステーター(ローターの外側を囲む固定子)が機械的に接触していないので、何も対策をしなければ半押しタイマーOFF→ON時に微小な動きが発生しピント位置が変わる。対策としては半押しタイマーOFFの直前のピント位置を記憶しておき、ON時に再度その位置に移動させること等が必要と思われる。

  2018/3/21 追記: この不具合は、2018/2/27のファームアップで対応された(但し、一部機種は未対応のまま)

  参考: ステッピングモーターの基礎ステッピングモータの構造


ネット情報によれば、2018年1月時点でAF-Pを動作対象外の機種(例えばD800)で使用した場合、位相差AFは通常通り動作するが、ライブビュー時は動作対象機種のような高速動作は見込めない(AF-Sレンズと同等の速度)ようだ。また、D3400に(AF-Pではなく)AF-Sレンズを使用した場合でもライブビュー時の高速動作は感じられないとのこと。(但し、D800等は2018年2月27日のファームウェアアップデートでAF-P対応した)

このことから分かるのは、AF-P動作対象外の機種ではAF-Pも「AF-S用の制御モジュール」でコントロールされている(コントロールできる)こと、そしてAF-P動作対象機種では、AF-P専用の制御モジュール(ファームウェア)が組み込まれていることがうかがえる。

AF-P駆動に関するモジュール(ファームウェア)のイメージは以下のようになる。(あくまで推定^^;)


AF測距モジュール(ボディ内)
《非ライブビュー時》 《ライブビュー時》
   位相差AFサブモジュール     コントラストAFサブモジュール 
移動量・前後方向算出 前か後方に微小移動量算出



AF駆動モジュール(ボディ内)
ボディ内AF駆動サブモジュール
AFモーター駆動

(再度、ボディ内AF測距モジュールへ)
      AF-S駆動サブモジュール      
対レンズ通信モジュール
移動量・前後方向送信
完了応答待ち
    AF-P駆動サブモジュール      
対レンズ通信モジュール
移動量・前後方向送信
完了応答待ち

|(ボディ〜レンズ間通信)

レンズ内AFコントローラ
《AF-S》 《AF-P》
超音波モーター駆動 パルス発振&STM駆動
(非ライブビューなら、ここで合焦)
ボディへ動作完了通知



 再度、ボディ内AF測距モジュールへ 



前述のように「AF-P駆動サブモジュール」が組み込まれていないカメラにAF-Pレンズを装着すると、代わりに既存の「AF-S駆動サブモジュール」が作動するようだ。(但し高速化はされない)

両モジュールとも基本的な処理は変わらず、「 AF測距モジュール 」から受け取った「移動量・前後方向」を「 対レンズ通信モジュール 」を通してレンズに(フォーカス移動コマンドを)送信する。レンズ側はその値に応じてアクチュエーターを駆動する。

にも関わらず、「ライブビュー+AF-Pレンズ」でAFが高速動作するのはなぜか。。

ライブビューのコントラストAFの高速化で問題となるのは、位相差AFと違って、ピンボケ状態からコントラストが最も高い位置(=合焦)までピントを前後どちらにどれ位動かせばよいかを知るために、フォーカスレンズを前後に小刻みに動かしてみなければ分からないことにある。

この点では超音波モーターに比べて細かい前後運動に向いているSTM(ステッピングモーター)搭載のAF-Pが有利である。

が。。。。これだけだろうか。。

Nikon 1シリーズの「ハイブリッドAF」やC社の「デュアルピクセルCMOS AF」などの像面位相差AF組み込みの撮像センサーを使っているわけでもないので、要はAF-Pに特化した新たな「AFアルゴリズム」を開発したと思われる。

例えば、P社ではLUMIX GH4に搭載した「空間認識AF」のような新アルゴリズムを搭載している。
これは、AF駆動前にライブビュー画像からピントの異なる2枚の画像(当然ボケ状態の異なる画像)を取得し、ボケのより小さい画像方向がピント移動の方向となり、さらに交換レンズごとに、ピント位置からの距離により点像がどうボケるかというレンズデータが内蔵されているので、ボケの大きさからおおよそのピント移動量が分かるというもの。つまり新たなハードを追加しているわけではない。

或いは?。。

メーカー技術者のインタビュー記事が出るのを期待している。

 
●VR(手ブレ補正内蔵レンズ)
  [ VR : Vibration Reduction ] (レンズ名に”VR”が含まれる)

カメラのシャッターが開いている間(露光中)に手が動いてしまうことによる手ブレを補正する機構。手振れ補正の方式としてはボディ内蔵型とレンズ搭載型の2種類があるが、ニコンではファインダーで防振効果を確認でき、撮影時に被写体を捉えやすいというメリットから、レンズ搭載型を採用している。

カメラのブレ ( ピッチングとヨーイング、つまり上下・左右方向の角度ブレ) をレンズ内の2種類のセンサーにより1/1000秒毎に検出。そのブレ量(角速度)をレンズ内MPU(マイコン)で処理し、光学系の一部をVCM(Voice Coil Motor)モーター、つまり一種のリニアモーターでブレをなくす方向に駆動する。 手ブレ限界(撮影者によって異なる)のシャッタースピードから3段(VRIIでは4段)相当の手ブレ軽減効果を発揮する。(但し、 光軸回りの回転ブレ、所謂ローリングや上下左右の平行ブレは補正されない)


VR構造図 VR補正ユニット

(メーカーサイトより)

● 流し撮りの際はセンサーがこれを自動的に検知し、モードの切り換えなしに左右方向のカメラの動きに対しては縦のブレのみを、上下方向のカメラの動きに対しては横のブレのみを軽減。

● 「露光前センタリング」:手ブレ補正レンズ群の移動量には限界があるため、シャッター全押し時には手ブレ補正レンズ群を瞬時に光軸の中心に戻す(センタリング)ことによって、360°全方向への移動可能量を均等に確保し改めて露光のための手ブレ補正を行なっている。(ニコンオリジナル技術)

● ノーマルモードは全てのVRレンズの搭載され、手ブレによるファインダー像は撮影画像のブレを軽減する。構図の変更など意図的な動きと手ブレを区別し、手ブレのみを補正する。流し撮り検知機構も備えており、モードを切り換えることなく対応する。

● アクティブモードを備えているVRレンズでは、乗り物などに乗っているときなどの揺れの激しい条件での手ブレ補正も可能。

アクティブモード:
  通常(ノーマルモード)は、大きくゆっくり動くブレは構図変更の動作と判断し、自動的にファインダー像の補正効果を制御するが、自動車や船舶、ヘリコプターなどの揺れる乗り物の上で撮影する時や非常に不安定な体勢で撮影する時などには、アクティブモードを選択すると大きくゆっくりした動きもブレとして認識し安定したファインダー像が見られるよう的確に補正機能が働く。

 (アクティブモードは「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G (IF)」、「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 200-400mm F4G (IF)」など一部のVRレンズに搭載)

● スポーツモードを備えているVRレンズでは、スポーツなど動きモノを連写するときに適した手ブレ補正を行なう。

スポーツモード:
  通常(ノーマルモード)やアクティブモードでは、シャッターを切る直前に“露光前センタリング”を行なっているが、連写時などにシャッターを切るたびにフレーミングが微妙にずれてしまうことがある。

スポーツモードは、露光前センタリングを行わないようにしたと共に、スポーツ撮影で被写体の動きを追う際に、レンズの振りに対して速やかにファインダー像が追従するような手ブレ補正の制御を行っている。

手持ち撮影、流し撮り、一脚・三脚使用時にも効果的だが、ブレ補正効果が「ノーマルモード」より低くなる場合があるので、静止被写体撮影時には「ノーマルモード」を使用したほうがよい。

スポーツモードは、2014年8月28日発売の「AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR」で初めて採用。

● 三脚に載せた場合、撮影時のミラーやシャッターの動きによって三脚が細かく振動し、その影響で画像にブレが生じる場合があるが、この振動は手ブレ(1Hz〜10Hz)とは周波数が異なるため、一部のレンズではこれを自動的に検知してアルゴリズムを切り換え、三脚の微細な振動によるブレを補正する機能を搭載している。(「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 200-400mm F4G (IF)」などの超望遠レンズを中心に一部のVRレンズに搭載)

 
トライポッドモード:
  最近のニコンサイトやレンズカタログでは、「AF-S NIKKOR 400mm F2.8G ED VR」などに搭載された三脚使用時のブレ補正機能を「トライポッドモード」と呼称している。

● 長時間にわたって厳密にブレを補正した像をファインダー越しに見続けると乗り物酔いのような不快感を感じることがある為、ニコンのVRではシャッター半押し時と全押し時の補正アルゴリズムを変えている。

  ・シャッター半押し時: ファインダー像を見やすく被写体を捉えやすくするため、ブレ補正を段階的に少し弱めに制御する。
  ・シャッター全押し時: 露光する瞬間のブレを最大限に補正する。


 但し、一眼レフ用交換レンズとして最初にVRが搭載された「AI AF VR Zoom-Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D」(2000年11月発売)では以下の2種類の動作モードがあった。

  モード1: シャッターボタン半押し中にもVR機能を作動、ファインダー像のブレを自然な感じに補正
  モード2: 露光中のみ VR 機能を作動

 尚、このレンズ以降のVRレンズは全て半押し中から手ブレ補正の機能を作動させるように設計されている。

● 一部のVRレンズは、高感度や長時間露出で撮影する場合、VR制御システムの特性により画像にムラが出ることがある。
  各カメラやレンズの取り扱い説明書を参照のこと。

● VR搭載レンズは、1本を除き全て非Ai、CPU内蔵Gタイプである。
  (上述した2000年発売の「AI AF VR Zoom-Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D」のみDタイプとなる)



<手ブレ補正効果の段数について(メーカーアナウンス)>

 シャッタースピード1/250秒で手持ちした場合に、例えば70%の確率でブレない写真を撮る人が、手ブレ補正「オン」で撮影することにより、3段分遅いシャッタースピード1/30 秒でも約70%の確率でブレない写真を撮影できます。




[ VRII : Vibration Reduction II ]

手ブレ検知用高性能ジャイロセンサーを採用し、約4段分の手ブレ軽減効果を発揮、システム全体の精度の向上を実現した。
(05年12月に発売された「AF-S DX VR ズームニッコール ED 18-200mm F3.5-5.6G (IF)」に初めて搭載)


●VR 機能使用可能機種
F5 / F6 / F100 / F80 シリーズ / U / U2、全デジタル一眼レフ

( 参考:露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧

 

●電磁絞り/PC-Eレンズ/Eタイプレンズ
  ●電磁絞りとは

 レンズの絞りをレンズ内に組み込まれたステッピングモーターで駆動する方式。従来の絞り連動レバーによるメカ連動に比べ、より高精度に絞りをコントロールすることができる。特にテレコンバーター使用時にはメカ連動では作動部品の数が増えるので絞りの精度にバラツキが生ずることもあったり、高速連写時に絞りが暴れるケースでも、電磁絞りでは電気的な通信で動きをより高い精度で制御でき、テレコンのコストダウンも期待できる。

 また、メカ連動に比べ絞りの設置位置の自由度が上がるのでレンズ設計上の幅が広がり、嘗てラインナップにあった1000mmクラスのようにレンズマウント〜絞り羽根の距離が長く、且つ、大きな絞り羽根(=絞り慣性が大きい)の駆動においても高精度な絞り制御が可能であると思われる。

 但し、高速連写時の開放から最小絞りまでの絞り駆動速度面ではレバー(スプリング)方式の方が勝っているというデータもあり、実際D4Sなどのフラッグシップ機の最速連写(D4Sなら11コマ/秒)時に、F16よりも絞り込んだ場合にコマ速が若干低下(D4Sなら9.5コマ/秒)するという制約がある。レリーズタイムラグも大きく(遅く)なりそうな気がするが、メーカーはコメントしていない模様。

 最初に電磁絞りを採用したのは、2008年2月に発売された「 PC-E 24mm F3.5D」という特殊なPC(パースペクティブコントロール)レンズ(PC-E)で、PCレンズ以外の一般レンズへの採用は、2013年5月31日の「AF-S NIKKOR 800mmF5.6E FL ED VR」からで、新たにEタイプレンズ と呼称されるようになった。

 いすれも電磁絞りに対応しているカメラボディでなければ、これらのレンズは使えない。

 

●PC-Eレンズ

 電磁絞りを採用し、アオリ機構/レボルビング機構を備えたPC(パースペクティブコントロール)レンズで、マニュアルフォーカスのみである。

従来の機械式連動絞り機構では、 レンズを装着するとボディ側の(K)絞り連動レバーとレンズ側の(a)絞り連動レバーがメカ的に接触・連動して絞りをコントロールしていた。(=●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE)。

しかし、アオリ機構、レボルビング機構を備えたPCレンズでは、レンズの鏡筒が2〜3分割されてシフト(光軸を垂直方向に移動)/ティルト(光軸を傾ける:首振り)できる構造となっている為、絞り連動レバーをレンズ後端(マウント面)から絞りまで通すことができない。

PC Nikkor 35mm f/3.5

その為、従来のニコンのPCレンズではプリセット絞り(※)しか出来なかったが、2008年2月に発売された「 PC-E 24mm F3.5D」を皮切りに、計3本のPC-Eレンズでは、電磁絞り対応カメラとの組み合わせ時に電子制御式絞りによる自動絞りが可能となった。

PC-Eレンズが使えるカメラ以外でPC-Eレンズ使用時は、フィルムカメラを含めてプリセット絞りとなる。 

※プリセット絞り: PCレンズでは通常の絞りリングとは別にプリセット用リングを持つ。事前に絞りリングで適切な絞りを設定しておけば、プリセット用リングを停止端まで回して絞り開放〜設定絞りまで簡単にセットできる。構図/ピント調整時には絞り開放で、撮影時には設定絞りまで簡単に絞り込むことができる。

 16年10月現在、PC-Eレンズとして発売されているのは以下の通り。

   ・ PC-E 24mm F3.5D (08/2月)
   ・ PC-E Micro NIKKOR 45mm F2.8D ED (08/7月)
   ・ PC-E Micro NIKKOR 85mm F2.8D (08/8月)

 ( ・ PC NIKKOR 19mm f/4E ED(16/10月) は、PCレンズだが、PC-EではなくEタイプとなる)


PC-E 24mm F3.5D
 


●Eタイプレンズ

 2013年5月31日に「AF-S NIKKOR 800mmF5.6E FL ED VR」 が発売された。AF-S(超音波モーター内蔵)、蛍石レンズ、EDレンズ、ナノクリスタルコート、VR機構(手ブレ補正効果4.5段)を採用、専用テレコンバーターを装着して高速連続撮影時にも安定した露出制御を可能にする電磁絞り機構を搭載している。PCレンズ以外の一般のレンズに初めて電磁絞り機構が採用されると共に、新たに「Eタイプレンズ」と呼称されることになった。絞りリングも省略されているので、所謂Gタイプでもあり、非Aiでもある。

 最初の商品は絞り動作慣性の大きな望遠系の高級レンズからのスタートだが、Fマウントの完全電子化への方向性からも今後廉価版レンズにも商品展開されるのは明らかで(でなければコストダウンが図れない)、そうなると近い将来、Eタイプ専用(完全電子制御化)ボディが発売されることになるだろうか。そう、かつてモーター内蔵レンズ専用機として発売されたD40のように。。


16年11月現在、Eタイプレンズとして発売されているのは以下の通り。

レンズ名 発売日 希望小売価格(税込)
AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR 2013年5月31日 2,311,200円
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR 2014年8月28日 1,622,700円
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR 2015年1月29日 267,300円
AF-S NIKKOR 600mm f/4E FL ED VR 2015年7月16日 1,593,000円
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR 2015年7月16日 1,296,000円
AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR 2015年7月16日 135,000円
AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR 2015年9月17日 189,000円
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 2015年10月22日 310,500円
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED 2016年8月26日 259,200円
PC NIKKOR 19mm f/4E ED 2016年10月28日 442,800円
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR 2016年11月11日 359,000円

 全てEDレンズを使用した高級品。。。

 最も低価格の「AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR」(2015年7月16日発売)は、DXフォーマット、広角側開放F値2.8の5倍標準ズームレンズ、DXレンズ初のナノクリスタルコートやフッ素コート、電磁絞り機構を搭載、手ブレ補正効果4.0段のVR機構、EDレンズと非球面レンズを採用している。

FX判望遠系の高級レンズのみならず、DX判の標準ズームにも電磁絞り機構を搭載し始めた訳で、今後ますます電磁絞りレンズが発売されることになるだろう。でも。。。135,000円はやはり、高級レンズか。。。。



のはよいのだが。。。。。 

PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラに相違がある。


表1:PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラ(機種別)  (2017/11現在)
カメラ名 使用可否 発売時期
PC-E Eタイプ
D3シリーズ(D3、D3X、D3S) 2007/11〜2009/11
D4 / D4S 2012/3、2014/3
D5 2016/3
Df 2013/11
D300シリーズ(D300、D300S) 2007/11、2009/8
D500 2016/4
D600 2012/9
D610 2013/10
D700 2008/7
D750 2014/9
D800 / D800E 2012/3,4
D810 / D810A 2014/7、2015/5
D850 2017/9
D3000(※1) × 2009/8
D3100/D3200/D3300/D3400 2010/9〜2016/9
D5000/D5100/D5200/D5300/D5500/D5600 2009/5〜2016/11
D7000 2010/10
D7100/D7200/D7500 2013/3、2015/3、2017/6
D90(※1) × 2008/9
D1シリーズ(D1、D1X、D1H) × × 1999/9、2001/5、2001/7
D2シリーズ(D2H、D2X、D2Hs) × × 2003/10、2005/1、2005/3
D40/D40X × × 2006/12、2007/3
D50 × × 2005/6
D60 × × 2008/2
D70/D70S × × 2004/3、2005/4
D80 × × 2006/9
D100 × × 2002/6
D200 × × 2005/11
フィルム一眼レフカメラ × ×
(◎:使用可  ○ファームアップで使用可  ×:使用不可)

※1:D90とD3000はPC-Eレンズは使用できるが、Eタイプレンズは使用できない(?)

(参考)●AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧 

メーカーサイト:
    AF-SのEタイプレンズとの組み合わせについて
    カメラとレンズの組み合わせ適応表


発売年順に並べ替えると。。。。

表2:PC-EレンズとEタイプレンズが使用可能なカメラ(発売年順)  (2017/11現在)
カメラ名 使用可否 発売時期
PC-E Eタイプ
フィルム一眼レフカメラ × ×
D1シリーズ(D1、D1X、D1H) × × 1999/9、2001/5、2001/7
D100 × × 2002/6
D2シリーズ(D2H、D2X、D2Hs) × × 2003/10、2005/1、2005/3
D70/D70S × × 2004/3、2005/4
D50 × × 2005/6
D200 × × 2005/11
D80 × × 2006/9
D40/D40X × × 2006/12、2007/3
D3 2007/11
D300 2007/11、2009/8
D60 × × 2008/2
(最初のPC-Eレンズ「PC-E 24mm F3.5D」発売) 2008/2
D700 2008/7
D90(※1) × 2008/9
D3X 2008/12
D5000 2009/5
D300S 2009/8
D3000(※1) × 2009/8
D3S 2009/11
D3100 2010/9
D7000 2010/10
D5100 2011/4
D4 2012/3
D800 / D800E 2012/3,4
D3200 2012/5
D600 2012/9
D5200 2012/12
D7100 2013/3
(最初のEタイプレンズ「AF-S 800mmF5.6E」発売) 2013/5
D610 2013/10
Df 2013/11
5300 2013/11
D3300 2014/2
D4S 2014/3
D810 2014/7
D750 2014/9
D5500 2015/2
D7200 2015/3
D810A 2015/5
D5 2016/3
D500 2016/4
D3400 2016/9
D5600 2016/11
D7500 2017/6
D850 2017/9
(◎:使用可  ○:ファームアップで使用可  ×:使用不可)

※1:D90とD3000はPC-Eレンズは使用できるが、Eタイプレンズは使用できない(?)

(参考)●AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧 

メーカーサイト:
    AF-SのEタイプレンズとの組み合わせについて
    カメラとレンズの組み合わせ適応表


フィルム一眼レフと07年11月以前(D40/D40X以前)のデジタル一眼レフは、PC-EもEタイプも対応していない。

07年11月発売のD3以降は(D60を除き)、PC-Eはファームアップ不要で対応し、Eタイプも一部機種でファームアップが必要だが対応している(D60、D90とD3000除く)。その3ヵ月後に発売される最初のPC-Eレンズ「PC-E 24mm F3.5D」(08年2月)に既に対応しているのは当然ではある。。

電磁絞りの制御/駆動そのものはレンズ側(サーボモーター)で行なわれるので、カメラ(コントローラ)側からは絞り制御コマンドを出力、レンズ側からの絞り込み完了フィードバックを含めサーボ系を構成していると考えられ、つまりボディ側に新たな制御チップ(IC)を載せている訳ではなく、ボディ側のファームウェアに電磁絞り制御機能を追加(ファームウェアバージョンアップ)のみで電磁絞り対応となるのだろう。

ちなみに、ファームアップなしで両タイプのレンズが使えるD5100、D5200の電子接点数は7端子であるので、最低7端子あれば制御可能ということである。

ところで、PC-EレンズもEタイプレンズも共に「電磁絞り」を搭載しているにも関わらず、PC-Eでは「◎」なのにEタイプではファームアップが必要な「○」機種が多いのは何故だろうか?

08年2月発売のPC-Eから、最初のEタイプレンズ「AF-S NIKKOR 800mmF5.6E FL ED VR」(13年5月発売)までの5年3ヶ月の間に、電磁絞りの制御に何らかの仕様変更があったのか。。

 内容的には、ファームアップが不要なD3100〜D3400やD5000シリーズはAF-Sなどのモーター内蔵レンズ専用機であり、ファームアップが必要なD3シリーズ、D300シリーズ、D700、D7000などはボディ内AFモーター内蔵機であることから、Eタイプの電磁絞り(電気)とボディ内AF(メカ)の同期がらみで制御仕様が変わった(不具合があった?)ことが考えられる。(D7100は2ヵ月後にEタイプ発売なので対応済みで当然)

 これは、D5000(モーター内蔵レンズ専用機)が09年5月という早い時点でファームアップ不要でEタイプに対応していたことや、同じくファームアップ不要で使用できるPC-Eレンズがマニュアルフォーカスのみであることからもうかがえる。(以上、推定)

 

従来の連動レバー駆動方式と電磁絞り(Eタイプ)コントロールモジュール(ファームウェア)のイメージは以下のようになる。(あくまで推定^^;)

撮影時の流れ ファームウェア

測光時
      露出制御モジュール      
絞り値決定
     ↓ 絞り値通知
絞り制御モジュール
《Eタイプレンズ非装着時》 《Eタイプレンズ装着時》
連動レバー駆動サブモジュール
絞り連動レバーを設定絞り値まで下げる
(レンズ側の絞りが絞り込まれる)
(露光)
絞り連動レバーを開放位置まで戻す
(レンズ側の絞りが開放に戻る)
電磁絞り駆動サブモジュール
レンズに対し設定絞り値送信
レンズからの絞り込み完了待ち
(露光)
レンズに対し開放絞り設定送信
レンズからの処理完了待ち
シャッター釦押し下げ
露出開始
露出完了


以下も全て推定です・・・・

赤枠の「電磁絞り駆動サブモジュール」はPC-EとEタイプレンズ共通のもので、ボディ〜レンズ間データ通信(コマンド発行、レスポンス受信)を司る。

シャッター釦押し下げ後、特に連写時に実際に露出開始できるまでには、AF合焦、ミラーアップ、絞り込み、VRセンタリング後の再作動などの全条件が同期する(揃う)必要があるが、ボディ内AF(AFカップリング)のメカ駆動と、電磁絞り込み・VR作動のデータ通信を同時並行して行なうため、ボディ内CPUもレンズ内CPUも大忙し。。。タイミングが一つでもずれると誤動作となるので、なかなか制御が難しいことはシロートでも分かる。

このあたりの制御方法の変更がファームウェアアップデートの対象であるのかもしれない。。。(的外れならごめんね)

絞り連動レバーの動きについては、●カメラ側からの絞りのコントロール、ボディ〜レンズ間通信は、●CPU連動方式/CPU内蔵レンズ/電子接点を参照。

●そして完全電子マウントへ(?) 参照 )

 
●AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧

AF-P 、PC-EEタイプレンズは、使用可能なカメラがバラバラであるので、ここで一覧にまとめてみた。(2018/3現在)

  (この表は、「ニコン全一眼レフカメラ発売年表/仕様」にもあり、各カメラの詳細にジャンプできます。)

機種名  FX/DX   Ai連動   Gタイプ  VR   AF-S
AF-I
 AF-P   PC-E   Eタイプ  備考  
Gタイプ Eタイプ
Nikon E2/E2S ×
Nikon E2N ×
Nikon E2Ns ×
Nikon E3/E3s ×
Nikon D1 DX × × × ×
Nikon D1X DX × × × ×
Nikon D1H DX × × × ×
Nikon D2H DX × × × ×
Nikon D2X DX × × × ×
Nikon D2Hs DX × × × ×
Nikon D2Xs DX × × × ×
Nikon D3 FX ×
Nikon D3S FX ×
Nikon D3X FX ×
Nikon D4 FX
Nikon D4S FX
Nikon D5 FX
Nikon D6 FX
Nikon Df FX
機種名  FX/DX   Ai連動   Gタイプ  VR   AF-S
AF-I
 AF-P    PC-E   Eタイプ  備考  
Gタイプ Eタイプ
Nikon D40 DX × × × ×
Nikon D40x DX × × × ×
Nikon D50 DX × × × ×
Nikon D60 DX × × × ×
Nikon D70/D70s DX × × × ×
Nikon D80 DX × × × ×
Nikon D90 DX × × ×
Nikon D100 DX × × × ×
Nikon D200 DX × × × ×
Nikon D300 DX ×
Nikon D300S DX ×
Nikon D500 DX
Nikon D600 FX
Nikon D610 FX
Nikon D700 FX ×
Nikon D750 FX
Nikon D780 FX
Nikon D800D800E FX
Nikon D810D810A FX
Nikon D850 FX
機種名  FX/DX   Ai連動   Gタイプ  VR   AF-S
AF-I
 AF-P    PC-E   Eタイプ  備考  
Gタイプ Eタイプ
Nikon D7000 DX ×
Nikon D7100 DX
Nikon D7200 DX
Nikon D7500 DX
Nikon D3000 DX × × ×
Nikon D3100 DX × ×
Nikon D3200 DX × ×
Nikon D3300 DX
Nikon D3400 DX
Nikon D3500 DX
Nikon D5000 DX × ×
Nikon D5100 DX × ×
Nikon D5200 DX
Nikon D5300 DX
Nikon D5500 DX
Nikon D5600 DX

Gタイプ D1以降の全デジタル一眼レフで使用可
VR D1以降のデジタル一眼レフで使用可
Ai連動 ○:可(固定式) ◎:可(可倒式)
AF-SAF-I D1以降の全デジタル一眼レフで使用可。 ◎:AF-S/AF-I以外も可(ボディ内AFモーター内蔵) ○:AF-S/AF-I専用
AF-P (Gタイプ:AF-P搭載のDXレンズ   Eタイプ:AF-P搭載のFXレンズ)
◎:可 ○:ファームアップで可 △:条件あり ×:不可
PC-E ◎:可
Eタイプ ◎:可 ○:ファームアップで可 ×:不可

必ず、以下のメーカーサイトの情報を確認して下さい。

   ● カメラとニッコールレンズの組み合わせについて
   ● カメラとレンズの組み合わせ適応表





補足解説





●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE



一眼レフの基本構造と自動絞り
レンズの絞り値とファインダーの明るさ
絞り連動レバーと絞りの基本的な動作について
AEと絞りのコントロール方法の変遷
カメラ側からの絞りのコントロール



●一眼レフの基本構造と自動絞り

ここでは、ニコン(ニッコール)の自動絞りの仕組みについて説明します。

一眼レフは、その名の通り1本のレンズ(一眼)からの光をレフ(レフレックス=ミラー)で90度に曲げて、フィルムと等距離にあるファインダースクリーンに結像させ、さらにその像をペンタプリズムで倒立逆像から正立正像に復元し接眼レンズ(ファインダー)で見る、つまりレンズを通過した撮影像そのものをファインダーで見ることができる。

この構造から 二眼レフレンジファインダーカメラ と比べて パララックス(視差)がなく、超広角〜超望遠までレンズ使用も容易、TTL測光(Through The Lens)測光(レンズを通った光を測光)と組み合わせて高精度の測光が可能などの利点がある。

しかしレンズを通った光をファインダーで見るということは、レンズの絞りを絞ればファインダー像も暗くなってしまい、構図やピント合わせが困難になるという欠点がある。初期のカメラでは、絞りを開放まで開いてピントを合わせ、絞りを撮影状態まで絞り込んで測光・撮影し、再び絞りを開放にして、という手順を踏んでいた。この欠点を解決すべく「自動絞り機構」が開発された。

自動絞りとは、レンズの設定絞り値に関わらず絞り羽根は開放のままで(ファインダー像は明るい)、シャッターを切った瞬間だけ自動的に絞り込まれ(撮影され)、再び絞り開放状態となるものである。これによって、撮影前(後)は絞り開放の明るいファインダー像を見ることができるようになった。
(正確には撮影後に絞りが自動的に開放状態になるまでを「完全自動絞り」と呼ぶ)

ニコンでは昭和34(1959)年6月発売の「Nikon F」当時から完全自動絞りに対応していたが、一方、後の「TTL開放測光」(絞りを開放状態のままでレンズを通った光を測光する)に対応する為に相当の試行錯誤を繰り返すことになった。

具体的には、TTL測光用の内蔵露出計(下図3の接眼レンズ上部の測光素子)には常に絞り開放状態の光が入射しているので、測光の為には現在の絞り設定値やレンズの開放絞り値などをボディ(露出計)に伝える機構が必要になってくる。(●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係参照)



図1: 一眼レフの内部構造(イメージ) 図2: 一眼レフの内部構造(F6カットモデル)
 
図3: 一眼レフの基本構造 図4: シャッターレリーズ時の動作
 

ミラー 露光直前に跳ね上がり、撮影後に元に戻る(クイックリターンミラー)
ハーフミラー 入射光の一部をサブミラーに透過させる
サブミラー 入射光の一部をAFセンサーに導く
AFセンサー 入射光の一部を使い測距処理を行なうモジュール
ファインダースクリーン レンズからの被写体像が結像する
コンデンサーレンズ ファインダースクリーン像の明るさ/収差を改善する
ペンタプリズム ファインダースクリーン像(倒立逆像)を正立正像に復元
接眼レンズ上部の測光素子 撮影前の測光に使われる
ボディ測光素子 露光中のスピードライト調光などに使われる
(フィルム・イメージセンサー面を直接測光)

(1) シャッターボタンを押すと
(2) ミラーが跳ね上がると同時に絞りが絞り込まれる
(3) シャッターが開き露光開始、露光完了後閉じる
(4) ミラーが下がると同時に絞りが開放状態に戻る


 前述の通り、ペンタプリズムはレンズを通った光がミラーで90度に曲げられファインダースクリーン(フォーカシングスクリーン)上に結像した倒立逆像を正立正像に復元するものであり、クイックリターンミラーは露光直前に跳ね上がり、レンズを通った光がフィルム(撮像素子)上に到達し撮影後、自動的に元に戻る機構である。

 さらに、AF(オートフォーカス)時代においては、ミラーの一部をハーフミラー化して入射光の中心部の一部を透過させ、サブミラーでAFセンサーに光を導いている。透過率は、例えば「F4」では約70%がペンタプリズムへ、残り30%がサブミラーによっAFセンサーへと2分割される。尚、上図(図3、図4)で示すハーフミラーとサブミラーは、AFの測距点数が増えれば増えるほど、全測距点をカバーできるように大きく(広く)なる。

 これらの「ペンタプリズム」「クイックリターンミラー」「自動絞り」が一眼レフの特徴であり、それ以前の二眼レフレンジファインダーカメラの弱点を克服できたことがその後の隆盛につながっている。

 その一方で、大きく重いペンタプリズムが必要であることや、ミラー跳ね上がり可動域が必要でボディの小型化ができない、ミラー駆動時間による高速連写のネック、撮影の瞬間の像消失(ブラックアウト)とその瞬間にはAFが作動しないことなどの問題を抱え、アップダウンによる振動(ミラーショック)を抑えるためにダンパーやバランサーの搭載、モーター駆動でミラーアップ・ダウンを行なう(D810)など、コストアップ(と重量増加の)要因となっている。

 レンズを通過した撮影像そのものを見ることができるファインダーは「光学ファインダー(OVF:Optical View Finder)」と呼ばれるが、これに対して最近は可動ミラーが不要でペンタプリズムの代わりに「電子ビューファインダー(EVF:Electronic View Finder)」を装備した小型軽量の「ミラーレス一眼」がシェアを伸ばしつつある。
 


●レンズの絞り値とファインダーの明るさ

以下に、レンズの絞りを絞った時に自動絞り機構がある場合とない場合のファインダーの見え方を示す。
自動絞り機構がある場合、ファインダーは絞り開放状態と同じく明るいままであるが、自動絞り機構がない場合は暗くなる。

レンズ絞り開放 レンズ絞り F16
絞り開放時のファインダー 自動絞り機構がある場合のファインダー 自動絞り機構がない場合のファインダー
(実際は被写界深度も変わる)

通常時は絞りが開放状態で撮影の瞬間のみ絞り込まれる機構のため、被写界深度を確認するには「絞り込みボタン(プレビューボタン)」を押す必要がある。但し、光学ファインダーではスリガラス状の「ファインダースクリーン(フォーカシングスクリーン)」に結像した像を見ることになるので、スクリーンの造りによっては実際に(フィルムに)撮影される正確な被写界深度が反映されるとは限らない。特にAF全盛の現在ではMF時のピント合わせより明るさが優先される。また、Nikon F〜F6、D一桁機ではファインダースクリーンが交換できる。

 


●絞り連動レバーと絞りの基本的な動作について

自動絞り機構に関係するパーツは、ボディ側の「(K)絞り連動レバー」とレンズ側の「(a)絞り連動レバー」の二つである。

画像1: 絞り連動レバー

レンズをカメラボディに装着すると、絞り連動レバー同士が接触/連動する。


レンズ側の絞り連動レバーと絞りリング、絞り羽根は以下のように作動する。

画像2: 絞りリングの回転と絞り羽根の変化

レンズ単体で(カメラに取り付けずに)レンズの絞りリングを回すと、絞りが開放〜最小絞りの間で変化する(実際に絞り羽根が絞り込まれる)

尚、3時方向にある絞り連動レバーはAi以降のレンズでは絞りリングを回すと同時に位置が上下する。但し、オールドニッコールの場合は変化しない。(画像はオールドニッコールの例)


画像3: 絞り連動レバーと絞り羽根開放

矢印の絞り連動レバーを手で上端に押し上げると絞りは開放状態になり、手を離すとスプリングの力で絞りリングで設定した絞り値に戻る。

例えば絞りリングで絞り値をF16にセットし、矢印の絞り連動レバーを手で上端に押し上げると絞りは開放状態になり、手を離すとスプリングの力で元のF16に戻る。


つまり、絞りリングで絞り値を最小絞りにセットしておけば、「絞り連動レバー」の上下移動で開放〜最小絞りまでをコントロールできる。


この手の動きは、後述するカメラボディ側の絞り連動レバーと同じである。


カメラへレンズをセットすると、ボディ側とレンズ側の絞り連動レバーが接触連動する。


画像4: カメラへのレンズのセット
カメラにレンズをセットすると、ボディ側の絞り連動レバー(最上端に位置する=上向き赤矢印)がレンズの絞り連動レバー(右向き赤矢印)を押し上げることで絞りは開放状態になる。
(レンズの絞りリングをどの絞りに設定していても実際の絞り羽根は開放状態となる)
この状態(絞り開放)でピント合わせや構図の決定をする。


(画像の右半分は、フィルムカメラの裏蓋を開けフィルム面から撮影した)


画像5: 被写界深度の確認(プレビューボタン)

実絞り値(実際に撮影される時の絞り値)で被写界深度の確認をしたい場合は、プレビューボタンを押すとボディ側の絞り連動レバーが最下端まで下がり、レンズの絞り連動レバーがスプリングの力でそれを追いかけて元の設定絞り値(例えばF16)に絞り込まれるので、実絞り値での被写界深度がファインダーで確認できる。

プレビューボタンを離すと、再びボディ側の絞り連動レバーが最上端まで上がり、レンズの絞り連動レバーを押し上げることで絞りは開放状態に戻る。


撮影時には、絞りが絞り込まれた後にシャッターが作動し、露光後再び絞り開放となる。


画像6: 撮影(ボディ側で絞り制御しない場合)



シャッターボタンを押すと、以下の手順で露光される。

(1)ボディ側の絞り連動レバーが最下端まで下がり(※)、

(2)レンズの絞り連動レバーがスプリングの力でそれを追いかけ、設定絞り値(例えばF16)まで絞り込まれ、

(3)同時にミラーが上がり、

(4)シャッターが作動してフィルム(撮像素子)に露光され、

(5)ミラーが下がると同時に、

(6)ボディ側の絞り連動レバーが最上端まで上がり、レンズの絞り連動レバーを押し上げることで絞りが元の開放状態に戻る。

(※:ボディ側で絞り制御しない場合のみ)
カメラ側からの絞りをコントロールする場合はこちらを参照


 

●AEと絞りのコントロール方法の変遷

初期のニコン機ではAE(自動露出)機能が搭載されておらず、露出計(外付け/内蔵)の指針を見ながら、シャッター速度リングや絞りリングを手で回して適正露出となる組み合わせを決定していた。この頃の自動絞り機構は単純で前述の画像4(カメラへのレンズのセット)と画像6(撮影)のような動作をする。

しかし、カメラ側で絞りをコントロールするシャッター速度優先AEでは、撮影者がシャッター速度を先に決め、適正となる絞りをカメラが自動的に決定しレンズの絞りを(カメラボディから)作動させる必要がある。

ニコンのAEカメラとして昭和47(1972)年の「Nikomat EL」に搭載された絞り優先AEの場合は、撮影者がレンズの絞りリングを回した後にカメラが電子制御によってシャッター速度をコントロールできるので機構的にはシンプルであった。

一方、絞り優先AEに比べて絞りを(カメラボディ側から)機械的に作動させる必要があるシャッター速度優先AEは難しかったようで、昭和48(1973)年3月発売の「Nikon F2 フォトミック S」では、「EEコントロールユニット」を増設してレンズの絞りリングを直接サーボモーターで回すという力技(ちからわざ)でシャッター速度優先AEを実現したが、これはいかにも苦肉の策、というか洗練されたやり方ではなかった。(下の画像は、Nikon F2 フォトミックAS用EEコントロールユニット)
 

EEコントロールユニット DS-12 DS-12+モータードライブMD-2+250フィルムバックMF-1
    EEコントロールユニットにある「EEカプラー」にレンズ側の(f)EEコントロールユニット用連動ガイドを挟み込み、内蔵モーターで絞りリングを力技で回す。

尚、この連動ガイドは後に「(k)最小絞り設定警告用ガイド」として利用されている。


ボディ側から絞りをコントロールできる第二の方法としては、ボディ側の「(K)絞り連動レバー」を最上端から最下端までの間の適正な(絞りに対応する)位置に移動することで、レンズの「(a)絞り連動レバー」を動かして(追随させて)絞りを作動させることである。


画像7: ボディ側の絞り連動レバーによる絞り作動(イメージ)

ボディ側の絞り連動レバーがAEで決定された絞り値に対応する位置に移動(白矢印)すると、レンズの絞り連動レバーがスプリングの力でそれを追いかけて絞りが絞り込まれる。(但し実際に絞り込まれるのはシャッターを切って露光される直前である。)

注)この画像はイメージ。絞りの制御範囲はF1.2〜F32(F45?)、制御ステップは1/3EV以下の単位で行なわれる。(つまり、もっと多段階制御となる)

ボディ側の絞り連動レバーの上下ストローク長は約9mmあり、他社と比べ長い方である。この9mmに絞りF1.0(AV値0)からF32(AV10)までの10段を割り当てるとすると、絞り1段(1AV)当たり約0.9mm、絞り1/2段なら0.45mm、絞り1/3段なら0.3mm単位の制御が必要となる。(誤差除く)

  AV0:F1.0
  AV1:F1.4
  AV2:F2
  AV3:F2.8
  AV4:F4
  AV5:F5.6
  AV6:F8
  AV7:F11
  AV8:F16
  AV9:F22
  AV10:F32

当時の位置決め精度は1/100mm(参考:カメラではないが現在の技術ではナノオーダーレベル)と思われ、例えば、「AF-I Nikkor ED 300mm f2.8D IF」の修理マニュアルでは、絞りリングを回転させたときの絞り径の調整値として、

絞り値 内接円直径 許容範囲(公差)
F2.8 35.92mm 37.16〜34.76mm
F4 24.68mm 26.66〜22.85mm
F5.6 17.42mm 19.55〜15.52mm
F8 12.31mm 13.82〜10.97mm
F11 8.71mm 10.15〜7.46mm
F16 6.16mm 7.18〜5.28mm
F22 4.35mm 5.08〜3.73mm

となっている。(許容範囲は結構大きく感じられる。)


この方式の前提条件は、ボディ側の絞り連動レバーの動き(位置)とレンズの絞り込み状態が1:1に対応していなければならない。
(例えばボディ側の絞り連動レバーがF8の位置にある時、レンズ絞りもF8に絞られなければならない)

しかし、昭和52(1977)年から発売されたAiニッコールでは、ボディ側絞り値の変化(ボディ側の絞り連動レバーの変化)に対してレンズ側絞り連動レバーがリニアに比例しておらず、ボディ側から正確な絞りコントロールを行なうには昭和55(1980)年に発売されたAi-Sレンズの登場を待たなければならなかった。(●Ai-S Nikkorレンズ参照)

そしてAi-Sレンズ発売から2年後の昭和57(1982)年5月に「Nikon FG」で初めてプログラムAE絞り優先AEが搭載され、さらに翌年の昭和58(1983)年9月に発売された「Nikon FA」ではプログラムAE絞り優先AEに加えてニコン初のシャッター速度優先AEと世界初のマルチパターン測光が採用された。
(但し、SタイプではないAiレンズでも露出精度を確保する為、「●瞬間絞り込み測光」を採用している)

 

●AEの種類

絞り優先AE 撮影者が絞りを先に決めておけば、カメラが適正なシャッター速度を自動的に決定(電子制御)する方式
シャッター速度優先AE 撮影者がシャッター速度を先に決めておけば、カメラが適正な絞りを自動的に決定しレンズの絞りを制御する方式
プログラムAE 撮影状況をカメラが自動的に判断して、適正な絞りとシャッター速度を決定する方式


 

●カメラ側からの絞りのコントロール

シャッター速度優先AE、プログラムAE、オートモード等や、マニュアルモード時のカメラのコマンドダイアルによる絞り設定時には、画像7のようにボディ側の絞り連動レバーがAE(やマニュアル操作)で決定された絞り値に対応する位置に移動する。(実際に絞り込まれるのはシャッターを切って露光される直前である)

 注)レンズの絞りをレンズ内ステッピングモーターで駆動する電磁絞り/PC-Eレンズ/Eタイプレンズは除く。

画像8: 絞りリングの回転と絞り羽根の変化
レンズの絞りは最小値にセットしておく。(この例ではF32)

こうすることで、ボディ側の絞り連動レバーが上下移動することにより、レンズの絞り連動レバーがスプリングの力で追随して開放〜最小絞り値まで自在に変えることができるようになる。

もしレンズ絞りを最小絞りにせず例えばF8などになっていると、ボディ側の絞り連動レバーの上下移動でコントロールできるのは開放〜F8までの範囲となってしまう。このような誤操作を避ける為に最小絞り警告機能がある。((M)最小絞り設定警告レバー●最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー参照)

画像9: 露出(絞り)の決定
カメラが適正な絞り値を決定する。(この例ではF5.6)

マニュアルモード時にはサブコマンドダイヤルを回して適当な絞りを選択する。

画像10: 撮影

スロー再生すると。。



実際はレンズの絞り連動レバーはスプリングで瞬時に下がる。
シャッターボタンを押すと、以下の手順で露光される。

(1)ボディ側の絞り連動レバーが画像9で決定された絞り値(F5.6)に対応する位置まで下がり

(2)レンズの絞り連動レバーがスプリングの力でそれを追いかけ、設定絞り値(F5.6)まで絞り込まれ、

(3)同時にミラーが上がり、

(4)シャッターが作動してフィルム(撮像素子)に露光され、

(5)ミラーが下がると同時に、

(6)ボディ側の絞り連動レバーが最上端まで上がり、レンズの絞り連動レバーを押し上げることで絞りが元の開放状態に戻る。
 

ボディ側の「(K)絞り連動レバー」は、機種、或いはAE化の前と後で形状が変わっている(規格化されていない)。

画像11: ボディ側「(K)絞り連動レバー」の形状(左側:旧形状、右側:新形状)
画像左側の「(K)絞り連動レバー」は、「Nikon F」や「Nikon F2」など初期のフィルム一眼レフの旧来型形状でフラットであるが、画像右側はその後の一眼レフで採用されている新形状で、上部が手前側に折れ曲がっている。横幅も少々広くなっているような気もする。。

おそらく、1977年のAiニッコールとほぼ同時に発売されたAi方式の「Nikomat FT3」から右側の形状になっている。その前後の機能面の推移をみると、

1977年: Aiニッコール、「フォトミックA/AS」「Nikomat FT3」「EL2」「EM」発売
1980年: Ai-Sレンズ、「Nikon F3」発売
1982年: 「Nikon FG」でプログラムAE搭載、ボディからレンズ絞りの制御開始
1983年: 「Nikon FA」でシャッター速度優先AE搭載、ボディからレンズ絞りの制御

のように、ボディ側からのレンズ側絞り制御が開始された時期でもあり、その精度向上の為にレンズ側(a)絞り連動レバーが安定的に接触するような形状に変えたと思われる。


規格化されていないことによる影響として、当サイト訪問者様からのメールによれば、旧来の「Nikkor-S・C Auto 55mm F1.2」などの大口径レンズでフォーカスを近距離から遠距離方向に合わせると、新形状のボディではレンズ後群後玉の筐体枠がこのレバーに接触するらしい。旧来型形状のF2などでは問題ない。

メールで情報を頂きました当サイト訪問者様、ありがとうございます。

ボディ側絞り連動レバーとレンズ後玉保持枠の干渉参照



 

《 プチコラム 》 C-PL(サーキュラーPL:円偏光PL)フィルターには裏表の向きがある

被写体の反射光を除去し、色彩のコントラストを強調する偏光フィルターには、C-PL(サーキュラーPL)フィルターと、通常のPLフィルターの2種類があり、AF(オートフォーカス)機にはC-PL(サーキュラーPL)フィルターを使用すべきとなっている。

理由としては、AF機ではミラーの一部をハーフミラー化して入射光の中心部の一部を透過させ、サブミラーでAFセンサーに光を導いており、通常のPLフィルターはハーフミラーや位相差AFセンサーの作動に影響があると言われている。

ところで、C-PLフィルターには裏表の向きがあることをご存知だろうか。(通常のPLフィルターには裏表は無い)

フィルターをレンズに装着する前に手に持ったフィルターをクルクル回して反射除去効果を調べることはよく行なうが、フィルターを逆向き(表側=被写体側)から見て回しても全く効果がなく、必ずフィルターのレンズ装着側(裏側=オスネジを切ってある側)から覗かなければならない。


ネット上でよく見られる「液晶モニター(偏光している)にフィルターをかざして劣化度合いを調べる」場合も同様だが、この事に触れているサイトはほぼ皆無である。逆向きに見て「効果が見られない」=「劣化している」→ 買い替えてしまった( =自分(^^; )とならないように注意してね。


尚、通常の(C-PLではない)PLフィルターにはこのような向き(裏表)は無く、どちらから覗いても上記の効果が現れる。

この理由は、C-PLフィルターは「直線偏光フィルム」の背面に「1/4位相差フィルム(1/4波長板)」を貼り合わせており、光が「直線偏光フィルム」側、つまり被写体側から入ることで「円偏光」効果が得られることにある。

被写体側











レンズ側
(Kenkoメーカーサイトより)


C-PL(PL)フィルターは、使用頻度や保管状況によって異なるが、メーカーサイトでは7〜8年で偏光膜が黄色っぽく変色することがあり、白い紙の上に置いてニュートラルグレーならOKとのこと。因みに私が持っている古〜〜〜〜〜〜〜〜〜い(ン十年以上前?)PLフィルターでは、透過光が薄い青紫に変色しているが、C-PLではないにも関わらずAF作動に特に問題はないようだ。勿論、レンズ透過光が暗くなる(露出倍数1.5〜2倍強)ので、AFが合い辛くなるのは当然だが。。





●露出計連動爪と開放F値設定




露出計連動爪(カニ爪) 露出計連動ピン


昭和34(1959)年6月発売の「Nikon F」は、製品コンセプトとしてシャッター速度と絞りの両方に完全に連動する露出計を着脱可能の外部測光式(ニコンメーター1型や、3年後に発売されるファインダー交換式のフォトミックファインダー)とした。 そのためにレンズの絞り環をマウント側におき、露出計と連動させるための「(c)露出計連動爪(カニ爪)」を付けたのが始まりで、どのレンズでもF5.6の位置に付けられ、これを使って絞りの絶対値(レンズの絞り値そのもの)を露出計に伝えることができた。


ニコンメーター1型 Nikon F フォトミック

しかし、その後の測光方式の進展のなかで「TTL開放測光方式」(実際にレンズを通った光をボディ内測光素子で測光する)が生まれ、これを「カニの爪」で実現するには装着レンズの開放F値をボディ(露出計)に伝える必要があった。(●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係参照)
ニコン初のTTL開放測光式一眼レフである「Nikomat FT」(昭和40(1965)年7月)ではボディに開放F値補正目盛りが付けられており、レンズ交換ごとにその開放F値を設定しなければならなかった。この設定を忘れてしまうと当然適正露出は得られず、不良写真を量産してしまうことになる。
そこで、その2年後の昭和42(1967)年10月に発売された「Nikomat FTN」や、翌年の昭和43(1968)年9月「Nikon フォトミックFTN」では、開放F値半自動設定(通称「ガチャガチャ方式」)によって簡単に設定可能となった。

Nikomat FT Nikomat FTN Nikon フォトミックFTN

 

開放F値半自動設定(通称「ガチャガチャ方式」)の手順

   (1)レンズの絞りをF5.6に合わせる
   (2)レンズの(c)露出計連動爪をボディの(L)露出計連動ピンに合わせて装着する
   (3)レンズの最小絞りまで左一杯に回す(これで現在カメラにセットされている開放F値がリセットされる)
   (4)続いて今度は右一杯に回す(この回転角度から装着レンズ開放F値がボディ側に伝えられる)


しかし、昭和52(1977)年に開放F値自動補正方式であるAiレンズが発売された為、昭和51(1976)年10月発売の「ikon F2 フォトミック SB」が(L)露出計連動ピンのある最後のカメラとなった。 尚、昭和61(1986)年4月発売のAF搭載機「Nikon F-501」(CPU内蔵方式)と同時発売のCPU内蔵AFニッコールレンズ群(Ai AF Nikkor 50mm F1.8Sなど)以降は、この連動爪はなくなっている。 (参考:●露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧


レンズ側露出計連動爪に対応する露出計連動ピンのあるボディ一覧>

カメラ名 発売年月
 Nikon F フォトミック   昭和37(1962)年4月 
 Nikon F フォトミックT   昭和40(1965)年9月 
 Nikon F フォトミックTN   昭和42(1967)年4月 
 Nikon フォトミックFTN   昭和43(1968)年9月 
 Nikon F2 フォトミック   昭和46(1971)年9月 
 Nikon F2 フォトミック S   昭和48(1973)年3月 
 Nikon F2 フォトミック SB   昭和51(1976)年10月 
 NIKKOREX F(ニコレックス F)   昭和37(1962)年6月 
 Nikomat FT   昭和40(1965)年7月 
 Nikomat FTN   昭和42(1967)年10月 
 Nikomat FT2   昭和50(1975)年3月 
 Nikomat EL   昭和47(1972)年12月 
 Nikomat ELW   昭和51(1976)年2月 


Ai方式以前の、この 露出計連動爪(カニ爪)が付いているレンズは、 「オートニッコール」、「オールドニッコール」、「従来レンズ」、「従来(非Ai)レンズ」、 「非Aiの旧ニッコール(カニ爪方式)」などと呼ばれる。

● そしてこれらのレンズは一部の機種を除きデジタル一眼レフには物理的に装着できない。 (●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ 参照)

    よって、デジタル一眼レフ等で古いニッコールレンズを楽しみたいなら、最低限Ai-Sタイプのレンズを選択すべきである。

● 後のAi方式レンズの一部にも残されている (c)露出計連動爪(カニ爪)は、 Ai方式以前の露出計内蔵フィルムカメラを使用する場合にのみ必要なものであり、Ai方式のカメラのみで使用する場合は不要である。(メーカーにて無料で連動爪の取り外し依頼可能)

Ai方式以前の露出計内蔵カメラに AFレンズを使用(Gタイプレンズは使用不可)する場合は絞り込み測光となるが、 メーカーの連動爪の取り付け改造により開放測光で使用できる。(ニコンの修理サービス拠点で対応、改造費 ¥2,000)
         
当サイト訪問者様からメールで御指摘がありました。現在はメーカーでは改造対応していません。当サイト作成初期の頃の情報であり、更新し忘れていましたことをお詫びいたします。尚、同メールによる情報では、(有)フォト工房キートスにて連動爪取り付け改造を受け付けているとのことです。情報ありがとうございます。(2020/01/25)




●Ai方式



昭和52(1977)年に商品化された、開放F値自動補正方式(AI = Automatic Maximum Aperture Indexing 方式)。
 (尚、Ai方式の改良版として、昭和55(1980)年からAi-S方式に切り替わっている。)

Ai方式とはレンズの絞り値をカメラボディに伝える為の機構で、旧来の露出計連動爪(カニ爪)方式レンズ装着時の面倒な操作性を改善するために開発された。

レンズを装着する度にそのレンズの開放F値(明るさ)をボディ内の補正目盛りにセットしたり、絞りリングを左右に回す「ガチャガチャ方式」など、手間の掛かる手順なしに、レンズ装着のみで露出計と連動する。(●露出計連動爪と開放F値設定 参照)

レンズ絞り環後端部に設けられた「(d)露出計連動ガイド」が、ボディ側の(B)露出計連動レバーを介してレンズ開放絞りから何段絞ったか(絞り値相対値)をボディ内蔵露出計に伝える方式である。ボディ側の(B)露出計連動レバー内部には可変抵抗が内蔵されており、回転角を電気抵抗値に変換して露出計に入力される。つまり内蔵露出計には常に開放絞り(例えばF2.8)の明るさの光が入光しており、絞りを1段絞る(F4)と、1段絞ったという情報がこの(d)露出計連動ガイド→ボディ側の(B)露出計連動レバーに伝えられる(絞り値相対値通知方式)。尚、この(d)露出計連動ガイドだけでは開放F値は通知できない(後述)。

このAi方式のレンズで露出計を作動させるには、Ai方式に対応したボディ (B)露出計連動レバーを持つカメラ)を使わなければならない。
B)露出計連動レバーを持つカメラはこちらの「Ai連動」可のボディのみ。)

但し、互換性のためにカニの爪(ブタ鼻タイプ)が残されているので、「Nikon F」、「Nikon F2」、「Nikomat FT/FTN/FT2」などでも露出計が連動する。(露出計連動爪と開放F値設定参照)


(1) 露出計連動ガイドの追加

レンズに追加された露出計連動ガイド ボディ側の(B)露出計連動レバー
この爪に接触し、円周方向に回転する。



● どの交換レンズでも絞り環の上で開放F値から測ってほぼ一定の位置にガイドの端面がくる。

<開放F値に対応する露出計連動ガイド位置> (注:以下の画像はAi-Sニッコール)



黄色の文字はそのレンズの開放F値。黄色の線はそのレンズの露出計連動ガイド位置。
1段当たりの角度は実測7.5度。開放F値の位置から回転角で35度だけ絞り込む側に寄った位置にガイド端がくる。

注)上図は開放F値F2.8のAi-Sタイプ。また、F1.4の位置だけは本来の位置から少しずれている。(周辺減光補正の為か?)

<開放F値と露出計連動ガイド位置の例>



露出計連動ガイドの長さは35mmである。(=フォトミックAファインダー側の(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)がレンズ側の露出計連動ガイドの使わない側の端面に落ち込まないようにするため)

● 昭和52(1977)年に商品化され、当年41本のAiレンズが発売された。(Ai テレコンバーター2本含む)
    Ai方式対応のカメラは昭和52(1977)年3月発売の「Nikon F2 フォトミックA」から最初である。




(2) 開放F値連動ガイドの追加

前述の通り、 レンズ絞り環後端部に設けられた「(d)露出計連動ガイド」だけでは装着レンズの開放F値をカメラボディに伝えることができないので、新たに開放F値連動ガイドが追加された。ボディ側の(I)開放F値連動レバーに連動し、開放F値を受け取って自動露出やファインダー内表示、マルチパターン測光などに用いられる。(Nikon FG、FA、F4など)

レンズに追加された開放F値連動ガイド



● この開放F値連動ガイドの受け部であるボディ側の「(I)開放F値連動レバー」は暫くの間実装されていなかった。

    ( ●開放F値連動レバー/開放F値連動ガイド 参照)


(3) レンズ側の絞り表示が二重になり、マウント側のファインダー内表示用の小文字の絞り値が追加された。
     (「F2 フォトミックA」などの後付けファインダーでは絞り環の数字をファインダー内で直読するための光学系が新設されている) 

(4) 互換性のためにカニの爪は残されているが、上記の表示用絞り値がよく見えるように穴の空いたタイプ(ブタ鼻)となった。

 いわゆる「ブタの鼻」と言われるタイプ。。

尚、昭和61(1986)年4月発売のAF搭載機「Nikon F-501」(CPU内蔵方式)と同時発売のCPU内蔵AFニッコールレンズ群(Ai AF Nikkor 50mm F1.8Sなど)以降は、この連動爪は廃止されている。

(5) かつて販売されていた「EEコントロールユニット(サーボモーターによる絞り制御)」に連動させる為の(f)EEコントロールユニット用連動ガイドを設けた。(このガイドは後に(k)最小絞り設定警告用ガイドとして利用されている)

最小絞り設定警告用ガイド <参考>EEコントロールユニット DS-12
 
 
(6)レンズマウント面と絞りリング後部(スカート部)のフラット化

非Aiのオールドニッコールレンズのマウント部 Aiニッコールレンズのマウント部

初期のオールドニッコールレンズ(非Ai)の絞りリング後部(スカート部)は、ボディ装着時にマウント接合部からの光漏れ防止(?)や防塵対策の為にマウント接合部を覆うように長くしていた、と思われるが、結果的にデジタル時代の露出計連動ガイド(所謂Aiレバー)や最小絞り警告レバーなどとの干渉、そしてボディ前面との干渉など、多くの制限が発生してしまっている。Ai化と同時にレンズマウント面と、絞りリング後部(スカート部)のフラット化が行なわれたので、この点での装着制限はなくなっている。 (物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ 参照)
 

●Ai方式レンズと非Ai方式レンズの見分け方
Ai方式レンズには全て絞りリングの縁に(d)露出計連動ガイドが付く。さらに(c)露出計連動爪は穴の開いたタイプ(ブタ鼻)になっている。


○ シリアルNo.から、そのタイプも分かるサイト。

   Nikon Lens Versions and Serial Nos
 

●Aiニッコール(純正)と改造Aiニッコールの見分け方
レンズ後部の(e)開放F値連動ガイドの有無で判断する。あればAiニッコール、なければ改造Aiニッコール。(次の項参照)
開放F値連動ガイド

 

●改造Aiニッコール
Ai方式以前のレンズ(カニ爪方式)の絞りリングを交換または切削し、(d)露出計連動ガイドの役割をする切り欠きを作り込んだレンズ。 一時期、メーカーによってこのAi改造が行われていたが現在は行なわれていない。

自分で改造することもできる。
レンズ絞りリングの一部を削り、露出計連動ガイドに相当する部分だけを残す。

この改造により、オートニッコールなどカニ爪方式の旧レンズでもAiレンズとして使用できるようになる。

純正のAiレンズ後部にある(e)開放F値連動ガイドはAi改造レンズには付いていない(上の画像参照)。 このため装着するボディによって、純正Aiレンズでは可能な多分割測光がAi改造レンズでは不可という機能上の制約がある。 ( ●開放F値連動レバー/開放F値連動ガイド 参照)

 

●Ai方式のボディと非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズの組み合わせについて
Ai方式のボディには(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)が可倒式と固定式の機種が存在する。

・ レバー固定式のボディでは、このレバーと絞りリング後部が干渉するため非Aiのオールドニッコール(従来方式)レンズは取り付けできない。
   (同じ理由でNikon FやF2時代の古いボディキャップ(BF-1より前)もこのレバーと干渉してしまうので、BF-1以降のキャップを使用すること。)

・ レバー可倒式のボディでは、このレバーを上に倒して回避させることで非Aiレンズを装着することができる。但し、露出計と連動しない為(開放測光ではなく)絞込み測光となる。

非Aiのオールドニッコールレンズのマウント部 Aiニッコールレンズのマウント部

固定式レバー     可倒式レバー
レバーを押しつぶす。。。 レバーを倒したままなら不可 レバーを跳ね上げればOK

  尚、非Aiレンズを自分でAi改造することも可能である。

  (B)露出計連動レバーの有無、可倒式/固定式のボディ一覧はこちらを参照。

  その他の制限については、物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせを参照。
 


●「 Ai方式 」のレンズ名表記
レンズ名が”Ai”で始まるレンズ。開放F値の後に”S”や”D”などが付くのは別タイプのレンズとなる。

例) Ai Nikkor 50mm F1.4  = ネイティブなAi方式のレンズ(=Aiニッコール)
Ai Nikkor 50mm F1.8S  = 最後に”S”が付いている = Ai-S方式のレンズ(=Ai-Sニッコール)
Ai AF Nikkor 24mm F2.8D  = 最後に”D”が付いている = Dタイプレンズ(距離情報伝達機能を持つ)と呼称。 (Ai-S方式でもある)
AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G  = 先頭に”Ai”がなく、最後に”G”が付いている = Gタイプレンズ(絞りリングが省略されたレンズタイプ)と呼称。 (=絞りリングがないので、当然Ai(Ai-S)方式ではない)

レンズ名の見方はこちらを参照。


 
●「 AI 」と「 Ai 」の表記の違い
メーカーサイトによれば、「 Ai 」は亀倉雄策氏のデザインした正方形のロゴマーク(デザイン上の処理)であり、その印象から「 Ai 」と誤記されやすいが、「 AI 」が正しいとのこと。尚、当サイトでは両表記が(非公式・不正確に)混在していることに留意。。
 

《 コラム 》 Ai方式 - ややこしいお話その1(^^);と補足解説

「Ai方式」「Aiタイプ」といっても多種多様のレンズがあり、「Ai方式のニッコールレンズ」というだけでは、そのレンズの種類(仕様)を確定できない。(コラム: Ai-S方式 - ややこしいお話その2も参照)

「Ai方式」とは、外観上の最大の特徴である (d)露出計連動ガイド (Ai連動レバー)というパーツが付いている、ということを示すのみであり、最初期の「Ai Nikkor 50mm F1.4」などCPU非搭載のMFレンズから、 「Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED」などCPU・手ブレ補正機構搭載のレンズまで様々な製品がある。

デジタル一眼レフの時代においては、 (d)露出計連動ガイド は 互換性維持のための単なる1パーツに過ぎない。

上記の「Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED」を例にあげると、

 ・ ボディ内モーター駆動のAFで、
 ・ 手ブレ補正機構(VR)搭載し、
 ・ 撮影距離情報を伝えられるDタイプで、
 ・ ED(特殊低分散)ガラスを採用した
 ・ Ai方式の露出計連動ガイド残してある
 ・ ズームレンズ

である。

さて、前述の「Ai Nikkor 50mm F1.4」のようにCPU非搭載のMFレンズなど、 Ai-SタイプではないネイティブのAi方式レンズは「Aiニッコール」、「非SタイプのAiニッコール」などと呼ばれ、 全てMF(マニュアルフォーカス)レンズであり、CPUも内蔵していない。 つまり露出計連動爪(カニ爪)方式の初期ニッコールレンズに露出計連動ガイド+αを追加したものである。

CPUを内蔵していない為、「Nikon F2 Photomic A」以降のAi対応フィルムカメラと、同じくAi対応の一部のハイエンドデジタル一眼レフ(※1)でのみ露出計が作動する。一部のハイエンドデジタル一眼レフで使用するには、レンズ情報手動設定機能でレンズの焦点距離と開放絞り値を設定する。Ai対応のカメラ以外では装着は可能だが露出計は作動しない。(何故ならボディ側に(B)露出計連動レバーがないから。)

(正確には、カニの爪が残されているので「Nikon F フォトミック」など 露出計連動ピンのあるボディでも露出計が使用可能ではある。)

但し。。。。後のAi-Sタイプで改良されたレンズ側絞り連動レバーの動きと絞りの段数のリニア化がされていないので、絞りのセットは(サブコマンドダイヤルを使ったボディ側からではなく)レンズ側で行なう必要があり、露出モードもレンズ側で絞りをセットするA(絞り優先オート)かM(マニュアル)のみで、P(プログラムオート)やS(シャッター速度優先オート)は使えない。

実の所、リニア化されているAi-Sタイプのレンズ使用時でも S(シャッター速度優先オート)モードやP(プログラムオート)モードが使える機種は「Nikon FA」など数機種に限られている。 これは、装着レンズがAiタイプやAi-Sタイプの混在環境において、その 区別の煩雑さと、レンズが最小絞りにセットされていない場合の警告手段がなかったことなどが理由である。 (●瞬間絞り込み測光参照)


(※1)Ai対応の一部のハイエンドデジタル一眼レフ (2013年12月1日追記)

  カメラボディ側の(B)露出計連動レバーの有無、可倒式/固定式のボディ一覧はこちらにあるが、デジタル一眼レフで(B)露出計連動レバーがあるのは一部のハイエンド機種に限られる。しかも「Nikon Df」以外の全てが固定式の連動レバーであるので、非Aiレンズ(非CPU、オールドニッコールレンズ)はレバーに干渉してしまい物理的に装着できない。(●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ参照)

 平成25(2013)年11月28日発売の「Nikon Df」がニコンデジタル一眼レフカメラとしては初めて可倒式の露出計連動レバーを採用し、非Ai方式レンズ(非CPU、カニ爪方式のオールドニッコールレンズ)が装着可能となった。(詳細はこちらを参照)




●Ai-S Nikkor レンズ



Ai方式 の改良版として昭和55(1980)年から発売され、シャッター速度AEに対応するため、主に絞り制御の適正化を行なっている。

Ai方式が商品化された当時は、「 Nikomat EL 」など絞り優先AE(レンズ側で絞りを設定、シャッター速度はカメラボディ側が自動決定)のみに対応していればよかったが、その後のシャッター速度優先AEプログラムAEなどマルチモードAEに対応するにはカメラボディ側から絞りを正確にコントロールする必要があった。

カメラボディ側から絞り値をコントロールする動作は以下の通りである。( ●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE 参照 )

(1)レンズを装着するとボディ側の(K)絞り連動レバー(最上端にある)がレンズ側の(a)絞り連動レバーを押し上げ、絞りを開放状態にする。(レンズ側は最小絞りにセットしておく)

(2)カメラボディ側でAEを作動させ、測光し、適切な絞り値(例えばF5.6)が決定される。

(3)次にシャッターボタンを押すとボディ側の(K)絞り連動レバーがF5.6の位置まで下がり、押し上げられていたレンズ側の(a)絞り連動レバーがスプリングの力でこれを追いかけ、あらかじめ設定された絞り位置(F5.6の位置)で停止する。

ボディ側の絞り連動レバーに追随するレンズ側絞り連動レバー スロー再生すると。。。
●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE 参照 ) (実際には、連動レバーはスプリングで瞬時に追随する)

しかしAiレンズではボディ側絞り値の変化(ボディ側の絞り連動レバーのストローク)に対して、レンズ側絞り連動レバーの動き(ストローク)がリニアに比例しておらず、多くの場合、開放から2段くらい絞ったところで連動レバーのストローク(上下ストローク長は最大約9mm)の半分以上を費やし、小絞り側ではレバーの動きが非常に小さいものになっている。

例えばボディ側で絞りをF11にセットし、 ボディ側の(K)絞り連動レバーがF11の位置まで下がったとしても、実際にレンズ側で正確にF11に絞り込まれるかは保証できなかった。 つまり、ボディ側で設定/決定された絞り値と(絞り連動レバー経由で)実際に絞り込まれる絞り値の間に誤差が発生してしまう。

(その為、「Nikon FG」等ではシャッターレリーズ後に絞りが絞り込まれた時点で再測光してシャッター速度を再調整している → ●瞬間絞り込み測光

この対策として、昭和55(1980)年から発売されたAi-Sレンズでは、レンズ側絞り連動レバーの動きを絞りの段数にほぼ比例(リニア化)するようにした。


図1: Aiレンズの場合(イメージ)
    図2: Ai-Sレンズの場合(イメージ)


(図1のAiレンズでは、リニアに変化するボディ側の絞り連動レバーに対してレンズ側絞り連動レバーのピッチが比例していない。)

このリニア化は、シャッター速度優先AEやプログラムAEなど、ボディ側から絞りを制御する場合に有効であり、絞り優先AEの場合はレンズ側で絞りを設定するので、あまり意味はない。。。のだが、その後カメラのサブコマンドダイヤルで絞り値を設定できるようになるとこのリニア化が求められる。

さらに、Ai方式レンズに加えて、焦点距離に関する情報((j)焦点距離識別リッジ)、Sタイプレンズの識別情報((g)レンズタイプ識別ノッチ)などが付加された。

焦点距離識別リッジ レンズタイプ識別ノッチ
焦点距離識別リッジ 焦点距離が135mm以上のレンズを識別して、プログラムAEでは手ブレを防ぐために高速プログラムに切り替える。
レンズタイプ識別ノッチ AiレンズとAi-Sレンズの区別用。ボディ側の(E)レンズ識別ピンに対応する。使用されているボディはF4のみと思われる。


もう一点、レンズのピントリングの回転角とピントの移動量の関係を見直し、「回転角度:ピント移動量」を可能な限り統一しているらしい。

初期のAi-Sレンズには互換性のためにカニの爪(ブタ鼻)が残されていたが、昭和61(1986)年4月発売のAF搭載機「Nikon F-501」(CPU内蔵方式)と同時発売のCPU内蔵AFニッコールレンズ群(Ai AF Nikkor 50mm F1.8Sなど)以降は、爪は廃止されている。

 

●Sタイプレンズと非Sタイプレンズの見分け方
○ Sタイプレンズでは絞り環の最小絞り値が、絞り目盛り/ファインダー内表示用絞り目盛りともにオレンジ色に着色されている。
  但し、初期のAi-Sレンズの一部では、オレンジ色ではなく黄色に着色されているものもあるらしい。
  尚、非Aiレンズ(右下の画像)のファインダー内表示用絞り目盛りは白色である。
  

Ai-Sレンズの絞り環 Aiレンズの絞り環


○ シリアルNo.から、そのタイプも分かるサイト。

   Nikon Lens Versions and Serial Nos
 


●「 Ai-S方式 」のレンズ名表記
レンズ名が”Ai”で始まり、F値の後に”S”や”D”が付く。

例) Ai Nikkor 50mm F1.8S  = F値の後に”S”が付いている = Ai-S方式のレンズ。Ai-Sニッコール、Aiニッコール(Sタイプ)などと呼称
Ai AF Nikkor 24mm F2.8D  = F値の後に”D”が付いている = Dタイプレンズ(距離情報伝達機能を持つ)と呼称。(= Ai-S方式でもある)

 
●「 Ai-S方式 」のレンズの呼び方
一般にAi-S方式のレンズは、「Ai-Sニッコール」「Aiニッコール(Sタイプ)」などと呼ばれる。頭に”非CPUの”と付ける場合もある。
対してAi方式のレンズは、「Aiニッコール」「Aiニッコール(非Sタイプ)」などと呼ばれる。
 

《 コラム 》 Ai-S方式 - ややこしいお話その2(^^);

「Ai-Sタイプ」といっても多種多様のレンズがあり、「Ai-Sタイプのニッコールレンズ」という表現だけでは、そのレンズの種類(仕様)を確定できない。

 「Ai-Sタイプのニッコールレンズ」には、

  (1) CPUを内蔵していないMF(マニュアルフォーカス)レンズ (Ai Nikkor 50mm f/1.4S など = 「Ai-Sタイプのオールドニッコールレンズ」)
  (2) CPUを内蔵してはいるがCPU方式とは言わないF3AF用AFレンズ(Nikon F3AF、F-501、F4でのみAF使用可能)
  (3) CPU内蔵のMF(マニュアルフォーカス)レンズ (Ai-P。Ai Nikkor 45mm F2.8P など)
  (4) CPU内蔵で非DタイプのAF(オートフォーカス)レンズ (Ai AF Nikkor 50mm F1.4S など)
  (5) CPU内蔵でDタイプのAF(オートフォーカス)レンズ (Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED など)

などの種類がある。さらに(5)には、超音波モーター(AF-S)や コアレスモーター(AF-I)搭載/非搭載のレンズもある。 ( 参考: Fマウントレンズ体系図/分類

Ai/Ai-S方式のレンズが発売された頃は、「Aiニッコール」や「Ai-Sニッコール」「Aiニッコール(Sタイプ)」などと呼ばれており、 これ以前の露出計連動爪(カニ爪)方式のレンズは「オートニッコール」、「オールドニッコール」、「従来レンズ」、「従来(非Ai)レンズ」、「非Aiの旧ニッコール(カニ爪方式)」などと呼ばれて明確に区別ができた。

しかし、その後AFレンズ(同時にCPU搭載)やDタイプ(距離エンコーダー内蔵)レンズ、超音波モーター(AF-S)内蔵レンズが続々と発売され、 これら(の一部)にもAi-S方式の露出計連動ガイドが 残されてはいるが、AFレンズ以降はAi方式は互換性保持の為の単なる一パーツの扱い(レンズ名の一部に”Ai”が残されている)となり、レンズ種別は「CPU内蔵レンズ」「AFレンズ」「Dタイプレンズ」などを組み合わせて表わすこととなった。
(例:Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED = 「CPU内蔵Ai方式の手ブレ補正付きDタイプAFレンズ」)

よって、上述の(1) CPUを内蔵していないMF(マニュアルフォーカス)レンズ (Ai Nikkor 50mm f/1.4S など)のみがネイティブな(純粋な、無印の)Ai-Sレンズであり、 「Ai-Sタイプの非CPUオールドニッコールレンズ」とでも呼称すれば他のレンズタイプと区別ができるかもしれない。

ちなみに、平成13(2001)年3月から発売されたGタイプレンズは、絞りリング自体が廃止されているので当然Ai-Sタイプではなく、 (d)露出計連動ガイドは勿論、(j)焦点距離識別リッジ(g)レンズタイプ識別ノッチ)なども省略されている。勿論、前述の レンズ側絞り連動レバーの動きと絞りの段数のリニア化は当然なされている。


 
《 コラム 》 ニコンの「時間」

Ai方式が発売された1977(昭和52)年当時は一眼レフにもAE(自動露出)化の波が押し寄せていて、「ミノルタ SD」(1977年)や「キヤノンA-1」(1978年)など、絞り優先AE/シャッター速度優先AEを搭載したマルチモードAE機が発売された時期でもあった。当然ニコンでもAE機の開発が進められていたはずだが、シャッター速度優先AE実現のためには「絞り制御のリニア化」が必要であったにも関わらず、Ai方式では対応されていない。「リニア化」が行なわれたAi-S方式の発売はAi方式のたった3年後の昭和55(1980)年であり、ニコンにしては珍しく技術的予測が甘かったか?(^^);

Ai方式の企画/開発時に将来のシャッター速度優先AE実現を見越した「絞り制御のリニア化」に対応していれば、Ai方式/Ai-S方式のレンズが混在するという Fマウントの複雑化要因の一つが無くなっていたはずなのにネ。。。。

尚、ニコンのAE機は、

 ・ 昭和57(1982)年5月、「Nikon FG」にプログラムAE搭載
 ・ 昭和58(1983)年9月、「Nikon FA」にニコン初のシャッタースピード優先AEが搭載

された。

その後の「CPU内蔵」は1986年4月にAF化と同時に行なわれたが、C社のEFマウント(完全電子マウント)は翌1987年3月に発売なのでニコンが1年先行してはいる。しかし、その後のニコンの超音波モーター搭載(AF-S)は1996年11月、絞りリングの省略(Gタイプ)は2001年3月、電磁駆動絞りは2008年2月にPC-Eレンズ発売、と実にゆったり(?)とした「時間」経過が如何にもニコンらしい。

図1: Fマウント関連の主な機能と時期
連動爪方式 1959年6月
(18年)
Ai方式 1977年3月
(3年)
Ai-S方式 1980年2月
(6年)
AF化+CPU内蔵 1986年4月
(10年)
AF-S 1996年11月
(4年)
VR 2000年11月
(1年)
Gタイプレンズ 2001年3月
(7年)
電磁絞り(PC-E) 2008年2月
(5年)
Eタイプレンズ 2013年5月
()内は経過年


 
《 コラム 》 C社のマウント「変遷」

昭和34(1959)年6月、Nikon Fから始まった「Fマウント」に対し、キヤノンの一眼レフ用マウントはどの様に変遷してきたのだろうか。

ニコンのバヨネットマウントに対し、キヤノンはスピゴットマウントを採用していた(EFマウント前)。

      ※) スピゴットマウント:レンズ本体は回転させず、別体のリング(スピゴット)でレンズを固定する。

以下に、キヤノンの一眼レフに採用しているレンズマウントに関して詳しい。

レンズマウント物語(第2話):キヤノンの苦悩

このサイト情報をベースに、キヤノンのマウントに関してまとめてみた。


Rマウント 1959(昭和34)年5月〜 レンズ内に自動絞りの駆動スプリングを備えた(スーパーキヤノマチック)。
・ レンズ装着時にボディが巻き上げ前か後かで自動絞りが動かないことがある。
・ 初代のキヤノンフレックス、後継のキヤノンフレックスR2000とRP、そして次のRMに採用
・ マウントの形状は後のFL・FDマウントと同じであるが、機構が異なるためスーパーキヤノマチックレンズの自動絞りは作動しない。
FLマウント 1964(昭和39)年4月〜 キヤノンFXからレンズを一新。自動絞りの駆動力はボディ側から供給することにした。
設定絞り値をボディに伝える手段がなく、絞り込み測光となる。開放測光不可。
FDマウント 1971(昭和46)年3月〜 TTL開放測光用に絞りの連動レバーとレンズの開放Fナンバーを伝えるピンを追加。
ボディ側からも絞り値を設定できる=シャッター優先AE、プログラムAEの搭載を見越しての布石

1971年、キヤノンF-1と共に登場(F-1ではサーボEEファインダーでボディ側からの絞り制御)
1973年のキヤノンEFのシャッター優先AE
1976年のAE-1で電磁的絞り制御
1978年のA-1でプログラムAEを含むマルチモードAE
(ニューFDレンズ) 1979(昭和54)年〜 スピゴットマウントの呪縛:
 レンズの着脱に「手が3本要る」。つまりボディを持つ手、レンズを持つ手、そして締め付けリングを回転するための3本目の手が必要になる。1979年に至ってキヤノンは「ニューFDレンズ」を発売し、この「手が3本」問題を解決した。
EFマウント 1987(昭和62)年3月〜 EOSシリーズの最初の機種である「EOS650/620」の発売を機にレンズマウントを一新。
・ 大口径のバヨネットマウント54mm、フランジバック44mm、完全電子マウント。
・ このEFマウントはそれまでのR、FL、FDマウントとの互換性は全くない。
・ 後のAPS-C 一眼レフにも装着可、APS-Cミラーレス、フルサイズミラーレスにアダプター経由で装着可。
EF-Sマウント 2003(平成15)年9月〜 APS-C 一眼レフ用。「EOS Kiss Digital」で採用。
・ EFレンズよりバックフォーカスを短縮化、イメージサークル小型化。
フルサイズの一眼レフに誤って装着できないように、レンズ後端にプロテクター付加。
・ EF-Sレンズ装着可能カメラにはEFレンズの装着も可能。
・ EF-SレンズはAPS-Cミラーレス、フルサイズミラーレスにアダプター経由で装着可。
・ EF-Sレンズはフルサイズの一眼レフでは使用不可。
EF-Mマウント 2012(平成24)年9月 APS-Cサイズミラーレスカメラ「EOS M」専用。
EF-Mレンズは「EOS M」以外では使用不可。
・ 「EOS M」にはEF-EOS Mマウントアタプターを介してEFマウントのレンズ取り付け可能
RFマウント 2018(平成30)年9月〜 フルサイズ ミラーレス「Canon R システム」専用の新しいレンズマウント。
・ EFマウントの大口径54mmを継承、ショートフランジバック20mm、新マウント通信システム、電子接点数を12点に増加。
・ 専用レンズとして、フルサイズの「RFレンズ」とAPS-Cサイズの「RF-Sレンズ」がある。
・ EFレンズをEF-EOS Rマウントアダプター経由で「EOS Rシリーズ」で使用可

どうだろうか。。キヤノンは新たなカメラシステムに対し新規格のマウントを作ることに何の躊躇もないように感じられる。特にEFマウント前後では全く互換性がない。
EFレンズはEFマウント以降の新たなカメラシステム/マウントでもマウントアダプター経由で装着できるが、その後のEF-Sマウント、EF-Mマウント、RFマウントは、カメラとレンズの組み合わせに様々な制約が存在する。

Canonレンズ互換性については、メーカーサイトの

【カメラ】デジタル一眼レフカメラ・ミラーレスカメラで使用可能なレンズの種類は?

から、引用してみた。

カメラの種類 カメラ例 マウント レンズ
EFレンズ EF-Sレンズ EF-Mレンズ RFレンズ RF-Sレンズ
フルサイズ一眼レフ EOS-1Dシリーズ、EOS 5Dシリーズ EFマウント × × × ×
APS-C一眼レフ EOS 7D、90D、Kiss Xシリーズ EF-Sマウント × × ×
フルサイズミラーレス EOS R3、R5 RFマウント △ (※1) × 〇 (※1)
APS-Cミラーレス EOS R7、R10 RFマウント △ (※2) △ (※2) × 〇 (※2) 〇 (※2)
EOS Kiss M、M5、M6 EF-Mマウント × ×


  ↓  レンズの種類  フルサイズ一眼レフ  APS-C一眼レフ  APS-Cミラーレス
(EF-Mマウント)
 APS-Cミラーレス
(RFマウント)
 フルサイズミラーレス
種類 マウント 発売時の対象カメラ
EFレンズ EFマウント フルサイズ一眼レフ用 △ (※2)
EF-Sレンズ EF-Sマウント APS-C一眼レフ用 × 〇 (※2)
EF-Mレンズ EF-Mマウント EOS Mシリーズ(APS-Cミラーレス)専用 × × × ×
RFレンズ RFマウント RFマウントのフルサイズミラーレス用 × × × 〇 (※2)
RF-Sレンズ RFマウントのAPS-Cミラーレス用 × × × 〇 (※2) 〇 (※1)
〇 : そのまま装着可
△ : マウントアダプター使用で互換性あり
× : 装着不可・使用不可

(※1) 撮影画面の中央部がAPS-Cサイズ相当の画角にクロップ
(※2) レンズの焦点距離はレンズ表記の1.6倍相当になる

整理してみると、

EFマウント以降のマウント規格は
(1)EFマウント EOSシリーズ用レンズマウントを一新、大口径のバヨネットマウント54mm、フランジバック44mm、完全電子マウント
(2)EF-Sマウント APS-C 一眼レフ用。ショートバックフォーカスの為、フルサイズの一眼レフに誤って装着できないようにレンズ後端にプロテクター付加
(3)EF-Mマウント APS-Cサイズミラーレスカメラ「EOS M」専用で、他では使用できない。マウント口径47mm、フランジバック18mm
(4)RFマウント フルサイズ ミラーレス「Canon R システム」専用の新しいレンズマウントで、EFマウントの大口径54mmを継承、ショートフランジバック20mm
の4種類。

レンズは、
(1)EFレンズ フルサイズ一眼レフ用 最も互換性が高く、フルサイズ/APS-C一眼レフ、フルサイズ/APS-Cミラーレスに使用可
(2)EF-Sレンズ APS-C一眼レフ用 フルサイズ一眼レフには取り付け不可だが、APS-C一眼レフ、フルサイズ/APS-Cミラーレスに使用可
(3)EF-Mレンズ APS-Cミラーレス用 EOS Mシリーズ(APS-Cミラーレス)専用
(4)RFレンズ RFマウントのフルサイズミラーレス用 RFマウントのフルサイズ/APS-Cミラーレスにのみ使用可
(5)RF-Sレンズ RFマウントのAPS-Cミラーレス用 イメージサークルをAPS-Cに最適化。RFマウントのフルサイズ/APS-Cミラーレスにのみ使用可
の5種類。

ニコンに負けず劣らず結構複雑。。。。(笑)

特に、(2)EF-Sマウント/レンズと、(3)EF-Mマウント/レンズは特殊な位置付けとなる。

canon FDレンズ FL FD NFD 見分け方


一方、ニコンはといえば、

↓ レンズ / カメラ →  フルサイズ一眼レフ  APS-C一眼レフ  APS-Cミラーレス  フルサイズミラーレス
F FX (フルサイズ一眼レフ用)
F DX (APS-C一眼レフ用)
Z FX (フルサイズミラーレス用) × ×
Z DX (APS-Cミラーレス用) × ×
〇…互換性あり
△…アダプター使用で互換性あり
×…互換性なし

・ Fマウントレンズは、FX/DX共に互換性が高く、フルサイズ/APS-C一眼レフ、フルサイズ/APS-Cミラーレスに使用可。
・ Zマウントレンズは、フルサイズ/APS-Cミラーレスにのみ使用可。

(1) ニコンでは「Fマウント」と「Zマウント」の2種類のマウント規格のみで、各々フルサイズ/APS-Cのレンズとボディ間で相互に互換性がある。
(2) FマウントレンズはZマウントカメラ(フルサイズミラーレス、 APS-Cミラーレス)に使用可。その逆は不可。

Fマウントに関しては、基本的なマウント規格を変更せずに様々な連動パーツを後付け/建て増し方式で追加することで、カメラ本体やレンズに多くの機能が付加されてきた。それ故に複雑怪奇なマウントシステムになっているが、その反面、ユーザーが持つ古〜いレンズを「資産」として活用できる(ものもある)一方、装着不可や動作制限のあるカメラ・レンズの組み合わせが多々存在している。。

が、しかし、キヤノンの「4種類のマウント」/「5種類のレンズ」とカメラボディの組み合わせも相当複雑で、ニコンに負けていない、というかニコン以上?(笑)。

キヤノンの「割り切り」か、ニコンの「継続」か、既存ユーザーに対するスタンスの違いをどう評価するかはアナタ次第です。。

(2023年3月現在)








●CPU連動方式/CPU内蔵レンズ/電子接点



カメラボディとレンズ間の情報伝達を電気信号で行なう方式。

昭和61(1986)年4月発売のAF搭載機「Nikon F-501」からCPU内蔵方式が採用され、同時発売のAFニッコールレンズ群(Ai AF Nikkor 50mm F1.8Sなど)以降、全てのレンズにCPUが搭載されている。( 参考: Fマウントレンズ体系図/分類 )

初期のAFニッコール(発表時)には、 NEC製 uPD7554AやD7554G(4ビットシングルチップマイクロコンピュータ)、AF-Iレンズには三菱製「M37704E2FP」(16ビットシングルチップマイクロコンピュータ。ROM 16KB、RAM512KB。PROM/EPROMバージョンのいずれか)が搭載されていた。

さらに、「 AF-S DX Zoom-Nikkor 18-55mm f/3.5-5.6G ED II 」などでは、NEC製32ビットRISCマイコン「V850ES/KG2(μPD70F3732)」が搭載され、工業用途リアルタイムオペレーティングシステムであるμITRON3.0仕様準拠V850用リアルタイムOSによりコントロールされている。

ちなみにボディ側のCPUには、例えば「D70」では富士通の32bit RISC CPU(FRファミリ)、D7000には東芝製「TMP19A44FEXBG microcontroller」が搭載(=ネット情報)されており、「D70」や「D750」、「Nikon 1V3」等のOSにはレンズと同様に μITRONが採用されている。

ボディ側電子接点 レンズ側電子接点

 

● CPU連動方式のレンズ群

 以下は全てCPUを内蔵したレンズ群であり、全てのニコンデジタル一眼レフに装着でき、露出計も作動する。(但しDXタイプレンズはAPS-C判カメラとクロップ機能を持つFXハイエンド一眼レフでのみ使用可)

レンズ種別 解説
AFレンズ 92/09月以前のAFレンズ(無印AFレンズ)。CPU内蔵(但しF3AF用レンズは除く)だが、DタイプでもGタイプでもない。
AF-Sレンズ AF駆動用のSWM (超音波モーター) を内蔵したレンズ。全てCPU内蔵で、GタイプDタイプDXレンズ/非DXレンズがある。
AF-Pレンズ AF駆動用のSTM (ステッピングモーター) を内蔵したレンズ。全てCPU内蔵で、GタイプDXレンズ(2016/9現在)である。
Dタイプレンズ 撮影距離情報をカメラに伝えられる。全てCPU内蔵で、モーター内蔵/非内蔵、AF/MFの両タイプがある。(Ai-Sタイプでもある。)
Gタイプレンズ 絞りリングを省略したレンズで、撮影距離情報をカメラに伝えられる。古いフィルムカメラでは使用不能。
全てCPU内蔵、AF、非Aiタイプであり、Dタイプ(距離信号を持つ)でもある。(モーター内蔵/非内蔵の両タイプがある)
Eタイプレンズ PC-Eではない一般のレンズに電磁駆動絞りを搭載した新タイプのレンズ群。AF-SVR(手振れ補正)、非Ai、Gタイプでもある。
DXタイプレンズ APS-C判のデジタル一眼レフに特化したレンズ。 但し、フルサイズ(FXフォーマット)判のボディ(D3、D3S、D3X、D700など)に装着すれば、DXフォーマットサイズで撮影(クロップ)も可能。全てCPU内蔵で、AF、非Aiタイプ、GタイプEタイプである。(フィッシュアイレンズの1本以外は全てAF-SAF-Pを搭載している。)

 別な表現をすると、CPUを内蔵しているのは、全AFレンズ(但しF3AF用レンズは除く)、及び、 マニュアルフォーカスのDタイプレンズ(PC、PC-Eレンズ)、Ai-Pレンズである。 ( 参考: Fマウントレンズ体系図/分類 )


注) CPU搭載機種(AF対応機)には、BF-1A以降のボディキャップを使用すること。BF-1A以前(BF-1など)のボディキャップはボディの電子接点とキャップ後端部が干渉してしまうので故障の原因となる。
 

● レンズ〜ボディ間の伝達情報(推定)

  レンズ〜ボディ間の通信データの内容について挙げてみる。(以下は全て推定、推測です)

・レンズ基本情報要求コマンド(レンズ装着時や電源ON時。ボディからレンズへ)
・レンズ内CPU(MCU)バージョン
・レンズ識別番号(レンズID)(補足解説1
・レンズ種別、開放F値(Wide/Tele)、最小絞り値(絞り開放からの絞り込み段数)、焦点距離(Wide/Tele)、回転角、繰出し量
・レンズタイプ( マニュアル、 AF-S/ AF-P /AF-I / Ai-PDXDGVRE(電磁絞り)
レンズ収差情報補足解説3
レンズ側の設定絞り値通知補足解説4
・撮影時焦点距離情報(単焦点レンズは固定値、ズームレンズは可変値)
・撮影時の距離情報(DタイプGタイプEタイプ。レンズ内距離エンコーダーから)
・レンズが無限または至近の制限位置にある時の信号
・レンズ側の切換えスイッチの状態(VR-ON/OFFスイッチ、VRモードスイッチ、AF/MF切り替えスイッチ、フォーカス制限切り替えスイッチなど)
・ボディからレンズへの絞り作動指示、レンズからの作動完了シグナル(Eタイプなど、電磁絞りレンズ対応)
AF-SレンズAF-Pレンズ時、ボディからピント移動方向とその量、フォーカス開始/停止コマンド
・レンズからボディへAF作動要求(AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR などにあるAF作動ボタン)、フォーカスロック要求
VRレンズ時、レンズへの手ブレ補正指示(シャッターボタン半押し/全押し)、センタリング指令、レンズからのセンタリング完了シグナル
AF-Pレンズ時、レンズへの手ブレ補正作動指示(ボディの「光学手ブレ補正」メニューの設定値から)
AF-SAF-PVRレンズ電磁絞りレンズへの電源供給、レンズ内CPUへの電源供給、GND(グラウンド)
 

《 補足解説1 : レンズ識別番号(レンズID) 》

 装着レンズ名は、名称そのものではなく対応する識別番号(レンズID:IDentification)がレンズからボディに伝えられる。レンズIDは撮影画像のExif情報(カメラの機種、使用レンズ、撮影情報を記録)内に書き込まれ、ビューアーやフォトレタッチソフトなどで表示ができる。レンズ識別番号(レンズID)から実際のレンズ名に変換するには対応テーブルが必要である。
 

《 補足解説2 : ボディ〜レンズ間の通信 》

 CPU連動方式では、カメラボディとレンズ間の情報伝達を「シリアル通信」で行なっている。つまり電流・電圧・波形などのアナログ値によるものではなく、コンピュータ間通信で使われるデジタルデータ通信であり、1個のピンを経由してデジタルデータを1ビット単位で転送できるので、ピン(ケーブル)本数を減らすことができ、低コスト且つ高クロック化による高速データ転送が可能である。

電源ON時やレンズ装着時に、ボディ内CPUからレンズ内CPUに対しレンズ基本情報要求コマンドを送ると、レンズ側CPUからレンズ識別番号、開放F値、最小絞り値、焦点距離、レンズタイプなどの情報が送られてくる。逆にレンズのVR-ON/OFFスイッチなどが切り替わったような場合は、レンズ内CPUからボディ側にイベント発生の外部割込みが発せられ、状態変化が伝えられる。 (以上推定)

例えば、AF-S系のフォーカスコントロール(AF作動)時のボディ〜レンズ間の通信は、

(1)ボディ内位相差AFセンサーにてデフォーカス量(ピントのずれ量)とその方向(前ピン/後ピン)を検出
(2)レンズ側へ「フォーカス駆動コマンド+上記量」を送信
(3)レンズ側MPUで受信、解析
(4)超音波モーターによりフォーカス用レンズ群を駆動
(5)駆動動作完了をボディ側に通知

というような手順でデータ通信が行なわれている(と思われる)。

 今後、レンズに関連する機能が追加/変更された場合でも、ボディ内CPUのファームウェアのバージョンアップだけで対応可能となる(かもしれない)など、柔軟性が高い。( ●そして完全電子マウントへ(?) 参照 ) 

尚、F3AF用レンズのレンズ内モーター駆動については、ボディ側から2本のピン(ピン番号6、7)経由で(シリアル通信ではなく)電気的に行なっている。これが、F3AF、F-501、F4以外ではF3AF用レンズが使えない理由である。
 

《 補足解説3 : レンズ収差情報 》

 平成24(2012)年3月発売の「Nikon D4」では、 「G/Dタイプレンズ装着時に自動ゆがみ補正を[する]に設定すると、広角レンズ使用時のたる型のゆがみや望遠レンズ使用時の糸巻き型のゆがみを撮影時に補正できる」という機能が追加されている。補正の為にはレンズの歪曲収差(ディストーション)情報が必要であることから、装着レンズ内に当該データを保持している。
 :
 :
ものと思われたが。。。
 :
 :
実際には補正情報は(レンズ内ではなく)カメラ本体のファームウェア内に「ゆがみ補正データ」というデータベースで保持している。このデータの最新版はメーカーサイトからダウンロードする必要がある。自動ゆがみ補正はD/Gタイプレンズに加え、Eタイプレンズを装着した場合にも機能する。ファームウェア内に補正データを持つことで、撮影時だけではなく、撮影後の画像に対しても画像編集機能で補正が行なえるという利点がある。さらに、「View NX」や「Capture NX」などの純正RAW現像ソフトもレンズ毎の「ゆがみ補正データ」を持つ。(データ更新ファイルのダウンロード可)

装着レンズと補正データのリンク(関連付け)はレンズ識別番号(レンズID)によるが、サードパーティ製レンズの一部には純正レンズのレンズIDを流用しているものがあるらしく、誤った収差補正を行なってしまう可能性があるようだ。 

《 補足解説4 : レンズ側の設定絞り値通知 》

「レンズ側の絞りリングによる設定絞り値をボディ側に通知する」のもありそうであるが、ない。 CPU内蔵以降はボディ側で(サブコマンドダイヤルなどで)絞りの設定を行なうことを基本としているので通知自体が不要である。

レンズ側の設定絞り値を検知するためには、絞りリング内に摺動抵抗を組み込む必要がある(コストアップとなる)し、将来的に絞りリングを廃止する(G/Eタイプ)方向に進んでいるので、この絞り値通知は実装していない。

ちなみに、CPUを内蔵していないAiAi-S)レンズを使用する場合は、 レンズ側の露出計連動ガイドと連動するボディ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)経由で渡される。(レンズ情報手動設定機能のある一部機種でのみ可)

ボディ側に露出計連動レバー(Ai連動レバー)がない機種の場合は、非CPUのAi(-S)レンズの装着時にレンズ側の設定絞り値を知る手段がないので、 露出モードはM(マニュアル)でのみの使用となる。(但し、露出計は使用不可)

参考までに、絞り環のないG/Eタイプレンズ専用の1.4倍テレコンバーターである「 AF-S TELECONVERTER TC-14E III 」は、この「電子接点経由のレンズ側の設定絞り値通知」がない故に、装着レンズが最小絞り値であるか否かをレンズ → テレコンバーター → カメラ本体に伝えるすべがない((k)最小絞り設定警告用ガイドなどのメカ的連動もない)のでDタイプレンズには使用できない。(G/Eタイプは装着時に必ず最小絞りになっているのでOK)
 (参考:● 10ピンの電子接点は何に使われている?
 

● F3AF用のボディ/レンズ群

  昭和58(1983)年4月発売の「Nikon F3AF」もボディ/専用レンズ共に電子接点を持っているがCPU連動方式とは言わない。
    ( 参考: F3AF用レンズ

 

カメラボディ側電子接点端子数

 電子接点数  カメラ名(一例)
6端子  F3AF
7端子  F-501、F4、D100、D70、D70s、D50、D80、D40、D40x、D60、D90、D5100、D5200
8端子  F5、F6、F100、D1シリーズ、D2H、D2X、D200、D3シリーズ、D4シリーズ、D5、Df、D300シリーズ、D500、D600シリーズ、D700シリーズ、D800シリーズ、D3000シリーズ、D5000、D5300、D5500、D7000シリーズ
10端子 (カメラボディではないが)Teleconverter TC-14E、TC-14E II、TC-17E II、TC-20E、TC-20E II、TC-20E III など。(TC-14E IIIは8ピン)(● 10ピンの電子接点は何に使われている?
(参考)
11端子  Z7、Z6 (共にフルサイズミラーレス一眼)
 

レンズ側電子接点ピン数

 電子接点数  レンズ種別
5ピン  AFニッコールレンズ(AF-SやVRが搭載されていない最も基本的なAFレンズ)
6ピン  Nikon F3AF用ニッコールレンズ(但し、CPU連動方式とは言わない) 
7、8、10ピン  DXニッコール、AF-S(8ピン、10ピン)、AF-P(8ピン)、VR、AF-I(10ピン)、PC-E(10ピン)、Eタイプレンズ(10ピン)
 

● ボディ側電子接点パターン

接点数 接点パターン(端子番号) 電子接点画像 機種例
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
6 ×   F3AF

F3AF用レンズのレンズ内モーター駆動については、ボディ側から2本のピン経由で(シリアル通信ではなく)電流を流して電気的に直接駆動している。
7   F4、F-401X、F-501、F-601、F80D/F80S、F90X、D100、D70(s)、D50、D80、D40(x)、D60、D90、D5100、D5200
8 F5、F6、F100、D1シリーズ、D2H、D2X、D200、D3シリーズ、D4シリーズ、D5、Df、D300シリーズ、D500、D600シリーズ、D700シリーズ、D800シリーズ、D3000シリーズ、D5000、D5300、D5500、D7000シリーズ

AF-S TELECONVERTER TC-14E III

Nikon 1用マウントアダプター「FT1」
10 AF-S Teleconverter TC-20E III(レンズ装着側)

TC-14E、TC-14E II、TC-20E、TC-20E II、TC-20E III、TC-17E II

マウント爪の位置もずれている。。

テレコンバーターの特殊マウント形状とテレコン対応マウントも参照
端子番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10    
端子名 V
d
d










S
I

S
O
P
W
M
0
V
M
O
T
G
N
D
P
W
M
1
T
C
 
C
L
K
T
C
 
S
I
O
 (尚、マウント自体もGNDとなっている)   

 

● レンズ側接点(ピン)パターン

パターン
番号
接点数 接点パターン(ピン番号) 電子接点画像例 レンズ例 (発売日)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
A 10 Ai AF-I Nikkor ED 400mm F2.8D(IF)   (94/7)
Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED(99/09)
AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G (03/03)
AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G(IF) (05/12)
PC-E NIKKOR 24mm f/3.5D ED (08/02)
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II (09/11)
AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR (13/5)
Teleconverter TC-14E、TC-14E II、TC-17E II、TC-20E、TC-20E II、TC-20E III
B 8     AF-S Nikkor 50mm F1.4G (08/12)
AF-S DX Nikkor 35mm F1.8G (09/03)
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR (10/02)
AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR (16/09)
AF-S TELECONVERTER TC-14E III
C 7       AF-S DX Nikkor 18-55mm F3.5-5.6G VR (08/2)
D 6



×

      AI AF Nikkor 80mm F2.8S
AI AF Nikkor ED200mm F3.5S(IF)

F3AFと同時発売。コアレスマイクロモーター駆動ユニット内蔵、ピンが波型配列になっている。
レンズ内モーター駆動については、ボディ側から2本のピン経由で直接電気的に行なっている。
E 6



×

      画像なし。上の「AI AF Nikkor 80mm F2.8S」のピン配列と同。 TC-16(S) (AFテレコンバーター) (84/4月)

 1.6倍のテレコンバーター + CPU + ピント合わせ用マイクロモーター内蔵で、開放F値がF2以上のMFレンズを装着すればAF作動が可能になる。ボディ側から電子接点経由でAF作動信号(と電源供給)を受け、テレコン内可動レンズ群(5群5枚)を内蔵モーターで前後に全群移動して合焦させる(カメラ側からはモーター内蔵のAFレンズに見える)。F3AF、F-501、F4で使用可能。
F 5 × ×       Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F3.3-4.5S (86/4)
Ai AF NIKKOR 85mm F1.8S (88/2)
Ai AF Nikkor 24mm F2.8D (93/12)
Ai AF Nikkor 85mm F1.4D (IF)  (95/12)
Ai Nikkor 45mm F2.8P(01/07月)

初期のCPU内蔵AFニッコールで電子接点の基本形となる。
G 5 × ×      
AF TELECONVERTER

 ・ TC-16A(AS) (84/4月)

1.6倍のテレコンバーター + CPU 内蔵で、開放F値がF3.5以上のMFレンズを装着すればAF作動が可能になる。ボディ側AFカップリングの回転を受け、テレコン内可動レンズ群(5群5枚)が前後に全群移動して合焦させる(カメラ側からはAFレンズに見える)。デジタル一眼レフでは使用できないが、回路変更とピン移動でパターンFに合わせればD100やD200でAF作動可能らしい。 (「TC-16A 改造」で検索)
   ピン番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10    
  端子名 V
d
d










S
I

S
O
P
W
M
0
V
M
O
T
G
N
D
P
W
M
1
T
C
 
C
L
K
T
C
 
S
I
O
 (尚、マウント自体もGNDとなっている)  
 

● 電子接点/ピン割当て表(推定)

  電子接点の機能を推定してみた。  (参考) 「Modify The Nikon TC-16A Teleconverter」、「AF-I 300mm 修理マニュアル」

端子
(ピン番号)
ピンパターン 端子名 機能 備考
A B C D E F G
1 Vdd電源 ボディからレンズへの電源供給
2 × 外部割込み
(RW)
ボディ〜レンズ間のコマンド/データ送受信のトリガー(引き金) データ送受信開始のきっかけとなる。
3 同期クロック
(CLK)
ボディ〜レンズ間のコマンド/データ送受信の同期用クロック このクロックに同期してピン4にデータが伝送される。
4 SI/SO ボディ〜レンズ間のコマンド/データ送受信ポート ボディからのコマンド、レンズからのレスポンスデータ送受信用。
5 × × × PWM0 フォーカス変化量に対応したパルス列(レンズ内AFモーターPWM0) AF動作検出用
6 × × VMOT F3AFではレンズ内AFモーター電源供給。パワーソース 大電流電源
7 GND グラウンド(接地)
8            PWM1 フォーカス変化方向に対応したパルス列(レンズ内AFモーターPWM1) AF動作検出用
9              TC CLK 対テレコンバーター間コマンド/データ送受信の同期用クロック 10ピンの電子接点は何に。。
10              TC IN/OUT  対テレコンバーター間コマンド/データ送受信ポート


 

電子接点接続図(上記サイトから) AF-I 300mm 修理マニュアル


 
● ピンの波型配列とF3AFについて

パターンDとEはF3AF関連のレンズ/AFコンバータで、波型ピン配列となっている。その理由は不明だが、ボディ側接点の磨耗対策ではないかと思われる。ニコンの電子接点は、ボディ側が固定接点、レンズ側は稼動ピン(スプリング内蔵)となっており、レンズ脱着毎にボディ接点上をレンズ側稼動ピンが接触しながら往復することになる。よって、もしピンが直線上にあるとボディ側接点の同じ部分を往復することになり、局所的に接点磨耗が起こる率が高くなる。そこでレンズ側ピンを波型(ジグザグ)配列にすることで所謂摺動抵抗の磨耗性対策を行なっているのではないだろうか。。(電車のパンタグラフの摺板(すり板)の局所磨耗を防ぐ為に架線をジグザグに張るのと同様の考え方)

F3AF開発の頃の摺動接点は耐久面で材質や表面のメッキ強度に若干の不安があったのかもしれない。F3AFの3年後に発売されたAF機であるF-501とAFレンズ群では、これらの問題が解決され、ピンが直線状に並べることができるようになった、と思われる。(以上、全くの推定)


※1)CPUレンズの基本であるパターンF(5ピン)とF3AF専用レンズのパターンD(6ピン)の違いは、ピン番号6の有無であるが、おそらくレンズ内コアレスマイクロモーターの駆動用電源であろうか。。(F3AFは6番ピン経由で電流を流し、直接モーターを駆動する。モーター駆動用なので電圧も昇圧しているかも。。).。そしてレンズ内CPU(MPU)電源は標準の1番ピン(Vdd電源)から供給される。


メーカーサイトの情報では、

「信号接点のあるレンズ(CPUレンズ・F3AF用レンズ・AFテレコンバーター)使用上の注意:
CPU レンズ、AF-S・AF-I テレコンバーター、または、AF テレコンバーター TC-16AS を、 AF ファインダー DX-1 付きの F3AF に取り付けますと、 F3AF のメインスイッチが OFF の場合でも電流が流れ、 AF ファインダー DX-1 内の電池が消耗しますので、 この組み合わせでの使用はできません。 」

とあることからの推定である。モーター駆動用電流を流しても、所謂CPUレンズには存在しないコアレスモーターが作動するわけはなく、F3AFのAF ファインダー「DX-1」内AFセンサーがいつまでも合焦状態とならず、電流が流れっぱなしになる。。のかな?

 
● 10ピンの電子接点は何に使われている?

「 Ai AF-I Nikkor ED 400mm F2.8D(IF) 」や「 AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR 」など、AF-SやAF-Iレンズの(特に)望遠系のレンズは電子接点数が10ピンある。

対して通常のカメラボディで最大電子接点数は8ピンのみ(D3シリーズ、D4シリーズ、D5、D300シリーズ〜7000シリーズなど)であり、10ピンあるのは「 AF-S Teleconverter TC-20E III 」など、「TC-xxE」シリーズのテレコンバーター(テレコン)のみである。

電子接点数
AF-SAF-Iレンズ  テレコン カメラボディ
10 10 8

では、一部レンズやテレコンの10ピンの電子接点中、ボディにはない余分(?)なピン番号9と10は何に使われているのだろうか。



以下は、推定、または推測です。



「AF-I 300mm 修理マニュアル」の回路図によれば、9・10ピンは「TC-xxE」シリーズのテレコンとレンズ間のシリアル通信用に使われているようだ。

ピン番号9 対テレコン間同期クロック
ピン番号10 対テレコン間データ送受信ポート

AF-I 300mm 回路図

まず、テレコン特有のデータとしては「倍率(x1.4、x1.7、x2)」しか考えられない。

この倍率は絞り値や焦点距離に影響するので、例えば「焦点距離70-200mm、F2.8」のレンズに2倍(x2)のテレコンを装着してカメラボディにマウントすると、ボディ側にはテレコンの倍率を加味した「焦点距離140-400mm、F5.6」のレンズとして通知される。また、ズームレンズでの撮影時には焦点距離、実効絞り値が変化するので、これらも同様にレンズからの情報に倍率を掛けてボディに通知される。

さらに、例えばカメラの「AF微調節機能」でテレコン付きレンズを登録する場合、そのレンズ名には、テレコン種別(”x2”または”x2.0”という文字列)が付加されて別レンズとして認識される。

これらのことから以下のことが推定される。


  接点数10ピンのテレコン(例えば「TC-14E II」)付きレンズをボディに装着
    ↓
  電源ON
    ↓
  ボディからレンズに対し「レンズ基本情報要求コマンド」発行(ピン番号4:ボディ〜レンズ間のコマンド/データ送受信ポート)
    ↓
  レンズ内CPUがテレコンに対し「テレコン情報要求コマンド」発行(ピン番号10:対テレコン間コマンド/データ送受信ポート)
    ↓
  ピン番号10経由でテレコンから倍率値、種別がレンズ内CPUに返される
    ↓
  返された値(倍率)を元にレンズ側CPUが焦点距離、絞り値を計算、レンズ名にテレコン種別付加
    ↓
  その結果をピン番号4(ボディ〜レンズ間のコマンド/データ送受信ポート)経由でカメラボディに送信


では、接点数8ピンの最新テレコン(TC-14E III)の場合はどうだろうか。

関連レンズとテレコン(TC-xxEシリーズ。TC-14Eシリーズは電子接点数8と10の両商品あり)を時系列に並べると、

発売時期 商品名 電子
接点数
備考
1992年  Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)
 Ai AF-I Nikkor ED 600mm F4D(IF)
10 最初のAF-Iレンズ。最初のテレコン対応マウント
1993年  AF-I Teleconverter TC-14E 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
 AF-I Teleconverter TC-20E 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
1994年  Ai AF-I Nikkor ED 400mm F2.8D(IF)
 Ai AF-I Nikkor ED 500mm F4D(IF)
10
1996年  Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) 8 最初のAF-Sレンズ。以降、接点数10のAF-Sも発売
2001年  AI AF-S TELECONVERTER TC-14E II 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2002年  AI AF-S TELECONVERTER TC-20E II 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2004年  AI AF-S TELECONVERTER TC-17E II 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2010年  AF-S Teleconverter TC-20E III 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2014年  AF-S Teleconverter TC-14E III 8 AF-S(GおよびEタイプ)専用。AF-S(Dタイプ)、AF-Iレンズは使用不可
  (露出計連動機構:絞り連動レバー、開放F値連動ガイド、露出計連動ガイド、最小絞り設定警告用ガイド。但しAFカップリングはない。)

「TC-14E」、「TC-14E II」はAF-S(GおよびEタイプ)に加えて、物理的連動機構があるのでAF-SのDタイプとAF-I(=Dタイプ)も使用可能。
「TC-14E III」は物理的連動機構がないのでAF-S(GおよびEタイプ)専用となる。(AF-SのDタイプやAF-Iは使用不可)


電子接点数は「TC-14E II」の10ピンから「TC-14E III」では8ピンに減らされているが、8ピンでもテレコン〜レンズ間の通信は可能なのか?

これも推定だが、


 テレコン付きレンズをボディに装着
  ↓
 電源ON
  ↓
 ボディからレンズに対し「レンズ基本情報要求コマンド」発行(ピン番号4:ボディ〜レンズ間のコマンド/データ送受信ポート)
  ↓
 レンズ内CPUが「レンズ種別、開放F値、焦点距離」などをピン番号4に出力
  ↓
 このピン番号4のシリアルデータ(ボディ〜レンズ間のデータ)をテレコン内MPUがキャプチャー
  ↓
 テレコン自身の倍率を加味した焦点距離、絞りの計算値、レンズ名+テレコン種別をピン番号4経由でカメラボディに送信

という方式なら可能かもしれない。(全く根拠なし^^;)

つまり、接点数10と8の違いは、

 ・ 10ピンの場合は、レンズ内CPUがテレコン倍率付加処理を行なう。(レンズ内CPUがマスター、テレコン内CPUがスレーブ)
      = レンズ内CPUはテレコンが付けられていることを「知っている

 ・ 8ピンの場合は、テレコン内CPUが自身のテレコン倍率付加処理を行なう(バックグラウンド的動作)
      = レンズ内CPUはテレコンが付けられていることを「知らない

と思われるが、どうか。。。

ちなみに、「TC-14E III」は撮影データの焦点距離表示が正しく表示されないAF-Sレンズが相当数存在する。(TC-14E III使用説明書)
ボディ〜レンズ間のシリアルデータ(焦点距離、絞り値)のキャプチャーがうまくいかないレンズということか?。。

以上、全ては推定であり、実際はまったく違う可能性がおおいにある。。というか、かすってもいないかも。。



 

《 コラム 》 古いAi-Sレンズを電子化するタンポポチップ(Dandelion Chip)


エムユーケイカメラサービスより、タンポポチップ(Dandelion chip。ロシア製)という面白い商品が発売されている。

これは5点の電子接点が付いた電子回路内蔵の小さな後付けチップで、非CPUのAi-Sレンズ後端部に装着(接着)すると、ボディ側電子接点と導通しAFレンズ(但し手動フォーカス)またはAi-P(CPU内蔵のMFレンズ)相当に扱える。


チップの電子接点数は5ピンで、前述のレンズ側接点(ピン)パターンF、即ちAFレンズの電子接点の基本形と同一である。

チップに対し(ボディ側からの操作で)、焦点距離、開放絞り値、最小絞り値、MF/AFスイッチ、AF照合ステップ微調整のパラメータをセットすると、D40やD90などで露出計作動、絞り作動、ボディ表示パネルへの絞り値表示、手動によるオートフォーカス(?)が可能で、Exifデータにも焦点距離、開放絞り値、撮影時の絞り値が反映される。

チップのMF/AFスイッチの切り替え(ボディ側からの操作)によって「MF」にすると、カメラ側からはAi-P(CPU内蔵のMFレンズ)に見え、手動フォーカス&フォーカスエイドによるピント確認ができる。「AF」にするとカメラ側からはAFレンズ(CPU内蔵)に見え、AF作動(シャッター釦半押し)させ手動でフォーカスリングを回してファインダー内フォーカスポイントにピントを合わせるとAFの合焦音が鳴りシャッターが切れる。(手動AF?!)

ミドルレンジ以上のデジタル一眼レフではレンズ情報手動設定機能があるが、これはレンズ交換毎に設定値(レンズNo.)を切り替える必要があるのに対し、当チップ装着レンズでは不要である。

使用できるボディやレンズは限られるが、アイディアとしては非常に面白い商品であると思う。

 



●そして完全電子マウントへ(?)



さて、最新のGタイプAF-Sレンズでは絞りリングとAFカップリングが無くなり、メカ的連動機構で唯一残っているのが絞り連動レバーであったが、08年2月に発売された「PC-E NIKKOR 28mm F3.5D ED」で初めて電磁絞り(電子制御式絞り)が採用された。

このレンズはPC(パースペクティブ・コントロール)レンズという特殊な(構造上連動レバーをマウント〜絞り間で通せない)レンズであり、従来はプリセット絞りでしか使用できなかったが、電磁絞りを搭載することで自動絞りが使えるようになった。

他のレンズへの電磁絞りの搭載はどうか。

絞りの制御精度は格段にアップするとは思われるが、現行のレバー方式でも精度上は問題ないレベルにあり、高速連写時の開放から最小絞りまでの絞り駆動速度面ではレバー(スプリング)方式の方が勝っているというデータもある。

08年2月現在ではPC(パースペクティブ・コントロール)レンズという特殊な(構造上連動レバーをマウント〜絞り間で通せない)レンズへの搭載のみだが、嘗てラインナップにあった1000mmクラスの絞り慣性の大きな(絞り羽根がレンズマウントから離れている)超望遠レンズなどにリニューアル版としてレスポンス向上の目的で採用されることが予想される。(→ 18/03/30追記 参照)

ベローズや接写リングなどのエクステンションパーツ使用時や望遠レンズへのテレコンバータ装着時でも自動絞りが使えるというメリットもあるが、現状では電磁絞り対応のカメラボディが少ない。フィルムカメラはF6も含めて全滅。デジタル一眼レフは09/8月時点で、Nikon D3シリーズ、D300シリーズ、D700のみ。 (但し、下記の「18/03/30追記」参照)。

今後前記機種以外で電磁絞り対応のボディが増えてくるのだろうか?

電子接点数を見ると、PC-Eレンズは10ピン、D3・D700・D300・D300Sは8端子となっている。つまりレンズ側の10ピン全てを使用している訳ではなく、ボディ側も8端子あれば電気的には電磁絞り連動/制御できることになる。(→ 18/03/30追記 参照)

さらに絞り制御/駆動そのものはレンズ側(サーボモーター)で行なわれ、カメラ(コントローラ)側からは絞り制御コマンドを出力、レンズ側からの絞り込み完了フィードバックを含めサーボ系を構成していると思われる。つまりボディ側に新たな制御チップ(IC)を載せている訳ではなく、既存のカメラでもボディ側のファームウェアに電磁絞り制御機能を追加(バージョンアップ)すれば前記機種以外でも対応できるはず。(→ 18/03/30追記 参照)

ニコンではAF-S(超音波モーター内蔵)レンズ以外ではAF作動しないD40や、絞りリングのないGタイプレンズをリリースした前歴(?)があるだけに、 いずれは(過渡期を経て徐々に)電磁絞りレンズが主流になっていく可能性が高い。ただ、コスト面では絞り連動レバーによるメカ的連動機構のほうが(ここ暫くの間は)優れていると思われ、電磁絞りは高価格帯のレンズから採用されていくに違いない。

やがて、コストダウンが進めば低価格帯のレンズにも電磁絞り(+AF-S搭載)が搭載され、相応の本数がラインナップされると、Eタイプ専用(完全電子制御化)ボディが発売されることになるだろう・・・・・・か。


 

《 18/03/30追記 》

 その後、電磁絞り対応ボディは増え、18/3月現在、2007/11月発売のD3以降の殆どのデジタル一眼レフで使用可能となった。但し、D90、D3000は不可、他の一部のカメラではファームウェアバージョンアップが必要である。

D5100、D5200の電子接点数は7端子であるので、最低7端子あれば制御可能ということである。これらの入門機を含む多くのカメラが電磁絞りに対応したということは、当然今後発売されるカメラでも対応されることになるはず。つまり電磁絞り対応レンズが徐々に増えていくことは間違いない。 (→ Eタイプレンズが使えるカメラ

 そして。。。。。

 2013年5月31日に、電磁絞り搭載の「AF-S NIKKOR 800mmF5.6E FL ED VR」 が発売された。PC-Eのような特殊レンズではなく、一般のレンズに電磁絞りを搭載したレンズを新たに「Eタイプ」と呼称するようになった。従って、ニコンのレンズ開発ロードマップ上に電磁絞り搭載、即ち「完全電子マウント」対応レンズの開発はかなり加速化されていることだろう。

 しかし。。。。。

 困ったことに、PC-Eが使用できたD90、D3000ではEタイプレンズが使用できなくなるなど、新たな制限が生まれている。(Eタイプレンズが使えるカメラ参照)
新機能・新製品が出る毎に(少しづつ)旧製品が使えなくなる。。う〜〜〜〜〜む。。。これはデジャヴュか。。。

 さらに。。。。。

 2015年7月16日、「AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR」が発売された。DXフォーマット、広角側開放F値2.8の5倍標準ズームレンズ、DXレンズ初のナノクリスタルコートやフッ素コート、電磁絞り機構を搭載、手ブレ補正効果4.0段のVR機構、EDレンズと非球面レンズを採用している。

FX判望遠系の高級レンズのみならず、DX判の標準ズームにも電磁絞り機構を搭載し始めたのだが、希望小売価格135,000円はやはり、高級レンズか。。。。

その後も、

 2015年9月17日、「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」 発売 (税込 18万9,000円)
 2015年10月22日、FX判大口径標準ズーム「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」 発売 (税込 28万8,900円)

と、続々と発売されるが、より低価格の廉価版レンズのリリースを期待する。

 

《 コラム 》 Eタイプ専用(完全電子制御化)ボディ


2013年5月31日にEタイプレンズ「AF-S NIKKOR 800mmF5.6E FL ED VR」 が発売されて、メカ的連動機構で唯一残っていた絞り連動レバーが不要となった。(その5年前の2008年2月に電磁絞りのPC-Eレンズが発売されているが、特殊用途なので除外)

1959年6月の連動爪方式Fマウントレンズから54年(!)を要して、ようやく完全電子マウントが実現したことになる。1986年4月のAF化+CPU内蔵からでも27年。AF-S(1996年11月)から17年。因みにC社のEFマウント(完全電子マウント)は1987年3月からなので、遅れること26年^^;

     《 コラム 》 ニコンの「時間」

はたして近い将来、完全電子制御ボディが発売されるのだろうか。

かつて、ニコンでは2006年12月にD40をモーター内蔵レンズ専用機として発売した前科前歴があり、当時はネット上で賛否両論に分かれた。ボディ本体価格6万円弱、ダブルズームキット(18-55mm、55-200mm)付きで10万円前後だったが、当時発売されていた20本強のAF-S・AF-Iレンズは高価なものが多く、選択肢の少なさが一番の問題であった。(その後、現在ではD3000シリーズ、D5000シリーズがモーター内蔵レンズ専用機となっている。)

現在の状況も当時と同様で、2018年4月現在、Eタイプレンズは、

・ AF-P (FX) 1本: 70-300mm
・ AF-S (FX) 12本: 単焦点28mm,105mm・・800mm、ズーム24-70mm,70-200mm,180-400mm,200-500mm、とFisheye
・ AF-S (DX) 1本: 16-80mm

の計14本が発売されていて、本数としては少ないが、一応24mm〜500mmまで揃っている。但し、価格が高い。

もし完全電子制御ボディが発売されるとしても、「完全電子制御カメラ」であること自体がアピールポイントになるわけはなく、結局はD40と同様に「小型・軽量化、低価格」を売りにするしかないだろう。

手っ取り早いのは、D3400ベースで、DX判「小型・軽量化、低価格」+α、DX AF-S Eタイプの広角〜中望遠の廉価版ダブルズーム付きで10万円強、D3400の後継機となるD3500(?)になりそうな。。

あるいは、かつてのD40シリーズの系譜としてD4000(完全電子制御)シリーズになる、なんてことは、きっとないだろうなぁ。。

D40と同様、ニコン得意の「普及機からスタートし、徐々に商品展開していく」というのが、最もあり得るシナリオだろう。

このシナリオは、過去にも、AE商品化が1992年12月の「Nikomat EL」から、ニコン初のプログラムAE搭載が1982年5月の「Nikon FG」、シャッター速度優先AE、マルチパターン測光が1983年9月の「Nikon FA」、本格的AFが1986年4月の「F-501」からなど実例は一杯あるからね。


が、しかし。。。


Eタイプ(完全電子制御化)レンズは、ミラーレス一眼発売への布石の意味合いもありそうで、サプライズとしては、完全電子制御ボディ=Eタイプ専用ボディ販売をすっ飛ばして、完全電子制御ボディ=ミラーレス一眼の発売があるかも。。。。

(2018年4月15日)

 


●最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー



シャッター速度優先AEプログラムAEなどマルチモードAE機でボディ側から絞りをコントロールする場合、レンズが最小絞りにセットされていなければならない。何故なら、例えば最小絞り値がF22のレンズを装着して絞りを(最小絞りのF22ではなく)F8にセットした場合、ボディ側でコントロールできるのは開放絞り〜(セットした)F8までとなってしまい、レンズの絞り全域(開放絞り〜F22)のコントロールができないからである。

ここで言う「レンズが最小絞りにセットされていなければならない」とは、レンズの絞りリングを最小絞り(例えば、F22)にしておくことが必要であるという意味である。勿論、レンズをカメラボディに装着した時点で、実際の絞り羽根は開放状態(絞り羽根が絞られるのは、露出の直前)となる。

尚、絞りリングのないGレンズは常に最小絞り状態となる。(後述)

●一眼レフの基本構造と自動絞り/AE  の カメラ側からの絞りのコントロール 参照 )

誤操作防止のため最小絞りでなければ液晶表示パネルなどに警告エラーが表示されるが、最小絞りにセットされているか否かの判別方法は以下の3通りある。


      (1)CPU連動方式専用ボディ
           最小絞り設定警告レバーの形式(スライド式/押し込み式)
           最小絞り設定警告レバーのないD3400/D3500について
      (2)CPU連動方式+Ai方式併用のボディ
      (3)Ai専用ボディ


 

(1) CPU連動方式専用ボディ

ボディ側に(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)がない機種

デジタル一眼レフでは、D100/D70/D70s/D50/D80/D40/D40x/D60/D90/D3000シリーズ/D5000シリーズなど

レンズ側の(k)最小絞り設定警告用ガイド(Aiレンズにあり、どのレンズでも最小絞りにセットすると同一位置に来る)がボディ側の(M)最小絞り設定警告レバーを半時計回りにスライドまたは押し込むことにより、最小絞りにセットされているか否かを検知する。

 

ボディ側の(M)最小絞り設定警告レバーには、 円周方向スライド式と押し込み式の両方式がある。



表1:最小絞り警告レバーの形式(CPU連動方式専用ボディ)

最小絞り警告レバーの形式 機種例
円周方向スライド式 D100、D70、D70s、D50、D80、D90
押し込み式 D40、D40x、D60、D3000、D3100、D3200、D3300、D5000、D5100、D5200、D5300、D5500、D5600、D7500など
最小絞り警告レバーなし D3400、D3500 (※1


D70やD90などの円周方向スライド式の機種では、一部の非Aiレンズ(従来方式のカニ爪付きオールドニッコール)で絞りリングがこのレバーを上から押し付ける形となって破損する恐れがある。但しAi改造することで装着可能となる。( 「D70に旧Nikkor-H Auto 50mm F2を改造取り付け」 参照 )

非Aiレンズ(カニ爪付きオールドニッコール) (M)最小絞り設定警告レバーを押しつぶす
D70やD90などの円周方向スライド式の機種では、非Aiレンズの絞りリングのスカート部がボディの(M)最小絞り設定警告レバーを上から押し付けてしまい、レンズを装着できない。

●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ 参照)

一方、D40など押し込み式の機種では非Aiレンズでも無改造で装着可能である。(但し、メーカー非推奨)

尚、干渉するのはレバーだけとは限らない(レンズ後端部とミラーなど)為、装着は自己責任で行なって下さい。

 参考: ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ


尚、CPU連動方式専用ボディに非Aiレンズ(古いカニ爪付きオールドニッコールなど。Gタイプレンズ除く)を装着した場合は、レンズ側に(k)最小絞り設定警告用ガイドがないので、最小絞りに設定していない場合の警告は出せず、露出はマニュアルモードのみとなる。(露出計も作動しない)
 


(※1) 最小絞り設定警告レバーのないD3400/D3500について

D3000シリーズにおいて、D3000〜D3300までは最小絞り設定警告レバーがあったのだが、D3400/D3500はCPU連動方式専用ボディにも関わらず、最小絞り設定警告レバーがない。その為、装着レンズが最小絞りでなかった場合に警告メッセージが表示できない。

尚、D3000シリーズは、ボディ内にAFモーターが内蔵されていない為、AFモーターが内蔵されているレンズ(AF-SAF-PAF-Iレンズ)でのみAF撮影が可能である。

D3000シリーズで使えるレンズの内、Eタイプ(電磁絞り)やGタイプレンズは絞りリング自体が無く、ボディから絞りをコントロールする。Eタイプはボディから電気的に絞りをコントロールし、Gタイプはボディへの装着時に自動的に最小絞りになるので、両タイプ共に最小絞り設定警告レバーがなくても問題ない。

問題となるのは、Dタイプレンズ。Dタイプレンズでボディ側から絞りをコントロールするためにはレンズが最小絞りにセットされていなければならない。(カメラ側からの絞りのコントロール参照)

D3000〜D3300やD3400/D3500にDタイプレンズを装着時、最小絞りになっていない場合の警告メッセージや、シャッターが切れない場合の相違点は、

D3000〜D3300
最小絞り設定警告レバーあり)
D3400/D3500
最小絞り設定警告レバーなし)
解説
Eタイプ(電磁絞り)や
Gタイプレンズ装着時
(正常) (正常)
Dタイプ装着時 最小絞りに
セットされている
(正常) 「F--」(点滅)
「レンズ未装着」
D3000〜D3300では、Dタイプが最小絞りにセットされているか否が区別される。Dタイプで撮影モードM以外(P・S・A)も可。

D3400/D3500では、EタイプまたはGタイプ以外のレンズは全て「レンズ未装着」扱い。Dタイプは撮影モードMのみ可、測光も不可。

どちらも非CPUレンズ装着時は撮影モードMのみ可、絞り値の設定はレンズの絞りリングで行なう。
最小絞りに
セットされていない
FEE」(点滅)
「レンズの絞りリングを最小絞りにしてください」
非CPUレンズ装着/レンズ未装着
 (どちらであるかは判断不可)
「F--」(点滅)
「レンズ未装着」
シャッターが切れない ・最小絞りになっていますか?
・非CPUレンズはM以外の撮影モードでは使用できない
EタイプまたはGタイプ以外のレンズはM以外の撮影モードでは使用できない D3400/D3500では、Dタイプレンズが装着されているのか、非CPUレンズが装着されているのか、またはレンズが装着されていないのか判断できない

要するに。。。
D3400/D3500は最小絞り設定警告レバーが省略されているが故に、「レンズ未装着」と「最小絞り警告」は区別されない(できない)。
EタイプまたはGタイプ以外のレンズ(Dタイプや非CPUレンズ)は(実際にレンズを装着していたとしても)、全て「レンズ未装着」扱いとなり、撮影モードMでのみ使用可(M以外の撮影モードではシャッターが切れない)、測光不可、露出インジケーターも作動せず、絞り値の設定はレンズの絞りリングで行なうことになった。

ちなみに、D3000〜D3300では、EタイプまたはGタイプも含めDタイプレンズも使用可、最小絞りになっていなければその旨の警告、撮影モードM以外(P・S・A)やマルチパターン測光(3D-RGB)、中央部重点測光やスポット測光なども可能であった。

 


(2) CPU連動方式+Ai方式併用のボディ

CPU連動方式で、ボディ側に(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)はあるが、(M)最小絞り設定警告レバーがない機種

銀塩一眼レフではF4/F5/F6など、デジタル一眼レフでは、D1シリーズ/D2シリーズ/D3シリーズ/D200/D300シリーズ/D600シリーズ/D700シリーズ/D800シリーズ/D7000シリーズなど

・ ボディ側に(M)最小絞り設定警告レバーがなく、最小絞り値はレンズ装着時に電子接点で渡され、現在の絞り値は開放F値(電子接点経由)と(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)とで算出されるので、最小絞りでなければ警告される。

・ Ai、Ai-Sなど非CPUレンズ使用時は、開放F値と焦点距離を手入力して露出計も使用ができるが、露出モードはA・MモードのみでP・Sモードは使えない。A・Mモードでは絞り設定をコマンドダイヤルではなく、レンズの絞りリングを回して行なう。(つまり最小絞りにセットする訳ではないので警告も有り得ない)
 


(3) Ai専用ボディ

CPU連動方式ではなく、ボディ側に(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)はあるが、(M)最小絞り設定警告レバーがない機種

Nikon FG/FAなど、プログラムAE、シャッタースピード優先AEを持つ機種

・ 最小絞りであるか否かの判断方法がない

・ 「Nikon FG」では最小絞りに設定していない場合の警告はない。(ファインダー内にも絞り値表示なし)

・ 「Nikon FA」では、シャッタースピード優先AE時に最小絞りにセットする必要がない。というよりも最小絞りか否かの検知ができない。
通常は設定したシャッター速度を優先し適切な絞りが自動で設定されるが、開放絞り〜セットした(適当な)絞り値間で適正露出が得られない場合はシャッター速度自体をシフトしてしまう。 (●瞬間絞り込み測光

尚、 「Nikon FA」ではシャッタースピード優先AE時にレンズ絞り値をF11以上にセットしないと警告(FEE)が表示される。これは、ボディ側の「(I)開放F値連動レバーとレンズ側の(e)開放F値連動ガイドの連動で得られる装着レンズの開放絞り値と、(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)による設定絞り値(開放絞りからの相対値)から現在の絞り値(例えばF11)が求められる。しかし、最小絞り値は求める方法(手段)がない。


(参考) 絞り環のないレンズ(Gタイプレンズ)を装着した場合

Gタイプレンズ(CPU内蔵)はレンズ側に絞りリングがなく(d)露出計連動ガイド(k)最小絞り設定警告用ガイドも共に存在しないが、このタイプのレンズは常に最小絞り状態となるので警告も有り得ない。(勿論、カメラボディに装着した時点で絞り羽根は開放状態となる)

CPU連動方式以外のカメラでは、開放F値、最小絞り値をカメラボディ側に伝える手段がなく、絞りリングもない為、装着はできても使えない。
CPU連動方式のカメラでも、Gレンズが使えない機種やA・Mモードが使えない機種がある。




レンズ焦点距離識別レバー(プログラム切り替えレバー)



Ai-Sレンズに追加された(j)焦点距離識別リッジにより焦点距離が135mm以上のレンズを識別して、プログラムモードでは手ブレを防ぐために高速プログラムに切り替える。このレバーは「Nikon FA」に初めて装備された。また、マルチパターン測光にも用いられる。

標準プログラム: プログラム線図上の1/125秒でF5.6の点を通り、45度の角度を持つ。
高速プログラム: 全体が高速側にシフトするとともに、プログラム線図上の1/125秒でF4の点を通り、勾配も急傾斜となる。

レンズ焦点距離識別レバー 焦点距離識別リッジ

レンズ焦点距離識別レバー(プログラム切り替えレバー)を持つカメラ一覧

 
カメラ

高速プログラム切替え方法 備考
FA 自動切換え  
F-301 手動切換え  
F-501 自動切換え  
F-401 自動切換え CPUレンズ情報を基に135mmを境に自動切換え。 (135mm含むズームレンズでも自動で切り替わる)
F-801 自動切換え (基本はCPU連動)
F4 自動切換え (基本はCPU連動)

尚、Nikon F5ではこの(F)レンズ焦点距離識別レバー(E)レンズ識別ピン(I)開放F値連動レバーが廃止されている。




●瞬間絞り込み測光



プログラムAEやシャッター速度優先AEなどのボディ側からレンズ絞りを制御するAEで、絞り制御の誤差を補正するために、シャッターレリーズ後絞りが絞り込まれた瞬間に再度測光する方式。

以下にシャッター速度優先AE時の「瞬間絞り込み測光」の例を示す。

●「瞬間絞り込み測光」時の露光の流れ ●「瞬間絞り込み測光」以外の通常の露光の流れ

(1)シャッター速度優先AEで、シャッター速度を1/500秒に設定した
    ↓
(2)測光開始→絞り値はF5.6と算出された。(露出値=EV14相当)
    ↓
(3)シャッターレリーズ後、ミラーアップ前に
    ↓
(4)レンズの絞り込みを開始
    ↓
(5)絞り込み状況を監視
    ↓
(6)絞り込み完了時、再測光する
    ↓
(7)再測光値がF8相当の露光値となった(絞り作動の誤差)(露出値=EV15相当)
    ↓
(8)再測光値が絞り1段分不足→シャッター速度を1段遅くし、1/250秒に設定
    ↓
(9)ミラーアップ
    ↓
(10)シャッター速度1/250秒、絞りはF8相当で露光
    ↓
(11)ミラーダウンと共に絞りを開放にする(=自動絞り)


(1)同左
    ↓
(2)同左
    ↓
(3)シャッターレリーズ後、ミラーアップと同時に、
    ↓
(4)レンズの絞り込みを開始
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
(10)シャッター速度1/500秒、絞りはF5.6で露光
    ↓
(11)同左


という手順で測光・露出を行なう。

これは SタイプではないAiレンズ を使用した場合、ボディ側の絞り連動レバーとレンズ側の絞り連動レバーの動きが リニアに対応しておらず 、設定した絞り値と実際に絞り込まれる絞り値に誤差が発生するため、この差を(8)のステップでシャッター速度を再調整することにより高精度の露出制御を行なうものである。但し、通常の露光に比べ、シャッターレリーズ後に再測光を行なうためにレリーズタイムラグが長くなることと、再測光時の接眼部からの逆入射光の影響が大きいという欠点がある。


《 背景 》

ニコンでは昭和40(1965)年9月発売の「Nikon F フォトミックT」において「TTL開放測光方式」が採用され、 昭和52(1977)年にはAiニッコール(開放F値自動補正方式)が商品化された。

ニコンのAEカメラとしては、昭和53(1978)年4月に「Nikon FE」が「絞り優先AE(A)」を搭載したのが始まりであるが、「絞り優先AE(A)」の場合は手動設定した絞り値に対し、カメラ側が電子制御により正確なシャッター速度をコントロールできる。

しかし「シャッター速度優先AE(S)」や「プログラムAE(P)」を実現するには測光値に応じてカメラボディ側から絞りをコントロールする必要があるが、 Aiニッコールではボディ側絞り値の変化(ボディ側の絞り連動レバーの変化)に対して、レンズ側絞り連動レバーがリニアに比例しておらず自動決定された絞り値と実際に絞り込まれる絞り値の間に誤差が発生してしまう。 ( ●Ai-S Nikkor参照)

この問題を解決するために、Ai方式の改良版として昭和55(1980)年に正確な絞りのコントロールが可能なAi-Sニッコールが商品化された。
レンズ側の環境が整ったところで、昭和57(1982)年5月に「Nikon FG」が初めてプログラムAEを搭載し、昭和58(1983)年9月には 「Nikon FA」で「絞り優先AE(A)」、「シャッター速度優先AE(S)」、「プログラムAE(P)」を実現した。

ちなみに、「プログラムAE(P)」では実際に撮影されるシャッター速度がそれほど正確でなくても「瞬間絞り込み測光」で露出は正確に割り出せるが、「絞り優先AE(A)」や「シャッター速度優先AE(S)」では、シャッター速度や実効絞り値の正確さが要求されるため、AE実装の敷居は高い。

しかしこれらのカメラで使用するレンズが全てAi-Sタイプとは限らず、Aiタイプ(非Ai-S)のレンズも使われるわけで、 当時の両タイプレンズの混在状態で正確な自動露出を実現するために「瞬間絞り込み測光」という言わば苦肉の策を採らざるを得なかった、ということである。
 
《 コラム 》 瞬間絞り込み測光、もう少しややこしいお話(^^);

Ai-Sレンズではボディ側から絞りを正確にコントロールできるようになったので、本来は瞬間絞り込み測光を行なう必要がないはずである。 装着したレンズタイプがAiAi-Sかの判別はボディに追加された レンズ識別ピンAi-Sレンズ側の レンズタイプ識別ノッチ で行なえるので、Aiレンズレンズなら瞬間絞り込み測光による露出制御を、Ai-Sレンズなら通常の測光によるAEを行なえばよい。

ところがもう一点問題があった。それはレンズが最小絞りにセットされているか否かという点である。

シャッター速度優先AEやプログラムAEなどマルチモードAE機でボディ側から絞りをコントロールする場合、レンズが最小絞りにセットされていなければならない。(そうしなければ絞りの制御(可動)可能範囲が開放〜設定絞り値の範囲に制限されてしまう)

誤操作を防ぐ為にも最小絞りにセットしていない場合は警告を出すべきであるが、 Ai/Ai-Sレンズには(k)最小絞り設定警告用ガイド(Aiレンズにあり、どのレンズでも最小絞りにセットすると同一位置に来る)があるので、ボディ側に(M)最小絞り設定警告レバーがあれば可能であるが、FGやFAではこのレバーが存在しない((M)最小絞り設定警告レバーが装備されたのは、FAの4年後に発売されたF-401が最初)。ということは最小絞り未設定の警告を出す手段がない。

つまり、当時のボディではAiレンズとAi-Sレンズの混在環境においてレンズが最小絞りにセットしてあるか否かは正確に判断できないことになる。この点からも「瞬間絞り込み測光」によって実際にセットされている(最小絞りではないかもしれない)レンズ絞り値を元に、シャッター速度による露出再調整を行なう必要があった、ということである。 ( ●最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー参照 )

「Nikon FA」で「シャッター速度優先AE(S)」を使用する場合、通常は設定したシャッター速度を優先し適切な絞りが自動で設定されるが、もし開放絞り〜セットした(適当な)絞り値間で適正露出が得られない場合は(優先であるはずの)シャッター速度自体をシフトしてしまう。

例えばシャッター速度を1/250秒、絞りを(最小絞りではない)F8にセットすると、通常は絞りを開放絞り〜F8の間で適正露出になるように調整されるが、この範囲を超えるような明るい環境ではシャッター速度を1/500秒〜最高速度まで自動的に無段階変更される。逆に1/250秒で絞り開放でも露出不足になる場合は、シャッター速度を調整し1/250秒以下に変更して適正露出を確保する。(FGもFAも電子制御式フォーカルプレーンシャッター搭載なので無段階制御が可能)

つまり「シャッター速度固定AE」ではなく、文字通り「シャッター速度優先AE」という動作となる。

ちなみにボディに追加されていた「レンズ識別ピン」は、F5以降に廃止されている。


瞬間絞り込み測光方式を採用している機種は以下の4機種のみである。

昭和57(1982)年5月 Nikon FG ニコン初のプログラムオート搭載。+絞り優先AE(A)
昭和58(1983)年9月 Nikon FA ニコン初のシャッター速度優先AE(S)搭載。+絞り優先AE(A)、プログラムAE(P)
昭和60(1985)年9月 Nikon F-301 絞り優先AE(A)と、二種類のプログラムAE(標準プログラムAE(P) 高速プログラムAE(PHI))搭載。シャッター速度優先AE(S)は非搭載)
昭和61(1986)年4月 Nikon F-501 CPU連動方式の最初の機種。プログラムAE(P)+シャッター速度優先AE(S)+絞り優先AE(A)搭載。
全ての機種に、固定式の(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)がある


では、Ai-SAiタイプ(非Ai-S)のレンズが混在する状況のままで、これらの4機種以降のカメラでは露出制御はどうしているのか?

翌年の昭和62(1987)年に発売されたAF機「F-401」は、 Aiレンズ対応の(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)が省略されているので、AFレンズ(全てCPU内蔵)のみフル機能使用可とし、CPU内蔵レンズ以外は露出計が作動しない。つまり非CPUのAiAi-S含む)レンズ使用時は「マニュアル露出モード(M)」のみ可能で、「絞り優先AE(A)」、「シャッター速度優先AE(S)」、「プログラムAE(P)」は使えない(シャッターがロックされてしまう)。尚、この「F-401」で初めて(M)最小絞り設定警告レバーが装備された。

2年後の昭和63(1988)年発売の「F-801」では、3種類の「プログラムAE(PD/PH/P)」と「シャッター速度優先AE(S)」、「絞り優先AE(A)」、「マニュアル露出モード(M)」が搭載されているが、非CPUレンズ(AiAi-S、改造Aiレンズ)では「絞り優先AE(A)」と「マニュアル露出モード(M)」のみ使用可である。つまり、ボディ側からの絞り制御は行なわない。

同昭和63(1988)年発売のAF機「Nikon F4」でも、CPU内蔵レンズのみフル機能使用可能であり、CPUを搭載していないAiAi-S、改造Aiレンズ使用時は露出モードが「絞り優先AE(A)」、「マニュアル露出モード(M)」ドのみ可能で、「シャッター速度優先AE(S)」、「プログラムAE(P)」は使えない。尚、測光モードはAiAi-Sレンズがマルチパターン測光可能で、開放F値連動ガイドのない改造Aiレンズは中央部重点測光モードのみ可能である。

つまり、瞬間絞り込み測光方式を採用している上記4機種以降はAiレンズの絞り(非リニア)作動の誤差を「瞬間絞り込み測光」などの方法で救うことはせず、(CPU内蔵ではない)Aiレンズ使用時は(Ai-Sを含めて)ボディからの絞りコントロールを一切止めてしまった。即ち「シャッター速度優先AE(S)」、「プログラムAE(P)」をばっさりと切り捨てたということである。(ボディ側から絞りコントロールをしない、つまりレンズ絞りリングで絞りをセットする「マニュアル露出モード(M)」、「絞り優先AE(A)」は使用可)

実のところ、上記4機種とF4以外はAiタイプAi-Sタイプの区別ができるボディ側マウントパーツである「レンズ識別ピン」が省略されているので区別しようがない。省略の理由は複雑なメカ連動を廃して、「今後はCPU内蔵レンズを使ってください」ということだろう。

この方針は最近のデジタル一眼レフになっても同様で、露出計連動レバー(Ai連動レバー)有無やレンズ情報手動設定機能有無によって以下の3種に分類される。
 
表1: CPUを内蔵していないAi-S、Ai、改造Aiレンズ使用時の露出モードと測光モード

露出計連動レバー(Ai連動レバー)有無

レンズ情報手動設定(※1)有無 機種例 露出モード 測光モード
あり あり D200、D2X、D3 A・M RGBマルチパターン測光
中央部重点測光
スポット測光
なし D1、D2X A・M 中央部重点測光
スポット測光
なし - D100、D70 M 露出計は使用不可
  (※1: 非CPUレンズであっても、レンズ情報(焦点距離、開放絞り値)を設定すれば、マルチパターン測光が使用可能)

上記表1のA(絞り優先オート)やM(マニュアル露出モード)のいずれも、絞り値の設定はレンズの絞りリングで行なう。(コマンドダイアルでは不可)



《 関連用語 》

絞り優先AE(A) 撮影者が絞り値を決め、カメラが自動的に適正なシャッター速度を決定する。
シャッター速度優先AE(S) 撮影者がシャッター速度を決め、カメラが自動的に適正な絞り値を決定する。
プログラムAE(P) 被写体の明るさに応じて、カメラが自動的に絞りとシャッター速度を決定する
マニュアル露出モード(M) 撮影者がシャッター速度と絞り値を決定する。


    ●Ai-S Nikkor 参照




開放F値連動レバー開放F値連動ガイド



ボディ側の(I)開放F値連動レバーは、AiレンズAi-Sレンズ後部にある「(e)開放F値連動ガイド」に連動し、開放F値を受け取って自動露出やファインダー内表示、マルチパターン測光などに用いられる。(Nikon FG、FA、F4など)

レンズに追加された開放F値連動ガイド


初期のニッコールレンズ(カニ爪方式)ではレンズ交換する毎に開放F値をセットし直す(開放F値手動設定)必要があったが、 昭和52(1977)年に発売されたAi方式(開放F値自動補正方式)レンズの後部には、絞り値をボディに伝える露出計連動ガイドと、レンズの開放F値を伝える開放F値連動ガイドが追加され、レンズを装着すれば即露出計が作動するようになった。(但し、露出計作動は(d)露出計連動ガイドだけでも可能)

実際に開放F値連動ガイドにより レンズの開放F値がボディに伝えられる(使われる)ようになったのは、後の シャッター速度優先AEプログラムAEマルチパターン測光の各機能が搭載された時であり、 機種としては、 昭和57(1982)年5月発売の「Nikon FG」が初めてプログラムAEを搭載し、昭和58(1983)年9月には 「Nikon FA」で「絞り優先AE(A)」、「シャッター速度優先AE(S)」、「プログラムAE(P)」を実現した。

しかし、昭和61(1986)年にはボディとレンズ間の情報伝達を電気信号で行なう CPU連動方式が採用され、開放F値は電子接点経由で渡されるようになったため、この(e)開放F値連動ガイドに対応するボディ側の(I)開放F値連動レバーを持つカメラはFG、FA、F4など数機種に限られる。

●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係参照)

ネイティブ(純正)のAiAi-Sレンズには「開放F値連動ガイド」があるが、 改造Aiレンズには存在しない。このためF4、FAではネイティブのAiニッコールでは多分割測光(5分割マルチパターン測光)などが可能であるが、改造Aiレンズでは不可能である。

尚、F5ではこのレバーは廃止されている。




●開放測光とレンズ開放F値のアヤシイ(?)関係



昔々、1960年代に一眼レフの露出計が外付け方式から内蔵型のTTL測光(Through the Lens:実際にレンズを通った光をボディ内測光素子で測光する)方式に切り替わり始めた頃、測光は「絞り込み測光方式」が採用されていた。

これはピント合わせの時はレンズを絞り開放で行ない、測光時には(ボディの絞込みボタンを押して)実際に撮影する絞りまで絞り込んだ状態で行なうものであり、測光機構面では簡単な構造ではあるが、

 ・ 測光時に絞り込み操作が必要
 ・ 絞り込むことによりファインダーが暗くなる
 ・ その為に接眼部からの逆入光の影響で測光誤差が生じやすい

などの問題があり、これらの問題を解決する為に「TTL開放測光方式」が生まれた。
この方式は常に絞り開放状態で測光を行ない、「レンズの開放F値」と「現在の絞り値」をカメラボディへ通知してその測光値を補正する。

例えばF2の明るさのレンズを装着し、絞り開放(F2)で測光値がシャッター速度1/500秒となる明るさで、絞りを1段(F2.8)絞ったとする。
TTL開放測光では露出計に入る光の量はF2(開放)のままであるが、測光値としてはシャッター速度を1段遅い1/250秒と算出しなければならない。
その為には 「 開放F値(F2) 」と「 開放から1段絞ったという情報 」をボディ(露出計)に伝えて露出計を1段分補正(電気的補正)する必要がある。


 絞り開放(F2)、1/500秒  ・・・ 露出計には絞り開放(F2)の光量が入射している
絞りをF2.8にする ・・・ 露出計には絞り開放(F2)の光量が入射している状態のまま。(ファインダーも開放の明るさ)
絞りを1段絞ったという情報が露出計に伝えられる
露出計は1/250秒を示す(電気的に補正)


(実際のF2.8への絞り込みはシャッターが切られる直前に行なわれ、露光完了後に再び開放絞りに戻る=一眼レフの基本構造と自動絞り


ニコンの初期のTTL露出計搭載機では各レンズに設けられている連動爪(カニ爪)により絞り値をボディに伝えられたが、開放F値については

 ・ Nikomat FT /  Nikon F フォトミックT / Nikon F フォトミックTN : 開放F値手動設定(レンズ交換する毎に開放F値をセットし直す)
 ・ Nikomat FTN / Nikon フォトミックFTN 以降: 開放F値半自動設定(通称ガチャガチャ

という方法を採用していた。

そして、この方式では絞りの絶対値(F2やF2.8など)も連動爪(カニ爪)によりボディに通知されるので現在の絞り値をファインダーで確認することもできた。

例えば、「 Nikon F フォトミックTN 」ではフォトミックファインダー内にカニの爪経由でレンズ絞りの動きに対応した絞り表示板を持ち、後ろ斜面の小窓から見ることができるし、「 F2フォトミック 」ではファインダー内に直接現在の絞り値が表示される。

尚、より正確に言えば、露出計を動かす為だけであれば開放F値と現在の絞り値の両方を伝える必要はなく、開放F値から「何段絞り込まれたか」という情報だけあればよい。上記例でいえば、絞りを「1段絞った」という情報があればシャッター速度1/250秒を求めることができる。

そこで、昭和52(1977)年に露出計に対し(レンズ交換する毎に開放F値をセットし直すなどという)余計な手間なしで絞り値をボディに通知できるAi方式が商品化された。 これは開放F値自動補正方式(AI = Automatic Maximum Aperture Indexing 方式)と言われる通り、レンズを装着すれば自動的に開放F値が補正される。

        

Ai方式の露出計連動ガイドは、設定した絞りがそのレンズの開放絞りから何段絞ったものか(絞りの相対値)をボディ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)に伝えるもので、レンズの開放F値によりガイド位置が決まっている。


  <開放F値に対応する露出計連動ガイド位置> (●Ai方式 も参照のこと)

        


このAi方式は、レンズ後部にある「(e)開放F値連動ガイド」とレンズ絞り環にある「(d)露出計連動ガイド」によって、それぞれレンズの開放F値と開放F値から絞り込まれた段数(実絞り値と開放F値との差分)の両方をボディに伝えることができる。

しかし、Aiレンズが発売された頃のカメラ、例えば「 Nikon FM 」などには、「(e)開放F値連動ガイド」の受け部であるボディ側の「(I)開放F値連動レバー」は実装されていなかった。(つまり、レンズの開放F値がボディに伝えられていなかった。実装されているのは、「 Nikon F4 」や「 FA 」など数機種のみ)

その理由として考えられるのは、

(1) 前述の通り、露出計を動かす為だけであれば開放F値から「何段絞り込まれたか」という(露出計連動ガイドによる)情報だけあればよい。(絞り値相対値通知方式)

(2) 当時は絞り優先AEシャッター速度優先AEなどの露出オート機能がなかった。

(3) ファインダー内に現在の絞り値を表示させる方法も、Aiレンズの絞り環後端の絞り文字をファインダー内から直読させることで可能であった。

ことから、当面不要な開放F値を伝える為の余分な機構を付加することによるコストアップを避けた為と思われる。

ところが、Aiレンズ発売当時は他メーカーから絞り優先AEシャッター速度優先AEを搭載したマルチモードAE機が発売された時期でもあり、当然ニコンでもその開発は行なわれていたはずであるが、シャッター速度優先AEやプログラムAE(及び後のマルチパターン測光)を実現しようとなると、開放F値(絶対値)が必要になってくる。(尚、絞り優先AEで使う分には開放F値から絞り込まれた段数(絞り値相対値)を伝えるだけで問題なかった)

つまり、シャッター速度優先AEでは撮影者がシャッター速度を先に決め、レンズ絞りを最小絞りにセットしておき、適正絞り値はカメラが自動的に測光値から決定するのであるが、開放F値が分からなければどこまで絞りを開けられるかが分からない。例えば開放F値がF2.8のレンズを装着しているにも関わらず、設定シャッター速度によっては1/4000秒で絞り値「F2」などとなりかねない。

同様にカメラ側が開放F値(絶対値)を知らなければAEで自動決定した絞り値をファインダーに表示することが出来ない。 (相対絞り値だけでは不可能)

ここで初めてレンズの開放F値をボディに伝える機構 ((e)開放F値連動ガイドと 「(I)開放F値連動レバー)を 生かしてシャッター速度優先AEを実現する。。。。。

はずだったのであるが、実はAi方式にはもう一点大きな問題があった。

カメラ側でシャッター速度に応じた絞りを自動決定し、レンズの絞りをボディから制御するには、ボディ側絞り値の移動量(ボディ側の絞り連動レバーの移動量)とレンズ側絞り連動レバーの動きが線形(リニア)になっていなければならないのだが、 Aiレンズではそうなっておらず 、新たにその対策としてAi方式の3年後の昭和55(1980)年に改良版のAi-Sレンズを発売せざるを得なくなったのである。(《コラム》ニコンの「時間」

このあたりがFマウントのややこしい所ではある。

このSタイプ(Ai-Sタイプ)レンズはAiレンズに加え、上述のボディ側とレンズ側の絞り連動レバーの動きを線形(リニア)化した。 (●Ai-S Nikkorレンズ 参照)

そして昭和57(1982)年5月、「 Nikon FG 」でプログラムAEを実現し、翌年の昭和58(1983)年9月には 「 Nikon FA 」にニコン初のシャッタースピード優先AEと 世界初のマルチパターン測光 が搭載された。 (絞り優先AEシャッター速度優先AEプログラムAEを機械式連動で実現。世界初の5分割マルチパターン測光)

この「 Nikon FG 」や「 Nikon FA 」においてボディに追加された 「開放F値連動レバー」は、 レンズ側の「開放F値連動ガイド」 に連動して開放F値を受け取り、自動露出(AE)やファインダー内表示、マルチパターン測光(FAのみ)に用いられている。(尚、数年後には以下のCPU連動方式が商品化された為、「開放F値連動レバー」を持つボディは多分数機種しかないと思われる。)

以上の複雑怪奇な混乱状況を解決すべく、昭和61(1986)年4月発売の「 Nikon F-501 」において、ボディとレンズ間の情報伝達を電気信号で行なう CPU連動方式が採用された。 この方式は装着レンズ(CPU内蔵レンズ)の開放F値(や焦点距離、レンズタイプなど)が電子接点経由でボディに通知されるもので、「Nikon F-501」以降の機種は全てCPU連動方式となった。

尚、CPU連動方式のカメラではCPU内蔵レンズの使用を前提としているが、非CPUレンズ(Aiレンズ)装着時の露出計作動に対処する為に一部ハイエンド機種では露出計連動レバー(Ai連動レバー)も残されている。(CPU連動方式+Ai方式併用のボディ参照)

しかし、非CPU(Ai)レンズ装着時にもマルチパターン測光やAEを実現するためには、露出計連動レバー(Ai連動レバー)による絞り値の相対値だけではなく装着レンズの開放F値を知る必要があるが、 これらのCPU連動方式カメラはAiレンズ側の (e)開放F値連動ガイドに対応する (I)開放F値連動レバーを持っていない (つまり装着レンズの開放F値を機械的に取得できないし、非CPUタイプのAiレンズには当然電子接点も存在しない)。

この問題の対策として、CPU連動方式のカメラ(F5やD1シリーズ除く)ではセットアップメニューに「レンズ情報手動設定機能」が付加され、装着した非CPU(Ai)レンズの開放F値と焦点距離を手動セットすれば、非CPUレンズ使用時でもファインダー等への現在の絞り値(=レンズ情報手動設定機能で設定した開放F値+露出計連動レバー(Ai連動レバー)による相対絞り値)表示や再生画面での焦点距離表示、RGBマルチパターン測光が使用可能となる。


以上を要約すれば、

  昭和40(1965)年 開放F値手動設定
             ↓
  昭和42(1967)年 開放F値半自動設定(通称ガチャガチャ
             ↓
  昭和52(1977)年 Ai方式による絞り値相対値通知。レンズ後部に(e)開放F値連動ガイド追加
             ↓
  昭和55(1980)年 Ai-S方式による絞り制御のリニア化
             ↓
  昭和57(1982)年 「 Nikon FG 」にプログラムAEを搭載 ((e)開放F値連動ガイド(I)開放F値連動レバーによる機械連動の開放F値通知)
             ↓
  昭和58(1983)年 「 Nikon FA 」にシャッタースピード優先AEマルチパターン測光を搭載 (マルチモードAEを機械式連動で実現)
             ↓
  昭和61(1986)年 CPU内蔵方式による開放F値通知(Nikon F-501〜)
             ↓
  平成15(2003)年 CPU内蔵方式+Ai方式併用機種に「レンズ情報手動設定機能」搭載による開放F値と焦点距離情報手動登録(Nikon D2H〜)

となる。
 

● レンズ情報手動設定

CPU非搭載のAiレンズ(※非CPUレンズ)であっても、レンズ情報(焦点距離、開放絞り値)を設定すれば、RGBマルチパターン測光が使用可能となり、他の測光モードでも精度が向上する。 非Aiレンズ露出計連動ガイドがないレンズ)は不可だが、Nikon Dfでのみ使用可。(2013年12月1日追記)
平成15(2003)年10月発売のD2Hに初めて採用され、15年5月現在、 F6、D2H/D2Hs/D2X/D2Xs、D3/D3S/D3X、D200、D300/D300S、D700/D750、D7000/D7100/D7200、D4/D4S、D800/D800E/D810/D810A、D600/D610、Df に搭載されている。

※非CPUレンズ: CPU非搭載のAiレンズ。Ai、Ai-S、改造Aiレンズ、PCニッコール、Ai-S(Ai)テレコンバーター、オート接写リングなど。


設定内容

 使用できる機能
レンズNo. レンズ情報のインデックスとなる(1〜9)
焦点距離 ・ 別売のスピードライトの自動ズーミング
・ 再生画面での焦点距離表示(焦点距離に*印が付く)
開放絞り値 ・ レンズで設定した絞り値表示(表示パネル、ファインダー内表示)
・ スピードライトの絞り連動外部自動調光
・ 再生画面での絞り値表示(絞り値に*印が付く)
露出計連動方式 ・ レンズで設定した絞り値表示(表示パネル、ファインダー内表示)
・ スピードライトの絞り連動外部自動調光
・ 再生画面での絞り値表示(絞り値に*印が付く)
焦点距離と開放絞り値 ・ RGBマルチパターン測光
・ 中央部重点測光、スポット測光、i-TTL-BL調光、D-マルチBL調光の精度も向上する。

CPU非搭載のAiレンズ(※非CPUレンズ)使用時の絞り値の設定はレンズの絞りリングを回して行なう(カメラボディのサブコマンドダイヤルは使えない)。 また使える露出モードは、A(絞り優先オート)とM(マニュアル)のみである。
 
● 「Nikon Df」のレンズ情報手動設定と非CPUレンズ

 平成25(2013)年11月28日に発売された「Nikon Df」は、ニコンデジタル一眼レフカメラとしては初めて可倒式の露出計連動レバーを採用した。
これにより、非Aiのオールドニッコールレンズ(カニ爪方式)が装着でき、事前にレンズ情報手動設定を行なっておけば、開放測光による適正露出が得られる。(露出モードはA、Mのみ対応)。

レンズ情報手動設定には、レンズ情報としてレンズNo、焦点距離、開放絞り値に加え、露出計連動方式(Aiレンズ/非Aiレンズの指定)が追加された。

<非Aiレンズ/非CPUのAiレンズの使い方>

  (1) 露出計連動レバーを倒してからレンズを装着
         ↓
  (2) レンズ情報選択(レンズNo.)
         
  (3) 露出モードをAまたはMにする
        ↓
  (4) レンズの絞りリングで絞り値を設定
        ↓
  (5) 本体のサブコマンドダイヤルを回して、レンズの絞り値をセットする(非Aiのカニ爪方式オールドニッコールレンズのみ。非CPUのAiレンズは不要)
        ↓
  (6) 撮影する


※非CPUレンズ: CPU非搭載のAiレンズ。Ai、Ai-S、改造Aiレンズ、PCニッコール、Ai-S(Ai)テレコンバーター、オート接写リングなど。

尚、非CPUレンズであっても全てのレンズが装着できるわけではなく、Dfでは以下のレンズは使用できないことになっている。

  ・ AFテレコンバーター TC-16AS
  ・ フォーカシングユニットAU-1を必要とするレンズ(400mm f/4.5、600mm f/5.6、800mm f/8、1200mm f/11)
  ・ フィッシュアイ(6mm f/5.6、7.5mm f/5.6、8mm f/8、OP10mm f/5.6)
  ・ 2.1cm f/4
  ・ K2リング
  ・ F3AF用(AF80mmf/2.8、AF ED200mmf/3.5、テレコンバーターTC-16S)
  ・ 旧PC35mm f/3.5
  ・ 旧レフレックス 1000mm f/6.3
  ・ NIKKOR-H Auto 2.8cm/3.5(28mm/3.5)(No.361999以前の製品)
  ・ NIKKOR-S Auto 3.5cm/2.8(35mm/2.8)(No.927999以前の製品)
  ・ NIKKOR-S Auto 5cm/2(50mm/2)
  ・ NIKKOR-Q Auto 13.5cm/3.5(135mm/3.5)(No.752999以前の製品)
  ・ Micro-NIKKOR 5.5cm/3.5
  ・ Medical-NIKKOR Auto 200mm/f5.6
  ・ Auto-NIKKOR Telephoto-Zoom 85-250mm/f4-4.5
  ・ Auto-NIKKOR Telephoto-Zoom 200-600mm/f9.5-10.5

上記レンズ以外でも、レンズ個体の状態によっては装着できないことがある。

詳しくは、 ●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ 参照




●マルチパターン測光



画面を複数のエリアに分割して測光し、それぞれのエリアから得られたデータをマイクロプロセッサ(MPU)で演算して 適正露出を算出する測光方式である。このMPU に記憶されている逆光撮影など数万枚の実写データを解析したアルゴリズムを適用して、その状況にもっともふさわしいとみなせる露出値を演算し決定する。

マルチパターン測光はニコンが開発し、「Nikon FA」にはじめて搭載されたが、 この機種では5つの受光部による測光値を高輝度および低輝度カット処理をしたあと、 最高輝度値、輝度差、カット数、それぞれの位置の明暗の情報によってパターン分析を行ない、4つの露出演算法のなかの一つを選び、 それを元に演算処理をしていた。

              

その後「Nikon F90」に初めて搭載した「3D-マルチパターン測光」では、DタイプおよびGタイプのレンズから得た被写体までの距離情報も加味することで測光精度を一段と向上している。

「Nikon F5」で搭載された「3D-RGBマルチパターン測光」では、従来の測光情報(明るさ/選択AFエリア/被写体までの距離)の他に、多分割の測光用CCDセンサで被写体の色調までも露出決定の要素に取り込み、測光精度をさらに高めることが出来る。

特に明るい色(白や黄色)の被写体や、暗い色(黒や濃い緑色)の被写体が画面全体を大きく占めているような場合に威力を発揮し、色による反射率の違いを加味して目で見た感じにより近く再現する。

(メーカーサイトによれば、「平均輝度/画面全体のコントラスト/画面上部と下部のコントラスト/選択されているAFエリアの輝度/色情報/選択されているAFエリアの位置/距離情報」をニューラルネットワークにて処理し最適な露出を決定している。)


(ニコンメーカーサイトより)



D2X/D2Hs以降から搭載されている「3D-RGBマルチパターン測光II」では、 通常の露出演算アルゴリズムに加えてプロフェッショナル向けデジタル一眼レフカメラから継承した 露出評価アルゴリズムを採用し、ハイライト部の輝度と大きさを検出して背景が暗い画像の白飛びや露出アンダーを防いで 適正な露出量を測定する。さらにその情報をオートホワイトバランスに活用し、より自然な色再現を実現している。

D4、D800/D800Eでは、91KピクセルRGBセンサーによる「3D-RGBマルチパターン測光III」が搭載され、 約91,000ピクセルの画素を駆使して撮影シーンを精査し、 撮影画面全域の詳細な測光データに、アドバンストシーン認識システムによる「光学ファインダー撮影時の顔認識」、「ハイライト解析」情報を応用することで、一段と測光精度を高めた。

「光学ファインダー撮影時の顔認識」では、 画面内に人物の顔を認識するとカメラがこれを主要な被写体と判断し、顔領域の大きさや明るさを考慮して背景と人物のバランスがとれた露出制御を実現。顔が暗くかげりがちな逆光時や部分的に白とびしがちな順光時でも、人物の表情を自然な明るさで捉えることができる。

尚、マルチパターン測光はカメラ自身が露出補正を行なう形式であり、その露出決定ロジックは公開されていない。

よって、カメラ側で自動で行なわれる補正量が不明であり、さらに撮影者が露出補正を加えると結果が予測し辛い場合がある。この場合は中央部重点測光を使用した方が露出補正の経験則が生かし易い。


マルチパターン測光の種類と搭載している主な機種


マルチパターン測光の種類

搭載している主な機種
3分割マルチパターン測光 F-401、F-401S
5分割マルチパターン測光 FA、F-401X、F-601、F-801
3D-5分割マルチパターン測光 Us
3D-6分割マルチパターン測光 F50Dパノラマ、F60Dパノラマ、U
3D-8分割マルチパターン測光 F70Dパノラマ、F90、F90D、F90S、F90X、F90Xd、F90Xs
3D-10分割マルチパターン測光 F80、F100、D100
1005分割3D-RGBマルチパターン測光 F5、F6、D1、D1X/D1H、D2H、D70、D70s
420分割3D-RGBマルチパターン測光II D50、D80、D40、D40x、D60、D90、D5000、D5100、D3000、D3100、D3200
1005分割3D-RGBマルチパターン測光II D2X、D2Hs、D2Xs、D200、D300、D300S、D3、D700
2016分割3D-RGBマルチパターン測光II D7000
91KピクセルRGBセンサーによる
  3D-RGBマルチパターン測光III
D4、D800/D800E






●テレコンバーターの特殊マウント形状とテレコン対応マウント




レンズとボディの間に装着して主レンズの焦点距離を拡大する「テレコンバーター」の一部では、マウント(レンズ装着側)が特殊な形状をしている。

形状変更は、おそらく、TC-14E、TC-17E、TC-20Eなど、「TC-xxE」シリーズからだと思われるが、この目的はテレコンバーターに対応していないレンズ(非AF-Sやサードパーティ製レンズ)の装着を物理的にブロックするためである。

メーカーサイトのAF-Sテレコンバーターの使用可能なレンズによれば、対象外のレンズを装着すると「レンズ後部がテレコンバーターに接触し、破損する恐れがありますので、取り付けないでください。」とのこと。

TC-17E IIのレンズ装着側マウント
TC-17E IIの仕様には、

マウント 前側:AF-S/AF-Iレンズ専用マウント
マウント 後側:ニコンFマウント

と表記されている。
余分な爪(赤矢印)が追加されている


通常のカメラボディマウントと比較してみると。。。。

通常のカメラボディマウント TC-20E IIIなど
余分な爪(赤矢印)が追加されている


上の2枚の画像を重ね合わせてみると。。 少しずらしてみると。。


そして、AF-SやAF-Iレンズなど、一部のレンズ側のマウントも上記の爪に干渉しないように変更されている。ここでは、仮に「テレコン対応マウント」と名付けておく。最初のテレコン対応マウントレンズは、1992年発売の「 Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) 」と「 Ai AF-I Nikkor ED 600mm F4D(IF) 」である。


AF-SやAF-Iレンズは、テレコンバーターの(追加された)爪が干渉しないように隙間がある
   
   
旧来のレンズ側マウントはこんな感じ。。

テレコン対応のレンズは、メーカーサイトのAF-Sテレコンバーターの使用可能なレンズを参照のこと。

ちなみに、テレコンバーター非対応のレンズを「TC-xxE」シリーズに装着するために、テレコンの余分な爪を削り取ってしまう改造方法がネットで公開されている。(こわ!)

 《 参考:テレコン対応マウント 》
発売時期 商品名 電子
接点数
備考
1992年  「 Ai AF-I Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) 」発売
 「 Ai AF-I Nikkor ED 600mm F4D(IF) 」発売
10 最初のAF-Iレンズ。最初のテレコン対応マウント?
1993年  「 AF-I Teleconverter TC-14E 」発売 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
 「 AF-I Teleconverter TC-20E 」発売 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
1994年  「 Ai AF-I Nikkor ED 400mm F2.8D(IF) 」発売
 「 Ai AF-I Nikkor ED 500mm F4D(IF) 」発売
10 追加発売のAF-Iレンズ
1996年  「 Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF) 」発売 8 最初のAF-Sレンズ。以降、接点数10のAF-Sも発売
2001年  「 AI AF-S TELECONVERTER TC-14E II 」発売 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2002年  「 AI AF-S TELECONVERTER TC-20E II 」発売 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2004年  「 AI AF-S TELECONVERTER TC-17E II 」発売 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2010年  「 AF-S Teleconverter TC-20E III 」発売 10 AF-S・AF-Iレンズ専用(AF-S Dタイプも可)
露出計連動機構あり
2014年  「 AF-S Teleconverter TC-14E III 」発売 8 AF-S(GおよびEタイプ)専用。AF-S(Dタイプ)、AF-Iレンズは使用不可
露出計連動機構なし(絞り連動レバーはある)
  (露出計連動機構:絞り連動レバー、開放F値連動ガイド、露出計連動ガイド、最小絞り設定警告用ガイド。但しAFカップリングはない。)







●物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせ



昭和34(1959)年6月にNikon Fから始まった「Fマウント」は、2009年6月に誕生から50周年を迎え、2016年6月にはニッコールレンズ生産累計1億本を達成している。「不変のFマウント」と言われるだけに、最新のデジタル一眼レフに数十年前に発売されたニッコールレンズを装着することもできるが、物理的に装着できないレンズや露出計が作動しないなど、その組み合わせによっては制限がある。

物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせの理由は、


非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズの絞りリング


)と、

  (1) カメラ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)の干渉
  (2) カメラ側の最小絞り設定警告レバーの干渉
  (3) レンズ絞りリング後部(スカート部)とカメラ側マウント部周辺の干渉
  (4) レンズ絞りリング後部(スカート部)の内径と、ボディ側マウント外径の違いによる装着不能

及び、

  (5) ボディ銘板との干渉
  (6) バックフォーカス長が短いレンズ
  (7) ボディ側絞り連動レバーと大口径レンズ後玉保持枠の干渉

さらに、カメラとレンズの組み合わせではないが、

  (8) レンズとテレコンバーターの組み合わせ

の8点である。


Ai化されたレンズ(AiレンズAi-Sレンズ)以降は物理的に装着出来ないことはない(一部例外あり)が、CPUが内蔵されていない場合に露出計やAE/AFが作動しないなどの制限がある。CPU内蔵方式でも、AF-P(ステッピングモーター内蔵レンズ)や、PC-EレンズEタイプレンズが使えないカメラなど種々の制限がある。

 (AF-S/AF-I/AF-P/PC-E/Eタイプ等使用可否一覧参照)

詳しくは各カメラの取り扱い説明書で確認する必要がある。



表1: 装着の問題となるレンズ分類(概略)


レンズ分類

レンズ例
CPU内蔵 AF Ai-Sレンズ Dタイプ(一部例外あり) ・ Ai AF-S Nikkor ED 300mm F2.8D(IF)
・ Ai AF Zoom Nikkor 28-70mm F3.5-4.5D
非Aiレンズ Gタイプ ・ AF-S Zoom Nikkor 24-85mm F3.5-4.5G(IF)
DXレンズ ・ AF-S DX Zoom Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)
MF Aiレンズ Ai-Pレンズ ・ Ai Nikkor 45mm F2.8P (01/7月)
非Aiレンズ PC、PC-Eレンズ ・ PC-E NIKKOR 24mm F3.5D (08/2月)
非CPU AF Aiレンズ F3AF用レンズ ・ Ai AF Nikkor 80mm F2.8S (83/4月) (F3AF、F-501、F4でのみAF作動可)
MF Aiレンズ 旧Aiレンズ(86/4以前)
改造Aiレンズ
・ Ai Nikkor 50mm F1.4 (77/3月)
非Aiレンズ 露出計連動爪 ・ Nikkor-H Auto 50mm F2 (64/1月)  ← これが問題のレンズ群!
( 参考: Fマウントレンズ体系図/分類 )


表2: 非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズとボディの組み合わせ

レンズ側 ボディ側 装着可否 カメラの例
非Aiのオールドニッコール
(カニ爪付きレンズ)
Aiボディ 可倒式露出計連動レバー F2 Photomic A、F3、F4、F5(※1)、F6(※1)、FM、Nikon Df(2013/11/発売のデジタル一眼レフ)
固定式露出計連動レバー × EM、FA、F100、D一桁シリーズ、D200、D300、D700、D7000
非Aiボディ 最小絞り設定警告レバーなし F、F-401、Nikomat FT
最小絞り設定警告レバーあり 円周方向スライド式 × D100、D70、D70s、D50、D80、D90
押し込み式 D40、D40x、D60、D3000シリーズ(の一部)、D5000シリーズ

●非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズ
Ai化されていない旧来の露出計連動爪(カニの爪)が付いているレンズ。
単なる「非Aiレンズ」ではないことに注意。GタイプレンズPC-Eレンズは非Aiだが装着制限はない。( 参考: Fマウントレンズ体系図/分類 )

●Aiボディ
レンズとの露出(絞り)連動を行なうための「(B)露出計連動レバー」(所謂Aiレバー)を持つボディ。
このレバーには可倒式と固定式の2種類が存在し、固定式レバーではレンズの絞りリングと干渉する
  (※1) F5とF6はメーカーにて固定式レバーを可倒式に改造可能
  (B)露出計連動レバーの有無、可倒式/固定式のボディ一覧はこちらを参照

●最小絞り設定警告レバー
非Aiボディにレンズ装着時、絞りが最小絞りになっているかを検知するためのレバー。(最小絞り検知方法と最小絞り設定警告レバー参照)
・ Aiレンズにある(k)最小絞り設定警告用ガイド(どのレンズでも最小絞りにセットすると同一位置に来る)と接触して最小絞り状態を検知する。
・ このレバーには円周方向スライド式と押し込み式の2種類が存在し、円周方向スライド式ではレンズの絞りリングと干渉する
・ Aiボディにはこの最小絞り設定警告レバーはない。(電子接点経由で渡される開放絞り値と「露出計連動レバー(Ai連動レバー)」によって最小絞り状態を検知することができるため)

 

(1) 非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズの絞りリングと、カメラ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)の干渉


  非Aiのオールドニッコールレンズは絞りリング後部(スカート部)が飛び出している。

非Aiのオールドニッコールレンズのマウント部 (参考)Aiニッコールレンズのマウント部


Ai方式のボディには(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)が固定式と可倒式の機種が存在する。(→ 可倒式/固定式のボディ一覧

・ レバー固定式のボディには、非Aiのオールドニッコールレンズは取り付けできない。=絞りリング後部(スカート部)がこのレバーを押しつぶす。。。
・ レバー可倒式のボディでは、レバーを倒せば(退避させれば)非Aiのオールドニッコールレンズでも取り付け可能である。(当然露出計は連動しない)

 尚、ごく一部のオールドニッコールレンズの中には、固定式の(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)とマウントのちょうど間に絞りリング後部(スカート部)がすっぽりと入り込んで装着できるものや、スカート部の飛び出し長が短くて露出計連動レバーと軽い接触だけで取り付けできるものがある。(製造ロットによってスカート長が違うレンズが存在する)


固定式     可倒式
レバーを押しつぶす。。。 レバーを起こしたままなら不可 レバーを倒せばOK

 

(2) 非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズの絞りリングと、最小絞り設定警告レバーの干渉


  ボディ側の(M)最小絞り設定警告レバーには、円周方向スライド式と押し込み式の両方式がある。(レバーがない機種もある
  円周方向スライド式のボディに、非Aiのオールドニッコールレンズを取り付けてはいけない。(絞りリング後部がこのレバーを押しつぶす。。。)

円周方向スライド式    押し込み式
(M)最小絞り設定警告レバーを押しつぶしてしまう
上(前面)から押し込むと引っ込む方式なので装着OK

尚、ごく一部のオールドニッコールレンズの中には、絞りリング後部(スカート部)が短い(レンズマウントからの飛び出し量が小さい)ものがあり、円周方向スライド式のボディにも装着できるものや、スカート部直径が60mmのレンズについては飛び出しているスカート部が ボディマウントと最小絞り設定警告レバーの隙間に丁度入り込むようで、Ai非改造でも取り付けできるものもあるらしい。 (製造ロットによってスカート長や直径が違うレンズが存在する)

 

(3) レンズ絞りリング後部(スカート部)とカメラ側マウント部周辺の干渉


  レンズ絞り環後部(スカート部)とカメラ側マウント部周辺が干渉する場合がある。


取り付けOK 取り付け不可
(1)Aiレンズ (2)非Aiのオールドニッコール (3)非Aiのオールドニッコール
 
部はレンズ絞り環後部(スカート部))


(1)、(2)は正常。
(3)は、スカート部が長すぎてレンズマウントがボディ内に入り切らず、装着不可。



レンズ絞りリング後部(スカート部)の長さ

カメラ側マウント部の厚み
画像A(非Aiのオールドニッコールレンズのマウント部) 画像B 画像C 画像D 画像E
マウント部の厚みは2.7〜2.9mm(実測値)


 ボディ側の(B)露出計連動レバー(Ai連動レバー)を倒していたとしても、レンズ側絞りリング後部のマウント部から飛び出している部分(スカート部)の長さ(画像A、B、C)が、カメラ側マウント前面〜ボディ間の厚み(画像D、E)よりも長いと、レンズがボディ内に入り切らず装着できない。無理に装着しようとすると、スカート部がボディ前面に接触(食い込み)し、絞りリングが固くて回せない、どころか無理に装着すると最悪の場合はレンズが外せなくなる。

Fマウントの規格に「カメラ側マウント部〜ボディ間の厚み(画像D、E)」は定義されていないのが理由で、デジタル一眼レフになってボディ内のメカや電子回路の高密度実装の為にボディ前面部の厚みが増し、フィルム一眼レフに比べ許容できるレンズ側スカート部の長さが短くなっている。(但し、イメージセンサー〜マウント前面までの長さであるフランジバック長は規格として定められている)

また、レンズ側のスカート部の長さも規格化されておらず、Ai化以前のオールドニッコール(カニの爪付き)の中にはスカート部が長いものがあり、しかも同一レンズであってもロットの違いや前期型/後期型により長さが変わっているものもある。その為、カニ爪付きのオールドニッコールレンズが装着できる「Nikon Df」であっても、装着不可のレンズが存在する。(ちなみに、Ai化と同時にマウント部と絞りリング後端部はフラットになっているので問題は発生しない。)

元々初期のニッコールレンズのスカート部は、ボディ装着時にマウント接合部からの光漏れ防止(?)や防塵対策の為にマウント接合部を覆うように長くしていたと思われるが、結果的にデジタル時代の露出計連動レバー(所謂Aiレバー)や最小絞り警告レバーなどとの干渉、そしてボディ前面との干渉など、多くの制限が発生してしまっている。

このことから、Ai化以前のオールドニッコール(カニ爪付き)のどのレンズが装着できるかは、レンズ(種類、ロット)によっても、カメラによっても変わってくるという複雑な組み合わせが存在し、たとえ「Nikon Df」であってもこの問題からは逃れられない。「Nikon Df」の使用説明書にある「使用できないレンズ」の一覧も、本当にそれだけなのか・・・多分メーカーでも全てのレンズの全ロットについて正確/詳細に把握し切れていないように思えるがどうだろうか。。。

 

(4) レンズ絞りリング後部(スカート部)の内径と、ボディ側マウント外径の違いによる装着不能

 オートフォーカスカメラでは、マニュアルフォーカスカメラに比べて、約1mm程マウント外径が大きくなっている。レンズ側絞りリングスカート部の内径がこれより小さいと装着できない。古いマニュアルフォーカスのフィルムカメラで使用できたレンズが全てオートフォーカスカメラで装着できるとは限らない。

非Aiのオールドニッコール
 
部はレンズ絞り環後部(スカート部))


スカート部がボディ側マウント部に接触するので装着不可。



マニュアルフォーカスカメラのマウント オートフォーカスカメラのマウント

 

(5) ボディ銘板との干渉

 一部の鏡胴の太い古いレンズは、ボディの銘板部(おでこの部分。ペンタプリズム前面、一部機種はスピードライト内蔵)と鏡胴部分が接触するので装着できない。(多分レフレックスレンズやメディカルレンズなど)

また古いPCニッコール(シフトレンズ)では、シフト操作時にボディ銘板部、あるいはシフトノブがボディグリップ部に接触する可能性がある。
新しいレンズでも、例えば「PC-E NIKKOR 24mm f/3.5D ED」をD7200に装着してレボルビング操作をすると、レンズのシフトノブがカメラボディに接触する場合がある。

PC Nikkor 35mm f/3.5

 

(6) バックフォーカス長が短いレンズ

 一眼レフカメラではレンズ後端と可動ミラーがぶつからないだけのバックフォーカス長(レンズ最後端(レンズ保持部材含む)とイメージセンサー面の間の長さ)が必要である。

Nikon Fの頃の60年代の魚眼レンズ(Fisheye NIKKOR 8mm F8 など)では、レンズ最後端がミラーボックス内に大きく入り込んでいて(バックフォーカス長が短く)ミラーと干渉する為、ミラーアップして使用しなければならなかった。その為、ミラーアップ機能を持たないカメラでは、これらのレンズを使用すろことができない。

Fish-Eye-Nikkor 8mm f8 バックフォーカス

 

(7) ボディ側絞り連動レバーと大口径レンズ後玉保持枠の干渉


ボディ側の「(K)絞り連動レバー」の形状やサイズの違いから、旧来の「Nikkor-S・C Auto 55mm F1.2」などの大口径レンズでフォーカスを遠距離方向に合わせると、レンズ後群後玉の筐体枠がこのレバーに接触する場合がある。

(画像左側は「Nikon F」や「Nikon F2」など初期のフィルム一眼レフの旧来型形状、右側は主にAi化前後の新形状)

旧ニッコールレンズなど、ピント合わせ時にレンズ群全体を移動する「全群繰り出し方式」では、近距離から遠距離方向(※)にフォーカスを合わせようとすると、レンズ後玉群がミラーボックス側に飛び出してくる。

その為、「Nikkor-S・C Auto 55mm F1.2」などの大口径レンズのようにレンズ後群後玉の直径がマウント内径ギリギリ(左下画像)の場合、ピント合わせ時にボディ側の「(K)絞り連動レバー」に干渉することがある。

但し、連動レバーが旧来型形状のF2などでは問題なく、Ai化された「Ai Nikkor 55mm F1.2」などでは新形状の機種でも干渉はしないようだ。また、「全群繰り出し方式」ではなく「インナーフォーカス方式(レンズ系を前・中間・後群に分割し、中間のレンズ群のみを移動させてピントを合わせる)」では問題ない。

この件に関しては、当サイト訪問者様からのメールで情報を頂きました。hito〇〇様ありがとうございました。

レバーの形状に関してはこちらも参照のこと。

(※) 23/06/22 当サイト訪問者様からのご指摘で、「近距離にフォーカスを合わせようとすると」を「近距離から遠距離方向にフォーカスを合わせようとすると」に修正しました。
杉〇様ありがとうございました。


 

(8) レンズとテレコンバーターの組み合わせ

 テレコンバーターの「TC-xxE」シリーズではレンズ装着側のマウントが特殊な形状をしているため、テレコン非対応のレンズは装着できないようになっている。

   参照: テレコンバーターの特殊マウント形状とテレコン対応マウント



 


●非Aiのオールドニッコールレンズ(カニ爪付き)が装着できるカメラ


 以上の理由の内、(1)〜(4)に関して、非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズが物理的に装着できるのは以下のいずれかのカメラである。

 表3: 非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)レンズが物理的に装着できるカメラ


カメラの分類

カメラ例
フィルムカメラ 露出計なしのカメラ Nikon F、 F2、 Nikomat FS / NIKKOREX 35/F/35II /ZOOM 35、Nikon AUTO35
Ai方式以前のカニ爪対応のカメラ Nikon F Photomic/T/TN/ FTN、 Nikon F2 Photomic/S/SB、 Nikomat FT/FTN/EL/FT2/ELW
可倒式露出計連動レバーを持つカメラ Nikon F2 Photomic A/AS、Nikon F3/F3 HP/F3P/F3 AF/F3H、Nikon F4/ F4S/F4E、Nikomat FT3、Nikon EL2、 Nikon FM 、Nikon FE
押し込み式最小絞り設定警告レバーを持つカメラ F-401、PRONEA S
デジタルカメラ 露出計なしのカメラ (なし)
Ai方式以前のカニ爪対応のカメラ (なし)
可倒式露出計連動レバーを持つカメラ Nikon Df (平成25(2013)年11月28日発売) 使い方はこちらを参照
押し込み式最小絞り設定警告レバーを持つカメラ Nikon D40/D40x、D60、D3000シリーズ、D5000シリーズなど。
(但し正式(使用説明書)には装着不可となっているので自己責任で。。)


 
《 コラム 》 何故、物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせができちゃった?

前述の通り、物理的に装着できないカメラとレンズの組み合わせが存在する理由の内、非Aiのオールドニッコール(カニ爪付き)については、

 (1) カメラ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)の干渉
 (2) カメラ側の最小絞り設定警告レバーの干渉
 (3) レンズ絞りリング後部(スカート部)とカメラ側マウント部周辺の干渉
 (4) レンズ絞りリング後部(スカート部)の内径と、ボディ側マウント外径の違いによる装着不能


の4点なのであるが、これらの問題を考えてみる。

問題になるレンズは、共に、非Aiレンズ、正確には「CPUを内蔵していない非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)のレンズ」である。

  例) Nikkor-H Auto 50mm F2 (1964年1月発売。カニ爪付き)


(1) カメラ側の露出計連動レバー(Ai連動レバー)の干渉

D5100やD3200など、非Aiボディ(露出計連動レバーがない機種)のエントリーモデルでは装着は可能である。(非公式。露出計は作動しない)

しかし、露出計連動レバーを持つAiボディ(=上位機種に当たる)は、後に「Nikon Df」が発売されるまで固定式の露出計連動レバーを採用し続けていた。

でも、「手持ちの古いレンズを最新のデジタル一眼レフで使いた〜〜〜〜〜い」というユーザーも少なからず存在するだろう。特にニコンは「不変のFマウント」を標榜し、古くからのニコンファンは多くのレンズ資産をもっている人も多いだろうから。

装着さえできれば、たとえ露出計が連動しなくても、何回か試し撮りし液晶モニターでヒストグラムなどを確認すれば適性露出を求めることもできるのにね。。

可倒式の露出計連動レバーを採用した平成25(2013)年11月発売の「Nikon Df」露出計連動レバー部は以下のようになっている。

露出計連動レバーを起こした時 露出計連動レバーを倒した(逃がした)時
 

構造的には極めて単純で、ボディ側に露出計連動レバーが入る程度の窪みがあるだけである。この程度のことで可倒式にできるのであれば、他のデジタル一眼レフで何故できないのか。。

メーカーマーケティング部担当曰く、「ニコンDf誕生に迫る

「これには物理的な理由がありまして、非AIレンズは、AI対応ボディーのマウント外周部分にある露出計連動レバーに対応していませんので、レンズの絞り環の外周部分が露出計連動レバーの突起に干渉して装着できません。そのため、AI対応ボディーに非AIレンズを装着するにはこの突起部分を可倒式にする必要があります。しかし現在のカメラでは、この付近の構造上の理由で可倒式にはできなくなっています。 逆にDfの場合は、最初から可倒式の構造を取り入れるべく新規に設計しましたので実現できたのです。」

この程度の窪みさえ付けられないほど高密度実装されているとは思えないが、本当に「構造上の理由」だけなのか?

それとも、ニコン得意の「フェーズアウト作戦」か?

 「いつまでも古いレンズのサポートを続けていると、新しいレンズが売れないよね。。」
 「新しい機種に古〜〜〜いレンズを装着できるようにしても露出計が動かないし。。」
 「色々制限もあり性能も落ちる古〜いレンズはお蔵入りさせて、最新の高いレンズを買って欲しい。。」

 やがて。。

 「古いレンズが使える(装着できる)機種が少しずつ減っていく」



(2) カメラ側の最小絞り設定警告レバーの干渉

最小絞り設定警告レバーは、デジタル一眼レフではCPU連動方式専用ボディに追加されていて、2002年6月発売のD100から始まり、以下のカメラにある。

発売年月 最小絞り設定警告レバーの形式
円周方向スライド式   押し込み式  
2002年6月 D100
2004年3月 D70
2005年4月 D70s
2005年6月 D50
2006年9月 D80
2006年12月 D40
2007年3月 D40x
2008年2月 D60
2008年9月 D90(D80の後継機)
2009年5月 D5000
2009年8月 D3000
2010年9月 D3100
2011年4月 D5100
 

なかでも2004年3月発売のD70は爆発的に売れ、初めてデジタル一眼レフの世界に入った人も多いだろう。

で、手持ちのオールドニッコールレンズをカメラのレンズマウント部に装着してみた。。ら、

  何となく固くて回し辛いが、
     ↓
  無理やり装着できた(^^);
     ↓
  で、カメラ側の最小絞り設定警告レバーを押しつぶし、
     ↓
  絞りリングが固くて回せない(;;)
     ↓
  と、多くのユーザーがメーカーにクレームを入れ。。

となったのは想像にかたくない。


取説を読まないユーザーが悪い?

例えば、D70の使用説明書の最初の方には、

 ・ 「カメラの機能を充分に活用するためには、GまたはDタイプのCPUレンズの使用をおすすめします。」

そして最後の方には

 ・ 別売アクセサリー「装着可能なレンズおよび使用可能な機能」に「非CPUレンズなどに一部装着不可能なレンズ(P227)があります。」

で、その後(P227)に使用できないレンズとして、何本かあげられている。

この中に、

 ・ Ai改造をしていないレンズ(Ai方式以前の連動爪を使用するタイプ)

ここでようやく、「非Aiのオールドニッコール(カニ爪方式)のレンズ」が使用不可であることが分かる。。(初心者でも??)

使用説明書をよく読まないのが悪いといえるかもしれないが、最後の最後までよ〜〜〜〜く読まないと分からないのである。

しかも、「Ai改造をしていないレンズ(Ai方式以前の連動爪を使用するタイプ)」なるものが何なのか、理解できる人がどれくらいいるのか。。

これは、

  誤操作による故障を起こさせかねない部品を使う、という設計上のミス

ではないだろうか?

円周方向スライド式も押し込み式も部品コスト面や組み立てコストもほぼ変わらない、どころか押し込み式の方が安そうに思われるだけに技術者の読みが甘かったか。。

上記年表で、D70発売後しばらく後にクレーム多発、2年半後のD40で押し込み式に改良。なのに4年以上も経過して発売されたD90だけは円周方向スライド式のままになっている。まぁ、D80(スライド式)の後継機だから律儀にこれも後継しちゃったのかもね。(笑)

ただ、円周方向スライド式のカメラは全てAFモーター内蔵機であり、押し込み式は(ボディにAFモーターを内蔵していない)モーター内蔵レンズ専用機なので、AFカップリングが邪魔をして押し込み式にできなかったのかもしれない。。けどね。さて、事実はどちら??



(3) レンズ絞りリング後部(スカート部)とカメラ側マウント部周辺の干渉
(4) レンズ絞りリング後部(スカート部)の内径と、ボディ側マウント外径の違いによる装着不能

たとえカメラ側に露出計連動レバー(Ai連動レバー)や最小絞り設定警告レバーがなくても干渉や装着不能な組み合わせは起こり得る。元凶はレンズ側のスカート部の長さや内径が規格化されていないことで、どのレンズ(種類、ロットなど)とカメラの組み合わせが該当するかはメーカーのみが知り得ることでもあるが、膨大な量になると思われる。

ひょっとして、メーカーも全てを把握し切れていない可能性も充分にある?。。

各カメラの使用説明書にある「使用できないレンズ」が全てなのか、それ以外にもあるのか、現状では「現物合わせ」にならざるを得ないようだ。。。







●モーター内蔵レンズ専用機とレンズの組み合わせ



以下の機種はボディ内にAFモーターが内蔵されていない為、AFモーターが内蔵されているレンズ(AF-SAF-PAF-Iレンズ)でのみAF撮影が可能である。AFモーター内蔵レンズ以外ではマニュアルフォーカス撮影となる。但しフォーカスエイドは利用可能。尚、AF-Pレンズについては使用できないカメラもある。(AF-Pレンズが使用可能なカメラ

モーター内蔵レンズ専用機 (平成30(2018)年9月現在)
Nikon D40/D40x、Nikon D60、Nikon D3000シリーズ(D3000、D3100、D3200、D3300、D3400、D3500)、
Nikon D5000シリーズ(D5000、D5100、D5200、D5300、D5500、D5600)






DXレンズのイメージサークルとFXフォーマットカメラの組み合わせ



レンズにはイメージサークルという焦点面に鮮鋭な画像が結像する円形の範囲があり、フィルム/撮像素子のサイズをカバーする大きさが必要である。

イメージサークル(イメージ図)


昭和34(1959)年発売のNikon F以降、最新のデジタル一眼レフであるNikon D5までの全一眼レフにおいて、フィルムの露光(撮影)サイズやイメージセンサーのサイズには大別して以下の5種類が存在する。

表1.ニコン一眼レフの露光(撮影)サイズ

フィルム/撮像素子の種類 フォーマット名/別名 撮影サイズ
(※1)
使用可能レンズ(※2) 主な機種  備考 

135判レンズ
(FX用)

DX用

36mm判フィルム

ライカ判
135フォーマット
24×36mm × Nikon F〜Nikon F6、FA、F-801、F100。。

APS-H判フィルム

IX240判 16.7×30.2mm PRONEA 600i、PRONEA S ※3

2/3インチ判イメージセンサー

8.8×6.6mm(?) E2N/E2Ns、E3/E3s ※4

APS-C判イメージセンサー

DXフォーマット 23.6×15.8mm D1/D2シリーズ、D100、D200、D300、D90.。。

35mm判イメージセンサー

FXフォーマット
フルサイズ
36.0×23.9mm D3シリーズ、D700
・ 135フォーマット: 35ミリフィルムを使用し露光サイズ24×36mmの最も広く使われているフォーマット。「135」はドイツのコダックが命名した規格名。
DXフォーマット ニコンのデジタル一眼レフにおいて、APS-Cに準じたサイズを持つイメージセンサーを示す。
FXフォーマット ニコンのデジタル一眼レフにおいて、135フォーマット(35mm判)に準ずるサイズを持つイメージセンサーを示す。

※1: APS-C判イメージセンサーと35mm判イメージセンサーのサイズは代表例。
※2: 使用可能レンズ ◎:使用可  ○:DXレンズ装着時にクロップで使用可 △:ネットでは一部のDXレンズが使用可との情報あり
※3: 専用レンズ 「IXニッコール」 3本が開発されているが、135フォーマット(35mm判)カメラには装着不可。従来のニッコールレンズが全て装着可。
※4: 縮小光学系を持っているので35mm判レンズをそのままの画角で使用可能

一方、レンズにはイメージサークルという焦点面に結像する円形の像面があり、フィルム/撮像素子のサイズをカバーする大きさが必要である。

ニッコールレンズのイメージサークルの大きさは、

         135フォーマット判レンズ(FXフォーマット用レンズ) > DXフォーマット用レンズ

となっているので、36mm判フィルムカメラ(135フォーマット)やFXフォーマット判カメラにDXフォーマットレンズを装着すると四隅がケラレてしまう。但し、クロップ指定すればDXフォーマットの撮影が可能である。また、DXフォーマットレンズであってもズームレンズの長焦点距離側ではイメージサークル径が大きくなるので、レンズによってはFXフォーマット判カメラでもケラレなく使えるものもある。(参考:【伊達淳一のデジタルでいこう!】D700で使えるDXレンズを検証


図1.イメージサークルとフィルム/撮像素子サイズのイメージ (白枠部がフィルム/撮像素子のサイズを示す)


FXフォーマット用レンズをFX判カメラに装着

FXフォーマット用レンズをDX判カメラに装着 DXフォーマット用レンズをFX判カメラに装着

フィルム/撮像素子のサイズをカバーしている

焦点距離1.5倍相当の画角となる 四隅がケラレてしまう。。。






露出計連動ピン・Ai・CPUレンズ対応/AF-S・AF-I・VR・Gタイプ使用可否一覧



ニコン全一眼レフの露出計連動ピン(カニ爪の受け側)有無、Aiレンズに対応するAi連動可否、CPUレンズとの連動可否、AF機能有無、AF-SAF-Iレンズの使用可否、及びVRレンズGタイプレンズの使用可否を示す。


  露出モード(※1 露出計連動ピン Ai連動※2 CPU連動 AF機能(※3 VRレンズ Gタイプレンズ※4
Nikon F − (露出計なし)   × ×
Nikon F Photomic/T/TN M       × ×
Nikon Photomic FTN M       × ×
Nikon F2 − (露出計なし)   × ×
Nikon F2 Photomic/S/SB M        × ×
Nikon F2 Photomic A/AS M   Ai連動 (倒)     × ×
Nikon F3/F3 HP/F3P/F3H A・M   Ai連動 (倒)     × ×
Nikon F3 AF A・M   Ai連動 (倒)     × ×
Nikon F4/F4S/F4E A・S・P・PH・M   Ai連動 (倒) CPU連動 AF (◎) × P・S
Nikon F5 (※5 A・S・P・M   Ai連動 (固/倒) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon F6 (※5 A・S・P・M   Ai連動 (固/倒) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
  露出モード(※1 露出計連動ピン Ai連動※2 CPU連動 AF機能(※3 VRレンズ Gタイプレンズ※4
Nikomat FT/FTN/FT2 M        × ×
Nikomat FS − (露出計なし)   × ×
Nikomat EL/ELW A・M       × ×
Nikomat FT3 M   Ai連動 (倒)     × ×
Nikon EL2 A・M   Ai連動 (倒)     × ×
PRONEA 600i P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) × P・S・A・M
PRONEA S AUTO・P・S・A     CPU連動 AF (◎) × P・S・A
Nikon FM/FM2/New FM2 M   Ai連動 (倒)     × ×
Nikon FE/FE2/FE10 A・M   Ai連動 (倒)     × ×
Nikon EM A・M   Ai連動 (固)     × ×
Nikon FG A・P・M   Ai連動 (固)     × ×
Nikon FA P・S・A・M   Ai連動 (固)     × ×
Nikon FG-20 A・M   Ai連動 (固)     × ×
Nikon FM10 M   Ai連動 (固)     × ×
Nikon FM3A A・M   Ai連動 (固)     × ×
NIKKOREX 35 M         × ×
NIKKOREX F M ○(外付露出計)       × ×
NIKKOREX 35II M         × ×
NIKKOREX ZOOM 35 M         × ×
Nikon AUTO35 S・M         × ×
  露出モード(※1 露出計連動ピン Ai連動※2 CPU連動 AF機能(※3 VRレンズ Gタイプレンズ※4
Nikon F-301 P・PHI・A・M   Ai連動 (固) ×   × ×
Nikon F-401/401S/401X P・S・A・M     CPU連動 AF (▲) × P・S・A・M
Nikon F-501 P・PDUAL・PHI・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (▲) × (P)(※6
Nikon F-601 PM・P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (▲) × (P・S)(※7
Nikon F-601M PM・P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動   × P・S
Nikon F-801/801S PD・PH・P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (▲) × P・S(※8
Nikon F50D AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (▲) × P・S・A・M
Nikon F60D AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (▲) × P・S・A・M
Nikon F70D IMG・P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) × P・S
Nikon F80D / F80S P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon F90/D/S/X/Xd/Xs P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) × P・S(※9
Nikon F100 P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon U/U2 AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon Us AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (▲) × P・S・A・M
  露出モード(※1 露出計連動ピン Ai連動※2 CPU連動 AF機能(※3 VRレンズ Gタイプレンズ※4
Nikon D1/D1X/D1H P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D2H/D2X/D2Hs/D2Xs P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D3/D3S/D3X P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D4/D4S P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D5 P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon Df P・S・A・M Ai連動 (倒) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
  露出モード(※1 露出計連動ピン Ai連動※2 CPU連動 AF機能(※3 VRレンズ Gタイプレンズ※4
Nikon D40 /D40x AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
Nikon D50 AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D60 AUTO・IMG・P・S・A・M CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
Nikon D70/D70s AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D80 AUTO・IMG・P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D90 AUTO・IMG・P・S・A・M CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D100 P・S・A・M     CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D200 P・S・A・M   Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
  露出モード(※1 露出計連動ピン Ai連動※2 CPU連動 AF機能(※3 VRレンズ Gタイプレンズ※4
Nikon D300/D300S P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D500 AUTO・IMG・P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D600/D610 AUTO・IMG・P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D700 P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D750 AUTO・SCENE・P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D800/D800E
D810/D810A/D850
P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D7000 AUTO・SCENE・P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D7100/D7200 AUTO・SCENE・EFECTS・P・S・A・M Ai連動 (固) CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D7500 AUTO・SCENE・EFECTS・P・S・A・M × CPU連動 AF (◎) VR可 P・S・A・M
Nikon D3000/D3100/D3200 AUTO・SCENE・GUIDE・P・S・A・M CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
Nikon D3300 AUTO・GUIDE・P・S・A・M CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
Nikon D3400 AUTO・SCENE・GUIDE・P・S・A・M CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
Nikon D5000 AUTO・SCENE・P・S・A・M CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
Nikon D5100/D5200/D5300/D5500/D5600 AUTO・SCENE・EFECTS・P・S・A・M CPU連動 AF (△) VR可 P・S・A・M
 
※1: P:プログラム S:シャッター速度優先 A:絞り優先 M:マニュアル AUTO:オート IMG:イメージプログラム

P(標準プログラムAE) 通常の撮影用プログラムAE。プログラム線図上で最適なシャッター速度と絞り値を自動設定する
PM(マルチプログラムオート) 装着するレンズによりプログラム線図が変わり最適なシャッター速度と絞り値を自動設定する。 Nikon F-601に搭載。
PHI(高速プログラムAE) レンズ焦点距離に関わらず、手ブレを防ぐためにプログラム線図上で高速側にシフトし、やや高速のシャッター速度を優先する(手動切替)。Nikon F-301、Nikon F-501に搭載。
PH(高速プログラムオート) 同上。F4、Nikon F-801に搭載。
PDUAL(デュアルプログラムオート) 135mm以上のレンズを使う場合、手ブレ防止範囲内のプログラムに自動でシフトする(135mm域を含むズームレンズでも自動切換えされる)。Nikon F-501に搭載。
PD(デュアルプログラム) 同上。Nikon F-801に搭載。
IMG(デジタルイメージプログラム)
SCENE(シーンモード)
ポートレートやスポーツなど撮影するシーンが決まっているとき、選択指定した撮影シーンに合わせて各種設定をカメラが自動的にコントロールする。D7000ではモードダイヤルをSCENEに合わせた後にコマンドダイヤルを回して設定する
U1・U2(ユーザーセッティングモード) 事前登録した撮影モードや撮影時の設定で撮影できる。D7000に搭載。
 
※2: 倒=可倒式レバー  固=固定式レバー(固定式の機種には従来方式(非Aiのオールドニッコール)レンズは取り付けできない)

※3: AF可否は以下の通りとなる。
AF機能 ボディ側
AFカップリング有無
AF可否 備考
モーター内蔵レンズ(AF-SAF-I モーター非内蔵レンズ
あり F4、F90、F100、D3、D5100など
なし ×(マニュアル操作) D40など、モーター内蔵レンズでのみAF可
あり ×(マニュアル操作) F-401など初期のAFフィルムカメラ

※4:  P:プログラムオート(AUTOモードとイメージプログラムモードを含む)  S:シャッター速度優先  A:絞り優先  M:マニュアル
F4などでA・Mモード使用時は絞りの変更を絞りリングで行なう(コマンドダイアルでは不可)ので、GタイプレンズはA・Mモードは使用不可。
   
※5:  F5、F6はメーカーにて固定式露出計連動レバー(いわゆるAi連動レバー)を可倒式に改造できる。
 
※6:  F-501+Gレンズ: メーカーサイトでは使用不可。しかし、Gレンズ装着時にファインダー内の露出警告LED(上下▲▼)が点滅するが、Pモードは正常に動作する。AやMモードは常に最小絞りになってしまい、露出計表示が不正確ではあるが、「瞬間絞り込み測光」で一応、適正露出になる、というネット情報がある。
 
※7:  F-601+Gレンズ:メーカーサイトでは使用不可。しかし、Gレンズ装着時にファインダー/液晶表示パネルの一部でエラー点滅されるが、Pモードは動作するというネット情報がある。S・Mモード時は絞り表示は開放値であるが露出自体は最小絞りで行なわれる。
 
※8:  F-801+Gレンズ:メーカーサイトでは、P・Sモードでのみ作動可。しかし、A・Mモードは最小絞りが表示され、最小絞りでのみ作動する可能性がある。
 
※9:  F90シリーズ+Gレンズ:メーカーサイトでは、P・Sモードでのみ作動可。しかし、A・Mモードは最小絞りが表示され、最小絞りでのみ作動する。

 

露出計連動ピン(カニ爪)を持つ機種   Nikon F Photomic / Nikon F Photomic T / Nikon F Photomic TN / Nikon Photomic FTN
Nikon F2 Photomic / Nikon F2 Photomic S / Nikon F2 Photomic SB
Nikomat FT / Nikomat FTN / Nikomat FT2 / Nikomat EL / Nikomat ELW / NIKKOREX F
 


 


露出計連動レバーを持つ機種    
 
        露出計連動レバーCPU連動方式
両方を持つ機種
  
     CPU連動方式のみの機種
  (可倒式)            
    Nikon F2 Photomic A
Nikon F2 Photomic AS
Nikon F3全シリーズ
Nikomat FT3
Nikon EL2 / Nikon FM / Nikon FE
(可倒式露出計連動レバー) Nikon F-401全シリーズ
Nikon F50D / Nikon F60D
Nikon F80D・F80S
Nikon U / Us / U2
PRONEA 600i / PRONEA S

Nikon D40(D40x)
Nikon D50 / D60
Nikon D70 / D70s
Nikon D80 / Nikon D90
Nikon D100
Nikon D3000 / D3100 / D3200 / D3300 / D3400 / D3500
Nikon D5000 / D5100 / D5200 / D5300 / D5500 / D5600
Nikon D7500
Nikon F4全シリーズ



Nikon Df
                  
                   
  (固定式)                
    Nikon EM / Nikon FM2
Nikon FG / Nikon FE2 / Nikon FA
Nikon New FM2 / Nikon FG-20
Nikon FM10
Nikon FM3A / Nikon F-301




 (固定式露出計連動レバー)  
Nikon F5 (可倒式に改造可)
Nikon F6 (可倒式に改造可)
Nikon F-501 / Nikon F-601 / Nikon F-601M
Nikon F-801 / F-801S
Nikon F70D
Nikon F90 / F90D / F90S
Nikon F90X / F90Xd / F90Xs
Nikon F100

Nikon D1全シリーズ / Nikon D2全シリーズ
Nikon D3 / D3S / D3X
Nikon D4 / D4S
Nikon D200
Nikon D300 / D300S
Nikon D600 / D610
Nikon D700 / D750 / D780
Nikon D800 / D800E / D810 / D810A / D850
Nikon D7000 / D7100 / D7200
                   
                   


 

Gタイプレンズが使えない機種(AF-S、VRも使用不可)

Nikon F / Nikon F Photomic / Nikon F Photomic T / Nikon F Photomic TN / Nikon Photomic FTN
Nikon F2 / Nikon F2 Photomic / Nikon F2 Photomic S / Nikon F2 Photomic SB / Nikon F2 Photomic A / Nikon F2 Photomic AS
Nikon F3 / Nikon F3 HP / Nikon F3P / Nikon F3 AF / Nikon F3H

NIKKOREX 35 / NIKKOREX F / NIKKOREX 35II / NIKKOREX ZOOM 35 / Nikon AUTO35

Nikomat FT / Nikomat FS / Nikomat FTN / Nikomat EL / Nikomat FT2 / Nikomat ELW / Nikomat FT3
Nikon EL2 / Nikon FM / Nikon FE / Nikon EM / Nikon FM2 / Nikon FG / Nikon FE2 / Nikon FA
Nikon New FM2 / Nikon FG-20 / Nikon FM10 / Nikon FE10 / Nikon FM3A

Nikon F-301 / (Nikon F-501) / (Nikon F-601) (F-501とF-601はメーカーサイトでは使用不可だが、使える可能性がある→Gタイプが使える機種参照)

 

● Gタイプレンズが使える機種

露出モード AF-S VR 機種 備考
P S A M
F5、F6、 F80D/S、 F100、
U/U2、全デジタル一眼レフ
全てのデジタル一眼レフは、AF-S、VR、Gタイプが全て使える。
× PRONEA 600i
× × PRONEA S
× × × Nikon F4/F4S/F4E、 F70D、
F90全シリーズ
F90シリーズ+Gレンズ:メーカーサイトでは、P・Sモードでのみ作動可。しかし、A・Mモードは最小絞りが表示され、最小絞りでのみ作動する。
× × F-401全シリーズ、F50D、F60D、 Us
× × × × × F-501 F-501+Gレンズ: メーカーサイトでは使用不可。しかし、Gレンズ装着時にファインダー内の露出警告LED(上下▲▼)が点滅するが、Pモードは正常に動作する。AやMモードは常に最小絞りになってしまい、露出計表示が不正確ではあるが、「瞬間絞り込み測光」で一応、適正露出になる、というネット情報がある。
× × × × F-601 F-601+Gレンズ:メーカーサイトでは使用不可。しかし、Gレンズ装着時にファインダー/液晶表示パネルの一部でエラー点滅されるが、Pモードは動作するというネット情報がある。S・Mモード時は絞り表示は開放値であるが露出自体は最小絞りで行なわれる。
× × × × F-601M、F-801/F-801S F-801+Gレンズ:メーカーサイトでは、P・Sモードでのみ作動可。しかし、A・Mモードは最小絞りが表示され、最小絞りでのみ作動する可能性がある。
・ 発売は、AF-S → VR → Gタイプ の順である。
・ 全てのデジタル一眼レフは、AF-S、VR、Gタイプが全て使える。
・ VRが使える機種はAF-SもGタイプも使える。 (F5、F6、デジタル一眼レフなど)
・ AF-Sが使えてもVRが使えないカメラもある。(F4、F70Dなど)
・ AF-SかVRが使える機種はGタイプも使える。
・ AF-SやVRが使えないが、Gタイプは使える機種もある(F-401、F-801など)
・ Gタイプが使えない機種はAF-SもVRも使えない。(Nikon Fなど)





●ニコンデジタル一眼レフカメラ系統図



(この系統図は、「ニコン全一眼レフカメラ発売年表/仕様」にもあり、各カメラの詳細にジャンプできます。)


フラッグシップ  
   
1999年
(H11年)
  1999/9                                         1999年
(H11年)
D1
2000年
(H12年)
                                          2000年
(H12年)
 
     
2001年
(H13年)
  2001/5   2001/7                                   2001年
(H13年)
D1X D1H
      DXミドルレンジ
 
2002年
(H14年)
                          2002/6                   2002年
(H14年)
D100
2003年
(H15年)
  2003/10                          DXエントリー             2003年
(H15年)
D2H
       
2004年
(H16年)
                                2004/3             2004年
(H16年)
D70
DXファミリー
                 
2005年
(H17年)
  2005/1   2005/3                 2005/12   2005/4           2005/6   2005年
(H17年)
D2X D2Hs D200 D70s D50
           
               
2006年
(H18年)
  2006/6                       2006/9           2006/12   2006年
(H18年)
D2Xs D80 D40
 
 DX
              DXフラッ グシップ
FXフラッグシップ                 
2007年
(H19年)
  2007/11                     2007/11                 2007/3   2007年
(H19年)
D3   D300 D40x
 
     
               
    FXハ イミドル                  
2008年
(H20年)
  2008/12             2008/7           2008/9     2008/2       2008年
(H20年)
D3X D700 D90 D60
DXエントリ
                (ハイエンド)  
           
2009年
(H21年)
  2009/11                       2009/8         2009/5 2009/8 DXエントリ
(ローエンド) 
2009年
(H21年)
D3S D300S D5000 D3000
         DX
           ハイ ミドル          
2010年
(H22年)
                                2010/10           2010/9       2010年
(H22年)
D7000 D3100
                     
2011年
(H23年)
                                        2011/4             2011年
(H23年)
    D5100
   
                 
FXハイエンド     FXローエンド
                                 
2012年
(H24年)
  2012/3       2012/3,4           2012/9               2012/12   2012/5       2012年
(H24年)
D4 D800/800E D600 D5200 D3200
     
                                 
2013年
(H25年)
        2013/11               2013/10       2013/3     2013/11             2013年
(H25年)
Df   D610 D7100 D5300
        FXハ イアマ              
2014年
(H26年)
  2014/3       2014/7     2014/9                         2014/2       2014年
(H26年)
D4S D810 D750 D3300
             
2015年
(H27年)
          2015/5                 2015/3     2015/2           2015年
(H27年)
D810A D7200 D5500
   
2016年
(H28年)
2016/3                       2016/4           2016/11    2016/9       2016年
(H28年)
D5 D500 D5600 D3400
 
2017年
(H29年)
2017/9 2017/6 2017年
(H29年)
D850 D7500
 
2018年
(H30年)
 2018/9
D3500
2018年
(H30年)
2019年
(R1年)
2019年
(R1年)
2020年
(R2年)
2020/6
2020/1
D780
2020年
(R2年)
D6




 
 

《 コラム 》 サイト訪問者様からの反響

少し古い話になるが、ポーランドからのメールを受け取った。

Hi Sir,

I'm writing to you because I have seen your website: http://kintarou.skr.jp/index.htm

Simce you know a lot about Nikkor F-mount construction and lenses, I was wondering if you can help me with findinr good replacement of F-mount screws for Nikkor AI-S lenses. I am an amateur repairman located in Poland / Europe
  :
  :

翻訳すると、

「私はあなたのウェブサイトを見たので、あなたに書いています。
あなたはニッコールFマウントの構造とレンズについて多くのことを知っているので、私はあなたがニッコールAI-SレンズのためのFマウントネジの良い代替品を見つけるのを手伝っていただけないでしょうか。私はポーランド/ヨーロッパに拠点を置くアマチュア修理屋で、私の趣味は古いニッコールレンズを生き返らせ、かつての栄光を取り戻すことです。これらのレンズは光学的に非常に優れており、非常に頑丈な構造をしていますが、しばしばマウントネジが、どの工具を使用すべきかを知らない以前のユーザーによってひどく破損しています。このテーマについて何かアドバイスがあれば、とてもありがたいです。ポーランドからよろしくお願いします。」


多分、古いニッコールレンズを分解し、内部のカビや汚れの清掃を行なっている方で、マウントネジ溝が潰れて(なめて)しまっている場合の対処方法と、代わりのネジの規格を知りたいということだと思う。残念ながらこの件についての知識は持ち合わせていないので、幾つかの日本語サイトをネットで検索し紹介した。

いわゆる「皿小ネジの2×4」(呼び径M2、呼び長さ4mm)らしい。他、「ネジ外し剤(滑り止め剤)」の紹介など。。

ポーランドの母国語は「ポーランド語」、今回のメールは英語なので、当方サイトを英語変換した上での閲覧かと思うが、この巨大ページを一括変換するのは中々困難だろうから、小分けにして変換した。。のかな??

当Fマウント解説サイト、及び、ニコン全一眼レフカメラ発売年表/仕様サイトへの訪問者様からのメールは、国内からは勿論、アメリカ、中国、台湾などからの感想・感謝・質問メール、ミスの指摘、某新聞社映像写真部からのリンク依頼、それにニコン関係者からも、「弊社製品の。。。についてお客様からの問い合わせで、『キンタロウの散歩道』サイトで解決しました」とのお礼のメールが来たりと、様々な反響がある。どこの国にも超マニアックなユーザーがいるようです。

当サイト内容のミスについては、多数あると絶対の自信(!)を持っています(おいおい;)ので、訪問者様からの指摘は大変ありがたいものです。(=開き直りと他力本願です。。)

いずれはサイトの英語化もしたい、と思いつつ、あまりにも膨大な量に躊躇う(”ためらう”と読むらしい)今日この頃。。。


 
 


●終わりに




当サイトは元々は備忘録から始まっています。叔父が持っていた「Nikon F」を初めて触らせてもらった時の感激、精密機械の美しさと大口径レンズの輝きに魅せられた日々からン十年に渡るカメラの趣味を継続する中で、写真撮影そのものよりもメカ機構と電気的制御機構、つまり、手に乗る「メカトロニクス」製品であるカメラそのものに興味を惹かれていました。

例えば、昭和58(1983)年9月発売のFAはニコン初のシャッター速度優先AE、絞り優先AE、プログラムAEを機械式連動で実現、しかもプログラムAEは装着レンズによって「標準」「高速」の自動切換えなど、ここまでやるか!というくらい、機械的なメカニズムで実現しています。

カニ爪連動、ガチャガチャから、EEコントロールユニットによる力任せのEE機構、Ai、Ai-S、開放F値連動レバー、レンズタイプ識別ピン、レンズ焦点距離識別レバーなど様々なパーツを組み合わせたメカ連動機構を経て、現在のCPU搭載による電子制御までの系統的な歴史を網羅したサイトは、当時は残念ながら見当たりませんでした。

当サイト作成を始めた直接のきっかけは、平成16(2004)年5月に「D70」を購入し、早速手持ちのオールドニッコールレンズを取り付けてみたところ、ボディ側の最小絞り設定警告レバーに干渉して取り付けられないことが分かったことです。(→カメラ側の最小絞り設定警告レバーの干渉

「不変のFマウント」なのに何故???

その原因を調べている内にボディとレンズの組み合わせによっては装着可否、機能面など多くの制限があることが分かってきたのです。

そこで、2005年頃からネットと書籍・雑誌からの情報収集と共に当サイトを作成し始めたのですが、まぁ切りがない程の入力と編集・追加を繰り返し、結果としてこれだけ多ページに渡る、HTML19000行、画像260枚超の予想外の大きなサイトになってしまいました。

内径がたった44mmしかない穴を通して、互換性を維持しながらレンズとボディ間のメカ/電子連動を実現するには大変な困難があったであろうことは想像に難くないのですが、例えば1977年発売のAiからたった3年後のAi-S(Aiの改良版)への移行や、Ai化時に追加された開放F値連動ガイドは数機種のカメラでしか使われなかったことなど、1986年のCPU連動方式発売までの9年間は相当の混乱(?)があったように思われますし、モーター内蔵AFレンズを採用したF3AFの後のボディ内モーター駆動AFへの移行、その後のAF-S(超音波モーター内蔵レンズ)への回帰、最小絞り設定警告レバーの形状変更など、技術的な予測の甘さも所々見受けられ、これはこれで面白いものです。

本来ならば、この手のものは全情報を持つメーカーが作成してくれれば、とは思うのですが、どうでしょうか。。

最後まで残っていたメカパーツの絞り連動レバーもEタイプでは削除され、ようやく完全電子マウントに近づきつつあるFマウント。。。
近い将来、Eタイプ専用(完全電子制御化)ボディが発売されると思われますが、過去のレンズ資産(遺産?)を持つ多くのユーザーの為にも、ボディ内AF(AFカップリングや)や露出計連動レバー(Aiレバー)対応ボディは今後とも残してほしいですね。

ただ、今後は新ミラーレス一眼の発表も近づいていることもあり、Fマウント(レンズ)の行く末も注目されるところです。

説明文章や画像の稚拙さはお許し下さい。ついでに内容の間違いも・・・・・(^^);


 2018年5月  By キンタロウ







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